[スポンサーリンク]

化学一般

化学物質はなぜ嫌われるのか

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”4774135178″ locale=”JP” title=”化学物質はなぜ嫌われるのか ‾「化学物質」のニュースを読み解く (知りたい!サイエンス 33)”]

内容

テレビ、新聞、雑誌など、メディアの中で「化学物質」の話題がとりあげられるとき、多くの場合、それは悪いニュースです。私たちの生活に深く関わり、私たちの体を支えてもいる「化学物質」の中でも、これまでニュースとして取り上げられたことがあるものについて、化学を勉強したことが無い人にとってもわかりやすく解説しています。

具体的には環境問題、食品添加物による食品不安や医薬品による健康被害等を題材として取り上げ、それらに関連する「化学物質」のリスク評価や、最近ブームになっている健康食品の効能の検証など、身近にある化合物や歴史的問題に発展した化合物にスポットを当てています。

対象

化学に興味があるすべての人。

 

評価・解説

著者である佐藤健太郎氏は、HP 『有機化学美術館』及び、ブログ版『有機化学美術館・分館』の運営、さらに今年度からは『東京大学GCOE 理工連携による化学イノベーション』というプロジェクトの広報も担当され、各方面で活躍中の新進気鋭のサイエンスライターです。ちなみに作家としてのデビュー作である「有機化学美術館へようこそ」でも化学が秘める芸術的な造形美を世に知らしめました。

佐藤氏の第二作目である本書も前作と同様、分野外の方や「有機化学はちょっと苦手」という方にとっても読みやすい内容になっています。また特長としては「化学式がほとんど記述されていない」ことが挙げられます。全ての化学物質は分子模型のような絵で表現されており、「専門家以外の人のための本」であることが伝わってきます。悲しいことに専門外の人たちにとっては、難しそうな化学式が出てくるだけで本を閉じたくなる、という経験はよくあるようですから。

大学・大学院に進学してまで化学を勉強する気合い(?)がある人、というのはそこまで多くありません。しかしながら、医薬品・食料品・材料など、この世にあふれるあらゆる「モノ」には少なからず化学が関与しています。それらのリスクが問題となった時、真っ先に矢面に立たされるのは「化学物質」です。

市民理解と専門知識のあいだには大きなギャップが存在するため、

「なんだかわからないけど化学って恐い」

という声が多く聞かれてしまうことになります。中身がわからないのに危険性ばかりが大々的に報道される昨今では、そんなイメージが根付くのも無理はありません。

しかしながら化学の恩恵によって豊かな生活が送れるようになったことも事実であり、実に「化学物質」と全く縁を切った生活を送るのは現代では不可能といえます。

それでは、このジレンマの間でどのような生活を送るのが better なのでしょうか?明確な答えはありませんが、「化学について知ること」は誰にでもできる対処法ではないでしょうか。これに関連して物理学者であり随筆家、さらにはX線結晶構造解析の第一人者でもある寺田寅彦の有名な言葉が有るので紹介します。

「ものを怖がらな過ぎたり、怖がり過ぎたりするのはやさしいが、正当に怖がることはなかなか難しい」
寺田寅彦随筆集第六巻「雑想集」から「小爆発二件」より引用

 

ただし、現代ではインターネットをはじめ大量の情報が溢れており、便利になった反面、それらの中には有害なもの・正しくないものも多く存在しています。

佐藤氏も寺田寅彦も、人間が生きていく上で『適当なリスク』を正確に認識することが要であると主張しています。これは化学に限らず、現代社会を生きていく上で最も重要な術を示唆してるのだと思います。少々大袈裟ではありますが、本著はそのような心構えをもつためのきっかけになるのではないでしょうか。

関連書籍

[amazonjs asin=”4106103486″ locale=”JP” title=”医薬品クライシス―78兆円市場の激震 (新潮新書)”][amazonjs asin=”4106037327″ locale=”JP” title=”炭素文明論 「元素の王者」が歴史を動かす (新潮選書)”][amazonjs asin=”4774131148″ locale=”JP” title=”有機化学美術館へようこそ ‾分子の世界の造形とドラマ (知りたい!サイエンス)”]
Avatar photo

トリプチセン

投稿者の記事一覧

博士見習い。専門は14族を中心とした有機典型元素化学。 ・既存の有機化学に新しい風を! ・サイエンスコミュニケーションの普及と科学リテラシーの構築! これらの大きな目標のため

関連記事

  1. えっ!そうなの?! 私たちを包み込む化学物質
  2. 化学産業を担う人々のための実践的研究開発と企業戦略
  3. Organic Synthesis Workbook
  4. Cyclopropanes in Organic Synthes…
  5. 理系のためのフリーソフト Ver2.0
  6. Pythonで気軽に化学・化学工学
  7. 【書評】元素楽章ー擬人化でわかる元素の世界
  8. 炭素文明論「元素の王者」が歴史を動かす

注目情報

ピックアップ記事

  1. 三枝・伊藤酸化 Saegusa-Ito Oxidation
  2. テオ・グレイ Theodore Gray
  3. 家庭での食品保存を簡単にする新製品「Deliéa」
  4. 2017年ケムステ人気記事ランキング
  5. 鬼は大学のどこにいるの?
  6. 佐藤 一彦 Kazuhiko Sato
  7. 固体型色素増感太陽電池搭載マウスを買ってみました
  8. C60MC12
  9. 有機反応を俯瞰する ーMannich 型縮合反応
  10. シリリウムカルボラン触媒を用いる脱フッ素水素化

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年7月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

植物由来アルカロイドライブラリーから新たな不斉有機触媒の発見

第632回のスポットライトリサーチは、千葉大学大学院医学薬学府(中分子化学研究室)博士課程後期3年の…

MEDCHEM NEWS 33-4 号「創薬人育成事業の活動報告」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

第49回ケムステVシンポ「触媒との掛け算で拡張・多様化する化学」を開催します!

第49回ケムステVシンポの会告を致します。2年前(32回)・昨年(41回)に引き続き、今年も…

【日産化学】新卒採用情報(2026卒)

―研究で未来を創る。こんな世界にしたいと理想の姿を描き、実現のために必要なものをうみだす。…

硫黄と別れてもリンカーが束縛する!曲がったπ共役分子の構築

紫外光による脱硫反応を利用することで、本来は平面であるはずのペリレンビスイミド骨格を歪ませることに成…

有機合成化学協会誌2024年11月号:英文特集号

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年11月号がオンライン公開されています。…

小型でも妥協なし!幅広い化合物をサチレーションフリーのELSDで検出

UV吸収のない化合物を精製する際、一定量でフラクションをすべて収集し、TLCで呈色試…

第48回ケムステVシンポ「ペプチド創薬のフロントランナーズ」を開催します!

いよいよ本年もあと僅かとなって参りましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。冬…

3つのラジカルを自由自在!アルケンのアリール–アルキル化反応

アルケンの位置選択的なアリール–アルキル化反応が報告された。ラジカルソーティングを用いた三種類のラジ…

【日産化学 26卒/Zoomウェビナー配信!】START your ChemiSTORY あなたの化学をさがす 研究職限定 キャリアマッチングLIVE

3日間で10領域の研究職社員がプレゼンテーション!日産化学の全研究領域を公開する、研…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP