有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年7月号がオンライン公開されています。
暑すぎて暑すぎて、つまり実験日和ですね。涼しい部屋で有機合成化学協会誌を読みましょう!
キーワードは、「イミン類縁体・縮環アズレン・C–O結合ホモリシス・ハロカルビン・触媒的バイオマス分解」です。
今回も、会員の方ならばそれぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。
巻頭言:有機合成化学協会の研究会事業について:ご紹介と思い出
今月号の巻頭言は、慶應義塾大学理工学部の高尾賢一教授による寄稿記事です。有機合成化学協会の様々な取り組みについて紹介してくださっています。オープンアクセスです。
イミン類縁体の極性転換反応と生物活性物質合成への展開
イミンの窒素原子を求電子的に使うにはどうしたらいいのだろうか?イミンをカルボニル基と共役させ、反応条件をうまく設定すれば…。本総合論文には、α-イミノエステルの隠された反応性の発見と、そこから生みだされたユニークで、使い勝手のある分子変換の数々が示されています。含窒素化合物の合成に新たな選択肢をもたらす化学を、ぜひご一読下さい。
特異な光学特性を示す縮環アズレン類の創出
1日本大学工学部生命応用化学科
2弘前大学大学院理工学研究科
アズレンが光る!光らない分子として知られるアズレンだが、官能基化されたアズレンが酸に応答し光ることがわかった。本総説には著者らが取り組んできた官能基化アズレンの合成がまとめられている。
合成化学者はできれば安価な原料を基質に選択したいと頭の片隅にあると思います。本論文は、多様なバリエーションがあり安価な原料が多いアルコールやエーテルを基質に用い、ラジカル的なC-C結合形成反応について、菅先生と宇梶先生が考え抜かれた経緯と共に研究成果がまとめられています。また、低原子チタンの化学としても大変興味深い内容となっています。是非ご一読ください下さい。
ハロカルビンおよびカーバイド反応剤による炭素原子移動反応の開発
著者により独自に展開されてきた、テトラハロメタンと CrX2 の反応により生じる、様々な金属カルベノイド種の構造、電子的性質、反応性の違いがわかりやすく紹介されている独創的な総説です。クロム種の有機金属化学のみならず、有機化学の基礎的化学、合成化学への貢献も多大な研究で、読み応えのある内容になっています。
ボールミル処理の機械的な力を利用した触媒的バイオマス分解反応
1* 東京大学大学院総合文化研究科先進科学研究機構
2北海道大学触媒科学研究所
本論文では、東大の小林先生、北大の福岡先生が推進しているメカノケミカル反応によるセルロース、キチンの解重合反応とキチン分解物の化学変換反応について述べられています。ボールミル処理中に発生する機械的な力が、グリコシド結合の加水分解にどのように影響するのかについて、詳しく記載されています。分子を機械的な力により活性化させるというコンセプトと、非可食性バイオマスの分子変換技術は、どちらも本誌読者にとって大変魅力的な内容であるように思います。
Review de Debut
今月号のReview de Debutは1件です。オープンアクセスですのでぜひ。
光励起ニトロアレーンを利用した最近の酸化反応 (徳島大学大学院医歯薬学研究部)佐藤亮太
Message from Young Principal Researcher (MyPR):学生とともに研究を楽しむ
今月号のMy PRは、日本女子大学理学部の澁谷 正俊 准教授による寄稿記事です。
著名な先生でも、計画通りに進まないことは多いのですね。そのような状況でもどう研究をしていくか、非常に参考になります。
ケミカルズ覚え書き
今月号はケミカルズ覚え書きがあります!レアです!!
・LiHMDS、NaHMDSおよびKHMDS (アセンサス・スペシャリティーズ)岡野一哉
感動の瞬間:それぞれの場所でのそれぞれの感動
今月号の感動の瞬間は、愛知淑徳大学食健康科学部,愛知工業大学工学部,名古屋大学名誉教授の吉田 久美先生の寄稿記事です。
吉田先生がこれまでこんなに様々な研究場所で活躍されているとは知りませんでした。。。臨場感を感じました。必読です。
これまでの紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズを参照してください。