内容
有機合成の実験には数多くの失敗や落とし穴が待ち構えていますが、多くの論文・専門書にはその詳細が記載されていません。本書は、膨大な論文の中から、とくに重要となる副反応の反応過程や、反応の適用範囲と限界を分析し、実験計画の立案時や予期しない化合物が生成したときの対処法など、失敗例を教訓とした成功へ導くヒントを満載しています。重要な反応が網羅されているので、新たな研究テーマを模索するとき、あるいは実験がうまくいかずに悩んでいる大学院生の指南書として、さまざまな場面で縁の下の力持ちとなること間違いなしです。
対象
有機合成に関わる研究を行っている大学院生、研究者
評価・解説
論文を読んでいてはあまり得られない、副反応とその原因についての一般的な考え方を例示とともに解説しています。例えば、アミドのN-アルキル化、O-アルキル化がどのような場合にそれぞれ進行するか、それをどう説明するか、クロスカップリング反応の傾向やその説明など、実際現場で起こる問題に関しても述べています。
ただし、内容としては比較的高度であるので、実際に有機合成に携わり、最低限大学院程度の基礎書を学んだ大学院生、または研究者に有用だと考えられます。
ワイリーから出版されているSide Reactions in Organic Synthesisの翻訳本。オリジナル本は13,000円近くするのに比べて、日本語版は4800円と1/3近くの価格で入手する事ができます。
内容はオリジナル本を忠実に訳してはいますが、忠実なだけに若干読みにくい感もあります。それでも、内容的は高度で非常に参考になるものばかりです。
同系統の本として、同出版社から出版されているDead Ends and Detours(天然物合成のトライ&エラーを解説している本)もオススメしたい。