日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープンアクセスとなりました 33-3号 (2023年8月発行)の紹介です。
各項目のタイトルおよび画像から該当記事へ飛べます (新しいタブで開きます) ので、隅々までご覧ください。
■巻頭言
30 年後の創薬を想像したことはありますでしょうか。本記事では、リアルワールドとデジタルワールドを連携させるプラットフォームの重要性について、記載して頂きました。SF のような世界を体感した後、最後の段落ではチャレンジする勇気をもらえる内容です。ぜひご覧ください。
■創薬最前線
Life-changing valueの継続的創出に向けた協和キリンのチャレンジ
鳥居 義史
協和キリン株式会社
Life-changing な価値の継続的創出へ向けて、ライフサイエンスとテクノロジーの進歩を追求し続ける協和キリンの取り組みの紹介です。同社の研究組織体制とそのコンセプトに加え、人材マネジメントやオープンイノベーションの事例なども概説されておりますので、ご一読ください。
■DISCOVERY 2022年度 日本薬学会 医薬化学部会 MCS優秀賞 受賞
抗肥満薬を指向したNAMPT活性化剤の創薬研究
秋生 麻由子,辻 貴司,飯田 孝樹
第一三共株式会社
2022 年メディシナルケミストリーシンポジウム (MCS) 優秀賞を受賞された創薬ストーリーの紹介です。従来の抗肥満薬とは違い、エネルギー代謝を亢進するという新しいメカニズムによる作用、言い換えると「普通に食べながら痩せる」というコンセプトを実現しました。是非ご一読ください。
■DISCOVERY 2022年度 日本薬学会 医薬化学部会 MCS優秀賞 受賞
四環性骨格を有する選択的TRK阻害剤CH7057288の創製
伊藤 俊也
中外製薬株式会社
トロポミオシン受容体キナーゼ (TRK) を含むキナーゼ融合は、強力な発がんドライバーとして作用することから治療標的として注目を集めています。ユニークな四環性骨格を有する選択的 TRK 阻害剤を創製する中で、CYP3A 誘導活性の軽減を指向した構造変換は秀逸です。是非ご一読ください。
■DISCOVERY 2022年度 日本薬学会 医薬化学部会 MCS優秀賞 受賞
新規MC1R作動薬MT-7117(dersimelagon phosphoric acid)の創製
佐藤 篤史,山元 康王,諸熊 賢治,宮代 昌彦,鈴木 毅
田辺三菱製薬株式会社
皮下インプラント製剤であるペプチド医薬品の経口吸収可能な低分子化に挑み、見事に成功した創薬成功秘話です。是非皆さんメディシナルケミストの力量を感じ取ってください。
■DISCOVERY 2022年度 日本薬学会 医薬化学部会 MCS優秀賞 受賞
フラグメント創薬による中枢移行性を有する新規経口HDAC2阻害剤の開発
*1玉井 太一,*1石川 俊平,*1宮村 伸,*2Emiliano Tamanini,*2Dominic Tisi
*1大塚製薬株式会社, *2Astex Pharmaceuticals
2022 年度医薬品化学部会 MCS 優秀賞を受賞した中枢薬を目指したヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC)2 阻害薬開発に関する寄稿です。HDAC2 はヒストンアセチル化を低下させて学習・記憶に関連する遺伝子の発現低下を導くため、その阻害薬は神経変性疾患の治療に有益と考えられます。筆者らはフラグメントベース創薬 (FBDD) により中枢移行性があり経口活性をもつ新規阻害薬を開発しました。
■DISCOVERY 2022年度 日本薬学会 医薬化学部会 BMC/BMCL賞 受賞
新規抗がん剤候補物質E7130のグラムスケール合成と治験用原薬供給
*1大橋 功,*2岸 義人
*1エーザイ株式会社, *2ハーバード大学
海洋天然物ハリコドリンB 由来の E7130 の創薬開発に向けたハーバード大学とエーザイの総力をかけたプロセス研究に関する記事です。不斉炭素 31 個、分子量 1,000 を超える中分子のグラムスケール合成に向けた検討の経緯が解説されています。是非ご一読下さい。
■SEMINER
高次脳機能の理解に向けた分子標的ケモジェネティクス法の開発
清中 茂樹,堂浦 智裕
名古屋大学
名古屋大学の堂浦先生、清中先生らは、化学の力で脳高次機能解明に挑戦しいています。配位性基を変異導入したグルタミン酸受容体と Pd との結合を駆動力として、人為的にグルタミン酸受容体の活性化に成功。神経科学の新戦略「分子標的ケモジェネティクス」にご注目下さい。
■COFFEE BREAK
チョウと植物を強固に結びつけている絆の正体は味覚
尾崎 克久
JT生命誌研究館
アゲハチョウの仲間の幼虫は特定の植物だけを食べるため、メスの成虫は前脚で「味見」し、産卵するべき植物を探すそうです。そういった動作が産まれながらにチョウに組み込まれていることは自然の神秘ですが、それを分子生物学的に解き明かしていく研究にロマンを感じます。
■REPOET
265th American Chemical Society National Meeting & Exposition参加報告
三浦 智也
日本たばこ産業株式会社
265th American Chemical Society National Meeting & Exposition (Indianapolis) の参加報告です。ポスター会場では缶ビール片手にマスクなしで議論する等、アフターコロナの学会を満喫された模様です。“一人でも多くの患者の皆様に、一日でも早く新しい治療選択肢を提供する”、創薬に挑み続ける筆者の熱がこもった内容です。
関連書籍
本号の「BOOKS 紹介」より①
創薬研究のための相互作用解析パーフェクト〜低中分子・抗体創薬におけるスクリーニング戦略と実例、in sil...
本号の「BOOKS 紹介」より②
第41回メディシナルケミストリーシンポジウムのお知らせ
・【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都
MEDCHEM NEWS 紹介記事バックナンバー
・MEDCHEM NEWS 33-2 号 「2022年度医薬化学部会賞」
・MEDCHEM NEWS 33-1 号 「創薬への貢献」
・MEDCHEM NEWS 32-4 号「創薬の将来ビジョン」
・MEDCHEM NEWS 32-3号 「シン・メディシナルケミストリー」
・MEDCHEM NEWS 32-2号 「儲からないが必要な薬の話」
・MEDCHEM NEWS 32-1号「機械学習とロボティックス特集」
・MEDCHEM NEWS 31-4号「RNA制御モダリティ」
・MEDCHEM NEWS 31-3号「ケムステ代表寄稿記事」
・MEDCHEM NEWS 31-2号「2020年度医薬化学部会賞」
・MEDCHEM NEWS 31-1号「低分子創薬」
・MEDCHEM NEWS 30-4号「ペプチド化学」
・MEDCHEM NEWS 30-3号「メドケムシンポ優秀賞」