[スポンサーリンク]

一般的な話題

2024年の化学企業グローバル・トップ50

[スポンサーリンク]

グローバル・トップ50をケムステニュースで取り上げるのは定番になっておりましたが、今年は忙しくて発表出来ておりませんでした。しかしながらこれを紹介せずに2024年は終われないということで遅ればせながら紹介させていただきます。

総評

C&ENの調査によると2023年のグローバル・トップ50の化学品の売り上げは約1兆ドルで、2022年と比べて10%減少しました。C&ENの記事では2023年は悪い年だったと明記しており、特にヨーロッパの化学会社にとってはエネルギーコストの高騰とウクライナとロシアの戦争によって大変厳しい年にだったと評しています。全体を見てもコロナ明けだった昨年とは状況が変わり、在庫整理や供給過多によって売り上げが減少したようです。

トップ50へのランクインとアウト

今年は9もの入れ替えが起きました。まず、中国の企業からは、Jiangsu Eastern ShenghongXinfengming Group、Hengyi Petrochemical、Tongkun Holding Groupがランクインしました。中国の石油化学は、設備の拡張が依然として続いており、続々とこのトップ50に参入してきています。また、 DSM-Firmenichは、合併により会社の規模が大きくなりランクインしました。

CelaneseもDuPontのエンプラ事業を買収してランクインしました。そのほか、AlbemarleHanwha SolutionSK Innovationが2024年版グローバル・トップ50にランクインしました。

一方、Westlake,とPTT Global Chemical, Borealis、Alpek、SQM、ICL Group、CF Industries Holdingsは売り上げの変化によりランク外となりました。Solvayは分社化され、OCIは、事業の一部をAbu Dhabi National Oil Companyに売却したため2社はランク外となりました。

上位ランキングの変動

1位から3位までは202年と比べて変動はなく、BASF, Sinopec, Dowとなっています。4位以降は変動があり、まずLG chemが4位となりました。昨年も順位を二つ上げており、バッテリー材料の事業が好調であることが売り上げを伸ばしている要因のようです。PetroChinaもLGと共にランクを上げて5位となりました。PetroChinaでは大型のプラントの建設・拡張を複数進めておりこれからも売り上げの増大が予想されます。

6位から9位には、石油化学の各社が名を連ねておりますが、売り上げの減少が目立つ結果となりました。ヨーロッパでのエネルギーコストの高騰により複数の企業がプラントの閉鎖を決めています。そんな中、Ineosではベルギーにエチレンクラッカーを建設しており、また昨年の12月にはドイツにクメン製造プラントを稼働させました。このクメン製造プラントでは、温室効果ガスを他のプラントよりも50%低減していることが特徴です。Ineosに限らず、グリーンエネルギーやバイオマス、プラスチックのリサイクルに関するコメントが各社に多数掲載されており、大企業にとっては必須のプロジェクトであることが感じられます。

日本企業の動向

昨年度は、大きく順位を落としたのが日本企業の特徴でしたが、昨年14位だった三菱ケミカルが15位になった以外は、軒並み順位を上げた結果になりました。とはいえ売り上げの減少幅の少なさで売り上げのランキングを上げており、暗いニュース、特に石油化学におけるプラントの閉鎖などが各社のコメントには目立ちます。

過去最大で暗いニュースが目立った化学企業グローバル・トップ50だったかもしれません。そんな中でも、中国企業の躍進は目立ち、また足踏み感もある電気自動車向けバッテリーにおいてもLG Chemや旭化成で事業の拡大が行われており、業界全体の構図や主力事業が大きく変わっていく途中なのかもしれません。持続可能な社会のために化学産業界が一丸となって技術を開発を進め、それが各社の利益につながることを期待します。

関連リンク

Avatar photo

Zeolinite

投稿者の記事一覧

ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

関連記事

  1. サラダ油はなぜ燃えにくい? -引火点と発火点-
  2. 反応化学の活躍できる場を広げたい!【ケムステ×Hey!Labo …
  3. 【速報】2015年ノーベル化学賞は「DNA修復機構の解明」に!
  4. ポルフィリン化学100年の謎を解明:calix[3]pyrrol…
  5. 有機硫黄ラジカル触媒で不斉反応に挑戦
  6. ノーベル化学賞解説 on Twitter
  7. 高分子マテリアルズ・インフォマティクスのための分子動力学計算自動…
  8. 化学探偵Mr.キュリー6

注目情報

ピックアップ記事

  1. 可視光応答性光触媒を用いる高反応性アルキンの生成
  2. 花粉症対策の基礎知識
  3. フリードレンダー キノリン合成 Friedlander Quinoline Synthesis
  4. alreadyの使い方
  5. 世界5大化学会がChemRxivのサポーターに
  6. サノフィ・アベンティスグループ、「タキソテール」による進行乳癌の生存期間改善効果を発表
  7. 高透明性耐熱樹脂の開発技術と将来予測【終了】
  8. 有機ケイ素化合物から触媒的に発生したフィッシャーカルベン錯体を同定!医薬品に欠かせないβ-ラクタム合成を安全かつ簡便に
  9. 素材・化学で「どう作るか」を高度化する共同研究拠点、産総研が3カ所で整備
  10. 既存の農薬で乾燥耐性のある植物を育てる

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2024年12月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

人工光合成の方法で有機合成反応を実現

第653回のスポットライトリサーチは、名古屋大学 学際統合物質科学研究機構 野依特別研究室 (斎藤研…

乙卯研究所 2025年度下期 研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

次世代の二次元物質 遷移金属ダイカルコゲナイド

ムーアの法則の限界と二次元半導体現代の半導体デバイス産業では、作製時の低コスト化や動作速度向上、…

日本化学連合シンポジウム 「海」- 化学はどこに向かうのか –

日本化学連合では、継続性のあるシリーズ型のシンポジウムの開催を企画していくことに…

【スポットライトリサーチ】汎用金属粉を使ってアンモニアが合成できたはなし

Tshozoです。 今回はおなじみ、東京大学大学院 西林研究室からの研究成果紹介(第652回スポ…

第11回 野依フォーラム若手育成塾

野依フォーラム若手育成塾について野依フォーラム若手育成塾では、国際企業に通用するリーダー…

第12回慶應有機化学若手シンポジウム

概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大学理工学部・…

新たな有用活性天然物はどのように見つけてくるのか~新規抗真菌剤mandimycinの発見~

こんにちは!熊葛です.天然物は複雑な構造と有用な活性を有することから多くの化学者を魅了し,創薬に貢献…

創薬懇話会2025 in 大津

日時2025年6月19日(木)~6月20日(金)宿泊型セミナー会場ホテル…

理研の研究者が考える未来のバイオ技術とは?

bergです。昨今、環境問題や資源問題の関心の高まりから人工酵素や微生物を利用した化学合成やバイオテ…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー