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化学一般

すごい分子 世界は六角形でできている

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概要

化学の象徴とも言われる六角形の芳香環。身近な物質にも広く存在するが、カーボンナノチューブやカーボンナノベルト、フラーレンなどのように、最先端の科学でも注目され続けている。大手製薬メーカーで創薬開発者だった著者が、六角形の物質の魅力にとりこになった化学者たちのエピソードを踏まえながら、芳香環のおどろくべき性質を紹介する。多くの日本人化学者たちが活躍する有機化学合成の最前線が楽しくわかる画期的入門書。(「内容紹介」より)

対象

  • 有機化学・有機合成に興味のある方
  • 有機化学が少しとっつきにくいと思えている大学生
  • ベンゼン環が好きな方
  • 日本の化学の強みを知りたい方

内容

化学界隈ではおなじみ、サイエンスライター・佐藤健太郎氏の新刊が登場しました。本書が14冊目ということで、変わらずプロダクティブかつ真摯な執筆姿勢にはいつも敬服しております。同時期から化学啓蒙に片足突っ込んだ活動をしている筆者(副代表)からしますと、もうそんなに時間が経ったのか・・・と感慨深くもあります。

さて本書はタイトルからもおわかりの通り、がっつり「有機化学」、特に”亀の甲”=ベンゼン環(芳香族化合物)がテーマです。

古くはケクレが提唱したベンゼン環構造に始まり、芳香族化合物にまつわる歴史的研究のエピソードを経て、ベンゼン環がどのように世の中の役に立っているか、そして現代のホットトピックであるナノカーボン有機ELについても話が進んでいきます。芳香族性や合成法(求電子置換反応クロスカップリングなど)といった、基礎~応用トピックについてもバランスの良い説明がありますので、大学で有機化学を学んでいたり、高校有機化学から一歩進んだ内容に触れてみたい学生さんにも打って付けの書籍といえます。

また本書の特徴として、日本人化学者の成し遂げた世界的研究がしっかり解説されていることが挙げられます。もちろん専門的に過ぎる文体ではなく、例え話も交えつつ誰もが楽しめる筆致となっています。日本の有機化学はもともと強く、ノーベル化学賞も多数出ている「お家芸」分野です。最近でもその様子は全く衰え知らず、現在進行形で世界としのぎを削り続けているエネルギッシュな研究者揃いである事実が読み取れることでしょう。

なぜこのような現在進行形の生き生きとした内容が盛り込めているのでしょうか?それは新学術領域研究「π造形科学」にて、佐藤氏が広報を担当しているためです。毎月のニュースレターで領域研究者へのインタビューが公開されていることは、ご存じの方もいらっしゃるでしょう。つまりは現代の先端研究者から直接仕入れたトピックが、本書には記されているのです。

こうして普通にはなかなか知り得ないであろう、「研究現場のリアルな息づかい」を盛り込んだ啓蒙書籍が1冊完成し、また、先端研究成果を一般に伝えるルートもできあがるわけです。全ての方がハッピーになっている大変素晴らしい施策であり、グループ型研究費の使い方としても模範とすべき事例だと思えています。

基礎的な有機化学について知れることは勿論、先端有機化学が何を見据えて進んでいるか、日本の化学者がどんな立ち位置にあるかが、魅力的な筆致で理解できるオススメの一冊です。

佐藤健太郎氏の書籍:ケムステ紹介記事

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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