内容
内容は二部構成で、第一部では上村大輔教授(慶應大学)、柴崎正勝教授(東京大学)、富岡清教授(京都大学)、林民生教授(京都大学)と、錚々たるメンバーが座談会形式で各々の視点から有機化学のこれまでの10年間を振り返りつつ、今後発展する分野やその可能性について述べています。
第二部では、現在有機化学各分野の最先端で研究を続ける15人の研究者が「ここ10年の革新論文」を5報挙げ、それぞれの論文について簡単な解説をしています。
対象
評価・解説
『化学のブレークスルー【有機化学編】ー革新論文から見たこの10年の進歩と未来ー』
な ん と い う 荘 厳 な タ イ ト ル !
筆者も初見ではそう思いましたが、中身は名前負けしないほどに充実しています。
第一部では、現役のフロントランナーである4人の教授が、有機触媒反応がここまで発展するに至った歴史的背景、これからの触媒反応の目指すべきところや、超分子化学の話題等、大いに語ってくれています。また、化学的な話題にこだわらず「若い化学者に期待するもの」についても語っており、教授独自の研究者としてのスタンスや研究に対するポリシーが垣間見れます。
第二部では、同じ論文がいくつか挙げられているものの、当然得意とする分野が違えば目の付けどころが違うため、その研究に対する解釈が異なっている点は非常に興味深いです。一流の研究者が選んだ超一流の仕事だけあって素晴らしい研究ばかりです。
それらの中でも際立っていたのは「有機触媒」を題材にしたものです。最近の有機化学のトレンドの先駆けとなった、Benjamin Listらの「プロリンを触媒として用いる不斉アルドール反応」に関する論文が多く挙げられていました。
このように日々とてつもないスピードで進化を続ける化学の世界において、過去の研究成果を振り返るのも、自分の研究を見直しその位置づけを再確認するためのよい機会になるのではないでしょうか。
後に分野を違えて同シリーズが発刊されていますので、そちらもチェックください(関連書籍参照)。