2025年3月15日から22日にかけて沖縄科学技術大学院大学 (OIST) にて開催された Science Challenge 2025 に参加してきました。
この記事ではその内容と,参加した感想を共有したいと思います。
そもそも OIST とは?
沖縄科学技術大学院(OIST)は、理工学分野の5年一貫制博士課程を置く学際的な大学院大学です。世界の科学技術に貢献するとともに、国内外の優れた研究者を招へいして質の高い研究を行い、世界最高水準の研究拠点を形成し、沖縄の技術移転と産業革新を牽引する知的クラスターの形成を図ることを目的として、日本政府によって設立されました。 (OISTのHPより引用)
よく特徴として挙げられるのが国際性,資金力,独立性の3つです。
なんと教職員の約半数,博士学生の約8割は外国人という日本では類を見ない大学です。 (OISTのHPより引用)
実際に1週間滞在しましたが,基本的に全ての会話や広告などは英語で行われていました。
Science Challenge とは?
Science Challenge とは毎年3月にOISTにて開催されるワークショップで,今回が記念すべき10回目でした。
STEM(理系)分野専攻の学部1年生から修士2年相当までの学生が応募可能で,好奇心と情熱に溢れる25人がOISTにて最高の1週間を過ごします。
OISTは沖縄県に位置し,ワークショップは対面で行われますが,この参加に必要となる交通費,食費,宿泊費などは全てOISTが負担してくれます (ココ重要) 。
実際に参加しましたが,個人として必要になったお金はお土産とおやつくらいでした。
これまでのワークショップの様子はOISTのHPより確認することができます。
参加方法は?
まずは毎年12月あたりに公開される募集サイトを確認してください (例えば2025年はこちらを確認してください) 。
次に提出書類を確認してください。こちらの提出書類をもとに選考が行われます。
提出書類の他にも大学の成績なども提出する必要がありました。
選考とは?
例年であれば 25人 が参加します (私が参加した2025年は26人でした) 。
気になる倍率ですが,例えば2024年は応募した学生が254人であり,倍率は約10倍でした。(OISTのHPより引用)
(倍率については年によって変わるため注意が必要です。)
選考にて提出するプレゼンやビデオは年によって微妙に変わりますが,例えば2025年は下のようなものでした。 (OISTのHPより引用)
プレゼンテーションスライド
テーマ:“Into the Unknown: What is your 0 to 1 idea?”
あなたの思い描く壮大な研究を実現するために無限の自由と研究資源が目の前にあると想像しよう。
そして、未知の世界に挑戦、探索し、そこで一緒に「0から1」を生み出だそう!自己紹介と研究への情熱を示す英語のプレゼンテーションスライド(PDF形式)を提出してください。スライドの枚数は6枚以内にしてください。
30秒のビデオ
自己紹介とワークショップに参加したい理由を語る30秒のビデオを英語で提出してください。
私はプレゼンスライドでは生体分子機械について,ビデオではワークショップに参加したい理由を主に述べました。
募集開始から締め切りまで十分時間があると思うので,ゆっくり考えられると思います。
全体概観
まずはワークショップ全体を通してどのようなことをしたのかを述べます。
私が参加した2025年のワークショップでは,主に次の6点のアクティビティが行われました。
- Excursion (遠足)
- Campus/Housing tour (キャンパスツアー)
- Science Talk (科学者によるトーク)
- Hands-on activity (実験/観察活動)
- OIST information session (OISTに関する説明会)
- Final Presentation (最終発表会)
もちろん以上に挙げた以外にも沢山のアクティビティが用意されていましたが,ここでは以上の6点に絞って説明します。
Excursion (遠足)
OISTでのアクティビティの前日に,参加者同士の親睦を深めるために excursion が行われました。
今年は Ocean Expo Park (海洋博公園) に行き,私は水族館と植物園に行きました。
参加する前は初対面の人と上手くやっていけるか心配でしたが,全くの杞憂で,集合してすぐに打ち解けることができて良かったです。
休日ということもあり水族館は人でいっぱいでしたが,植物園はそれほど人もおらず,ゆっくりと楽しむことができました。

日本最大の蝶,オオゴマダラ

ピラニア
Campus/Housing Tour (キャンパスツアー)
OISTのキャンパスや博士課程の学生が住んでいる家の見学をしました。
キャンパスの建物には 大きさ・綺麗さ・緻密さ(賢さ?) の3つに圧倒されました。
見た目は良いのはもちろんですが,建物の至る所に環境や安全への配慮がなされていました。
例えば建物の色,形などは自然に与えるダメージが少なくなるように設計されています。

キャンパス内にある中庭
OISTの教職員,研究者,学生にはハウジングの手当があり,その居住エリアの見学をしました。
居住エリアには幾つか種類がありますが,私が行ったエリアは近代の西洋のような雰囲気で,まるでヨーロッパに来た気分でした。
家の中も広く,中からは海と山がいっぱいに見える素晴らしいものでした。
ハウジングの手当についてはこちらをご覧ください。

イーストコートの街並み
Science Talk (科学者によるトーク)
OISTの科学者によるサイエンストークがありました。
今年は
- Jason Twamley 先生 (Quantum Science)
- Amin Chabchoub 先生 (Marin Physics and Engineering)
- Amedeo Roberto Esposito 先生 (Information theory)
の3人の先生のお話がありました。
それぞれの分野の最前線で活躍する科学者のお話はどれもエキサイティングでした。
特にJason Twamley 先生による超伝導のお話は興味深く,実際に最近の実験で使っているものを目の前で見せてくださいました。
Hands-on Activity (実験/観察活動)
事前のアンケートで自身の興味ある分野を選んでおり,それに従って幾つかのラボに割り当てられて実験を行いました。
2日間行われ,私は1日目に超伝導の実験を,2日目は航空流体力学の実験を行いました。
当然全ての説明なども英語のみで行われ,ついていけるか不安でしたが丁寧に説明をしてくださり,なんとかクリアすることができました。
OIST information session (OISTに関する説明会)
OISTのPh.D.課程のカリキュラム,支援制度などの説明がありました。
他にも博士学生から学生生活の様子を聞いたり,そもそも「どうして博士を取得するのか?」という問いに対して参加者でディスカッションを行う時間も設けられました。
なお,OISTにはRI (リサーチインターン) 制度があり,博士課程を考えている学士・修士の学生が3~6ヶ月間,OISTで研究活動ができます。
興味がある方はこちらをご覧ください。
Final Presentation (最終発表会)
Science Challenge 最終日に参加者1人1人による最終発表がありました。
発表内容は,今年のテーマである Into the Unknown: What is your 0 to 1 idea? であり,参加者それぞれが自身の夢や研究プランを自由に発表しました。
私は “What is life?” について3分間お話ししました。
OIST Science Challenge 2025 を終えて
とにかく1週間を通して常に刺激的で楽しかったです。
英語が公用語である環境や,綺麗で大きなキャンパス,最前線で活躍する科学者たちに囲まれて過ごしたことも大切でしたが,何よりも同世代の学生25人と1週間を過ごせたことが一番の思い出です。
毎晩夜遅くまで残って話したり,星を見たり,海に行ったりして,興味のある分野や将来の話をしました (宿舎には食堂やバーがありました!) 。
参加者以外にもOISTの研究者や博士学生,RI生とも話す時間があり,OISTはもちろん海外の大学や将来の進路選択について相談することができました。

宿舎である OIST Seaside House (写真はOISTのHPより引用)