Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォームとなっております。株式会社エイゾスは2021年にリリースしたこのAI解析プラットフォームMulti-Sigmaおよび関連サービスを多くの皆様に展開中です。
複数のアウトプットを予測、多目的最適化(逆解析)
昨今のAIのツールの進化は目覚ましいものがあり、いわゆるAuto MLといわれる、ノーコードで機械学習・深層学習を活用するアプリも多く生まれています。現在、一般的な機械学習のツールは、予測のためのツールで、アウトプットは一つしか解析できないものがほとんどです。しかし、様々な現実の利用のシーンを考えると、それでは不十分なケースが多いのではないでしょうか。
例えば、アウトプットが複数必要な例として、セールスやマーケティングの例でいえば、お客様の満足度の評価軸や、あるいは売上と純利益など、アウトプットが複数あることが多いと思います。また、ものづくりの例で言えば、品質とコスト、あるいは機能については複数の評価軸があることが多いでしょう。こういったアウトプットが複数あるデータを解析するときに、既存Auto MLでは、アウトプットごとに学習データを用意して、解析を行う必要があります。
次に、最適化が必要な例として、お客様満足度を最大化するための営業活動や製品仕様を探索したり、あるいは品質やコスト、複数機能を同時に向上するための最適な製造条件を最適化したり、などが挙げられます。予測ができたら、次は最適な条件を探索したいというのは、一般的なニーズかと思います。
Multi-Sigmaは、アウトプットを複数同時に解析し、さらにそれら複数のアウトプットに対して逆解析を行うことを目的とした、極めてユニークなツールです。Multi-Sigmaでは、インプットは200パラメータ、アウトプットは100パラメータまで解析できるので、極端な例では、200のパラメータから100のパラメータを同時に予測するとともに、100のパラメータに対して、200のパラメータの最適な条件を探索することも可能です。その他にも、インプットに対して複数の制約を加えることも可能で、そのようなツールは世界に類を見ません。なぜ他のツールでは、それが難しいのか、それを本稿で説明します。
ほとんどの解析手法は、アウトプットを複数取れない
まず、昨今提供されているほとんどの解析手法は、アウトプットが一つしかとることができません。一方、深層学習の手法の一つであるニューラルネットワークは、アウトプットを複数とることができる極めて珍しい手法です。したがって、上記図の複数アウトプットをとれるツールは、基本的にはニューラルネットワークをベースにした技術が多くなっています。
予測と最適化は全く異なるアルゴリズム
一般的に、予測と最適化は、異なるアルゴリズムであるということを理解する必要があります。したがって、予測と最適化を行うためには、2つの異なるアルゴリズムを高度に融合する必要があります。近年、ベイズ最適化という、非常に便利な手法が提案され、特にマテリアルズ・インフォマティクスなどの材料開発分野を中心に、あっという間に利用者が広がりました。一見すると、ベイズ最適化は、いきなり最適化を行っているように見えるのですが、内部では、こちらも深層学習の手法の一つであるガウス過程回帰で予測モデルを作成し、準降下法で最適化するというステップで実装されている場合が多いです。
ガウス過程回帰は、原理的にアウトプットを一つしか取ることはできないので、現在、アウトプットが一つで、最適化できるツールは、ベイズ最適化をベースにした技術が多くなっています。また、近年では、複数のアウトプットを統合・単一指標化してベイズ最適化で多目的最適化する手法が提案されていますが、アウトプットを単一指標化してしまうため、各アウトプットの数値のバランスが考慮できません。また、通常の準降下法を用いたベイズ最適化では、最適解を一つしか提案できないため、多数のパレート解を得るためには、予測された最適解を真値として学習データに取り込み、別の最適解を提案する、というように、予測した点を真値として再学習することを繰り返すため、徐々に真値から乖離してしまう課題があります。Multi-Sigmaでの最適化は遺伝的アルゴリズムを使用しており、オリジナルの学習データのみを用いて再学習することなく複数のパレート解を得ることができる点で、精度の高い最適化が行えるのです。
予測AI×最適化AI
ニューラルネットワークとベイズ最適化(ガウス過程回帰)という深層学習の技術にふれましたが、この技術はまさに深層学習の2大技術で、用途に応じて両者を使い分けることが必要です。
Multi-Sigmaでは、ニューラルネットワーク解析とガウス過程回帰という深層学習の2大予測手法を切り替えて解析することができるとともに、遺伝的アルゴリズムという最適化の手法を前述の予測手法と高度に融合することで、複数のアウトプットを同時に予測するとともに、複数のアウトプットに対する逆解析を行うことを可能としています。遺伝的アルゴリズムも、AIの手法の一つとしてあげられることが多いので、いわば最適化のAIが予測のAIを使いながら、自動的に最適な条件を探索するという処理が行われています。
両方を使い分けることで、お互いの短所を補うことができ、現実の様々なケースに対して活用頂ける汎用的なツールになっていると考えています。
データに価値を、すべての人々にAIの力を
これは株式会社エイゾスとしてのビジョンです。AI、それはデータを価値に変える現代の錬金術と考えています。しかし、昨今のAIツールの開発スピードは凄まじく、極めて強力な技術である一方、現在はまだごく限られた人しか使いこなすことができていません。私たちは、製品やサービスを通じて、全ての人がAIの力を活用できる環境を整えることやデータを目に見える価値にすることのお手伝いをさせていただいております。
そのため、実験データをもとにする地に足のついた解析が可能で、研究開発現場に実用的なプラットフォーム開発を進めております。まずはお客様に満足していただき、そして、社会的な課題の解決、持続可能でスマートな社会創りを目指します。
【特徴】
1.ニューラルネットワークやベイズ最適化による予測
必要最小限のデータから解析が可能です。難解なハイパーパラメータの設定をお客様が行う必要はありません。自動調整技術(国際特許取得済)により高精度な予測が可能です。
2.感度分析を用いた要因分析
AIはブラックボックスと言われますが、Multi-Sigmaなら寄与度を数値で把握し評価できます。
3.多目的遺伝アルゴリズムによる最適化
複数の目的変数に対して、最大化、最小化、目標値を設定し、説明変数の最適化が可能です。最適化において、説明変数に制約を与えて解析をすることも可能です。
【対象分野】創薬・材料開発、マテリアルインフォマティクス、プロセスインフォマティクス、異常診断 等あらゆる問題に適用。
業務の属人化からの脱却、実験および解析の労力の大幅な削減にお役立てください。
【実績】
産総研の人工心臓のデザインの最適化の研究
NEDO アルミニウムのアップグレードリサイクルプロセスにおいて、18の実験データから6つの目的を同時に満たす製造条件の探索にも成功
https://storage.googleapis.com/aizoth-web-dev/uploads/article/thumnail/20210218_21_159.pdf
https://aizoth.com/research-project/nedo/
【受賞】
「エコテックグランプリ2021」:日鉄エンジニアリング賞&日本ユニシス BIPROGY賞
「第3回いばらきイノベーションアワード」:優秀賞
「第35回 中小企業優秀新技術・新製品賞」:ソフトウェア部門優秀賞
「第4回TCIベンチャーアワード」:優秀賞
社名 | 株式会社エイゾス(AIZOTH Inc.) |
設立 | 2014年8月 |
所在地 | 茨城県つくば市吾妻一丁目5番地7
ダイワロイネットホテルつくばビル2階 |
拠点 | つくば市、カリフォルニア州 |
代表者 | 河尻 理恵子 |
事業内容 | AI解析プラットフォームの開発、販売、および関連サービスの提供 |
資本金 | 1000万円 |
製品ホームページ | https://aizoth.com/service/multi-sigma/ |
本記事は株式会社エイゾス様からの寄稿となります。