[スポンサーリンク]

化学一般

化学のブレークスルー【有機化学編】

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”B002AS1HRU” locale=”JP” title=”化学のブレークスルー(有機化学編) 革新論文から見た10年の進歩と未来”]

内容

内容は二部構成で、第一部では上村大輔教授(慶應大学)柴崎正勝教授(東京大学)、富岡清教授(京都大学)、林民生教授(京都大学)と、錚々たるメンバーが座談会形式で各々の視点から有機化学のこれまでの10年間を振り返りつつ、今後発展する分野やその可能性について述べています。

第二部では、現在有機化学各分野の最先端で研究を続ける15人の研究者が「ここ10年の革新論文」を5報挙げ、それぞれの論文について簡単な解説をしています。

 対象

学部生以上(有機化学系)

評価・解説

2009年5月、日本化学同人から興味深い書籍が発刊されました。いくつかの化学系ブログでも取り上げられるほど話題になっており、実際にChem-Stationの6月の書籍ランキング(リンク先のページの右下参照)でもトップに君臨しています。

『化学のブレークスルー【有機化学編】ー革新論文から見たこの10年の進歩と未来ー』

 な ん と い う 荘 厳 な タ イ ト ル !

筆者も初見ではそう思いましたが、中身は名前負けしないほどに充実しています。

第一部では、現役のフロントランナーである4人の教授が、有機触媒反応がここまで発展するに至った歴史的背景、これからの触媒反応の目指すべきところや、超分子化学の話題等、大いに語ってくれています。また、化学的な話題にこだわらず「若い化学者に期待するもの」についても語っており、教授独自の研究者としてのスタンスや研究に対するポリシーが垣間見れます。

第二部では、同じ論文がいくつか挙げられているものの、当然得意とする分野が違えば目の付けどころが違うため、その研究に対する解釈が異なっている点は非常に興味深いです。一流の研究者が選んだ超一流の仕事だけあって素晴らしい研究ばかりです。

それらの中でも際立っていたのは「有機触媒」を題材にしたものです。最近の有機化学のトレンドの先駆けとなった、Benjamin Listらの「プロリンを触媒として用いる不斉アルドール反応」に関する論文が多く挙げられていました。

このように日々とてつもないスピードで進化を続ける化学の世界において、過去の研究成果を振り返るのも、自分の研究を見直しその位置づけを再確認するためのよい機会になるのではないでしょうか。

後に分野を違えて同シリーズが発刊されていますので、そちらもチェックください(関連書籍参照)。

関連書籍

[amazonjs asin=”4759814663″ locale=”JP” title=”化学のブレークスルー: 革新論文から見たこの10年の進歩と未来”][amazonjs asin=”B004VMUJMC” locale=”JP” title=”化学のブレークスルー機器分析編― 2011年 05月号 雑誌”][amazonjs asin=”B003FO0JTU” locale=”JP” title=”化学のブレークスルー理論化学編―革新論文からみたこの10年の進歩と未来 2010年 05月号 雑誌”]

トリプチセン

投稿者の記事一覧

博士見習い。専門は14族を中心とした有機典型元素化学。 ・既存の有機化学に新しい風を! ・サイエンスコミュニケーションの普及と科学リテラシーの構築! これらの大きな目標のため

関連記事

  1. レーン 超分子化学
  2. 科学英語の書き方とプレゼンテーション (増補)
  3. Modern Method of Organic Synthes…
  4. ヘゲダス遷移金属による有機合成
  5. Small Molecule Medicinal Chemist…
  6. 【書籍】イシューからはじめよ~知的生産のシンプルな本質~
  7. 高機能性金属錯体が拓く触媒科学:革新的分子変換反応の創出をめざし…
  8. ベーシック反応工学

注目情報

ピックアップ記事

  1. (+)-フロンドシンBの超短工程合成
  2. フッ素のゴーシュ効果 Fluorine gauche Effect
  3. ローゼンムント・フォンブラウン反応 Rosenmund-von Braun Reaction
  4. フィブロイン Fibroin
  5. “へぇー、こんなシンプルにできるんだっ!?”四級アンモニウム塩を触媒とするアルキンのヒドロシリル化反応
  6. 日本薬学会  第143年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part 1
  7. カプサイシンβ-D-グルコピラノシド : Capsaicin beta-D-Glucopyranoside
  8. アメリ化学会創造的有機合成化学賞・受賞者一覧
  9. 2つの触媒反応を”孤立空間”で連続的に行う
  10. 自己修復性高分子研究を異種架橋高分子の革新的接着に展開

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年6月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

医薬品設計における三次元性指標(Fsp³)の再評価

近年、医薬品開発において候補分子の三次元構造が注目されてきました。特に、2009年に発表された論文「…

AI分子生成の導入と基本手法の紹介

本記事では、AIや情報技術を用いた分子生成技術の有機分子設計における有用性や代表的手法について解説し…

第53回ケムステVシンポ「化学×イノベーション -女性研究者が拓く未来-」を開催します!

第53回ケムステVシンポの会告です!今回のVシンポは、若手女性研究者のコミュニティと起業支援…

Nature誌が発表!!2025年注目の7つの技術!!

こんにちは,熊葛です.毎年この時期にはNature誌で,その年注目の7つの技術について取り上げられま…

塩野義製薬:COVID-19治療薬”Ensitrelvir”の超特急製造開発秘話

新型コロナウイルス感染症は2023年5月に5類移行となり、昨年はこれまでの生活が…

コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成などへの応用に期待–

第 642回のスポットライトリサーチは、武蔵野大学薬学部薬化学研究室・講師の 重…

ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!

こんにちは,熊葛です.今回は,一般的なP450で保存されているヘム鉄を配位するシステイン残基に,異な…

有機化学とタンパク質工学の知恵を駆使して、カリウムイオンが細胞内で赤く煌めくようにする

第 641 回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 生…

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー