内容
Heterocyclic chemistry comprises at least half of all organic chemistry research worldwide. In particular, the vast majority of organic work done in the pharmaceutical and agrochemical industries is heterocyclic chemistry.
The fifth edition of Heterocyclic Chemistry maintains the principal objective of earlier editions – to teach the fundamentals of heterocyclic reactivity and synthesis in a way that is understandable to second- and third-year undergraduate chemistry students. The inclusion of more advanced and current material also makes the book a valuable reference text for postgraduate taught courses, postgraduate researchers, and chemists at all levels working with heterocyclic compounds in industry.(内容紹介より)
対象
- 複素環合成を行なう研究者・創薬化学者・大学院生・学部生
解説
700ページにわたる分量で記述される複素環合成の教科書。複素環合成に取り組む方が参照するに適する決定版書籍である。定評があるため版が重ねられ、2010年発刊の第5版が最新版となっている。
大まかな構成は以下の通りである。
1章:複素環の命名法
2章:複素環の構造化学・スペクトルデータ
3~6章:複素環合成の総論
7~30章:複素環合成の各論
31~33章:複素環にまつわるトピック
2章では複素環の構造化学として軌道論や結合長などにに加え、代表的なNMR化学シフト値や吸光波長などもまとめられており(下図)、現場のリファレンスとしても有益な情報源となる。
3~6章は、複素環合成に関わる反応性、有機金属化学、実験法、逆合成などの総論である。どういった種類の考え方で複素環が合成されているか、どのような反応形式が世の中にあるのかを概観的に掴めるため、複素環合成に入門したばかりの学生達には特に適したレベルの内容だろう。最新の知見も多数盛り込まれており、たとえば触媒的C-H活性化などにも言及がある。
7~30章では、主要な複素環種別ごとに、どういう考え方・合成法でアプローチしていけば良いのか?が各論的に述べられている。単なる条件式の羅列ではなく反応形式毎に整理されているため、読複素環合成について包括的・体系的な理解が読み進めるうちに持てる構成になっている。たとえば「ピリジン」の項では、「窒素の酸化」「スルホニル化」「トリアジンからの合成法」「求核付加-脱離」「金属-ハロゲン交換」・・・といった具合である。各項目における代表的な実用条件・人名反応などは、もちろん一通り網羅されている。構造式の重要ポイントは赤でハイライトされ、見やすさにも配慮がある。各章末には実際の全合成例や演習問題も付属しており、理解を深める助けとなってくれる。
31~33章では、複素環化合物の応用的な側面について述べられている。具体的には材料・生化学・医薬化学領域に関わる話題に関して簡単に言及されている。合成法が主題ということもあり、本項ではあくまで読者の興味を引く程度の”さわり”しか述べられていない。各内容を深く学ぶには、専門書を当たる必要があるだろう。
ざっと眺めるだけでも、本当にバリエーション豊かな合成法・斬新な逆合成があることが分かる。環構築といえば脱水縮合、置換基導入といえばリチオ化かクロスカップリング・・・といった紋切り型の理解から、一歩進んだ考え方を身につける目的にも本書は役立つだろう。それなりの経験を積んだ合成化学者であっても、これまで見過ごしてきた反応条件を本書で沢山見いだすことができるはずだ。
2012年に本書の抄録版、2016年にその邦訳が刊行されている。複素環合成を学び始めたばかりの方、日本語で読みたい方はこちらも検討候補として欲しい。
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