概要
明治という我が国の近代史における激動の時代に不撓不屈の志を持って単身アメリカに渡り、先進国の技術、知識を故郷に持ち帰るという偉業を成し遂げた高峰譲吉博士の生涯を綴った書。貧しい生活の中でも決して諦めず化学の研究に打ち込み数々の革新的な発見を成し遂げ、最後の最後まで化学者でありつづけると共に、日米の架け橋役も演じ、日本の近代化学工業の基礎を確立していく人生は化学を志す者の手本とも言うべきもの。
対象
科学の道を志す高校生、学部生。また、偉人の伝記としても読み応え十分。
解説
本書は1999年初版発行で少し古いですが、高峰譲吉の伝記としては決して色あせていません。高峰譲吉はデンプンを分解する酵素タカヂアスターゼ、ホルモンのアドレナリンの結晶化に成功するなど、当時では画期的とも言える発見をしています。高峰譲吉は日本におけるタカジアスターゼの販売権を持つ現在の第一三共の前身である三共の初代社長でることでもよく知られていることでしょう。
その研究は常に実用化が念頭に置かれており、後の特許の取得によって巨万の富を生み出すはずでしたが、しかし、その特許に関する紆余曲折の節も興味深く読むことができます。特に、英国留学、帰国後のアメリカ永住までの半生は激動につぐ激動。高橋是清、渋沢栄一といった近現代史では必ず目にする人物との深い関わり合いも興味深いものがあります。妻キャロラインの献身的な看病による奇跡的な病からの回復や、その際に夢見たという「両頭共坐断 八面起清風」、生きるも、死ぬも、大いなる力に任せ切って、精一杯研究に打ち込もうという現代の研究者で到底到達困難な境地を迎える一節に胸を打たれます。「せっかく留学して学んできた知識と技術を、欧米の真似事ではなく、日本固有の化学工業のために応用したいのです。」という高峰の言葉は現代の科学者の心にも響くことでしょう。
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