[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

ファラデーのつくった世界!:−ロウソクの科学が歴史を変えた

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”4759823530″ locale=”JP” title=”ファラデーのつくった世界!:−ロウソクの科学が歴史を変えた”]

こんにちは、Spectol21です!

ノーベル賞受賞の吉野彰先生が、吉野先生の研究者としての原点として紹介されていた「ロウソクの科学」という本をご存じの方はそれなりにいらっしゃるかもしれません。今回紹介するこちらの本は、それをより読みやすく、さらに動画も交えて興味深く紹介しているものです。発売ほぼ直後に早速買って読んだのですが、内容が素晴らしく、一人でも多くの方に読んでほしいと思える本でした!

概要

1本のロウソクを使ったさまざまな実験をつうじて,身のまわりの科学と自然現象を子どもたちに伝えようとした天才科学者ファラデー.有名な電磁誘導の発見以外にも電気モーターの発明や,ベンゼンの発見,半導体現象の発見など,現代の私たちの暮らしを一変させる基本原理をみつけた偉大な科学者だ.もしもファラデーがいなかったら,この世の中はまったくちがったものになっていたかもしれない.
本書に掲載しているさまざまな再現実験は,二次元コードで動画をすぐに見られる.知的好奇心をくすぐる1冊.

(引用元:化学同人HP

対象者

誰でも。子どもから大人まで、誰でも楽しめる内容になっていると思います。文系の方には身近な生活に科学が関わっていることに目を向けるきっかけになること疑いなしです。理系の方にとっては、分野問わずファラデーの考え方に触れることは間違いなく良い影響を受けられると思います。子どもにとっても、自由研究のネタになるような実験が動画も含めて紹介されています。つまり、一人でも多くの方に、心からオススメできます!

内容と感想

以下の4パートからなっている本です。雰囲気を感じていただけるように、特に楽しかったパート4は内約も載せました!

目次

パート1 ファラデーってどんな人?
パート2 ファラデーとその発明・発見:現代にどう影響しているか
パート3 ファラデーと彼をとりまく科学者たち
パート4 実験「ロウソクの科学」の感動を再現する
【1日目】 ロウソクは、なぜ燃えるのだろうか? 炎・・・燃料になるもの、炎の構造、移動性、明るさ
【2日目】 ロウソクは、なぜ輝くのだろうか? 光・・・空気が必要、水の生成
【3日目】 燃えてできるのは水だ!! 燃焼の産物・・・水の性質、化合物、水素
【4日目】 水素もできる 水をつくる2つの元素・・・水素と酸素
【5日目】 空気のなかには窒素もある 空気の性質とロウソクのほかの成分
【6日目】 二酸化炭素が発生する 呼吸とロウソクの燃焼、そして光合成

結論から言うと、僕は心の底からこの本が好きになりました。この時代に出版してくださって、本当にありがとうございました。以下に、特に感銘を受けた点をいくつか紹介します。

推しポイントその1:身近なところから好奇心を引き出す工夫がたくさん!

科学の基本は身近な現象の観察から、というのを改めて感じさせてもらえました。ニュートンがリンゴが落ちるのを見て重量のことを考えたのは有名ですが、それに匹敵する話だと思います。ロウソクをめぐる観察と簡単な実験から、ここまで広く化学の洞察に繋がるのかというのにはいたく感心しました。

また、ロウソクの話にとどまらず、好奇心をくすぐる科学の紹介や実験動画の紹介がふんだんに含まれています。例えば非接触ICカードの原理を使ってLEDを光らせる一円玉を十円玉で電池を作ろうなど、身近なものでできる意外な科学実験も紹介されています。

推しポイントその2:ファラデーという人物の魅力がこれでもかというくらい紹介されている!

もともとすごい人なのはもちろん知っていたのですが、科学に対する情熱や、科学に対する考え方やスタンス全般に関しても感銘を受けました。特に、もともと貧しい家庭に生まれ、普通にしてたら科学を学ぶなんて許されない環境にいたにもかかわらず、製本屋に住み込みで働きながら好奇心のままに本をたくさん読んでチャンスを掴んだところや、あれだけ科学者として大成しておきながら市民講座にも極めて精力的に活動しているあたり、本当にすごいと改めて思いました。

実験ノートが論文の下書きとなっている、など、研究者としても参考になるところがたくさん…! もしファラデーの時代にノーベル賞があったら、ファラデーは6回は取っていただろうというのも納得のエピソード満載です。

推しポイントその3:動画が豊富!!

上でも一部紹介しましたが、本の中で紹介されている27本もの動画がすべてYouTubeで見ることができるようになっています。一つ一つの動画もコンパクトにまとまっており見やすいです。自分でもやってみたくなる実験もたくさんでした! ファラデーの実験講座「ロウソクの科学」を追体験できる構成になっています。よく考えられた流れになっていて、そのまんま大学の授業でも使ってみたいレベルです。ロウソクで燃えているのは、しろいもやである、など、目から鱗の認識を改めてする方も多いではないかと思います。

ちなみに、誰でもダウンロードできる、科学の偉人年表ポスターも公開されています!

大人も子どもも楽しめる仕掛けが満載の、楽しい一冊であることは疑いないです。家庭でできそうな実験も含まれていますので、夏休みの自由研究的なアクティビティのヒントになるかもしれません。現在の生活が様々な科学に支えられている以上、どんな方も是非一度読んでみていただきたいなと思いました。数百年の時を超えて、ファラデーの情熱を感じることができることでしょう。吉野彰先生が推薦するのも納得です。

ぜひ一冊手元に置いて、現在の私たちの生活がいかに科学の積み重ねの上に成り立っているか、想いを馳せてみませんか?

[amazonjs asin=”4759823530″ locale=”JP” title=”ファラデーのつくった世界!:−ロウソクの科学が歴史を変えた”]

冒頭の画像は、化学同人HPから引用しました。

spectol21

投稿者の記事一覧

ニューヨークでポスドクやってました。今は旧帝大JKJ。専門は超高速レーザー分光で、分子集合体の電子ダイナミクスや、有機固体と無機固体の境界、化学反応の実時間観測に特に興味を持っています。

関連記事

  1. マテリアルズ・インフォマティクスのためのデータサイエンティスト入…
  2. マイクロ波によるケミカルリサイクル 〜PlaWave®︎の開発動…
  3. 来年の応募に向けて!:SciFinder Future Lead…
  4. ハワイの海洋天然物(+)-Waixenicin Aの不斉全合成
  5. 有機合成化学協会誌2019年7月号:ジアステレオ選択的Joull…
  6. AI翻訳エンジンを化学系文章で比較してみた
  7. なんとオープンアクセス!Modern Natural Produ…
  8. アメリカ企業研究員の生活③:新入社員の採用プロセス

注目情報

ピックアップ記事

  1. 不均一系接触水素化 Heterogeneous Hydrogenation
  2. 可視光全域を利用できるレドックス光増感剤
  3. 2010年日本化学会各賞発表-学術賞-
  4. 最近の有機化学注目論文3
  5. 実例で分かるスケールアップの原理と晶析【終了】
  6. 山本明夫 Akio Yamamoto
  7. 元素・人気記事ランキング・新刊の化学書籍を追加
  8. プリーストリーメダル・受賞者一覧
  9. A-Phosパラジウム錯体
  10. 大村氏にウメザワ記念賞‐国際化学療法学会が授与

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2024年6月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

注目情報

最新記事

PythonとChatGPTを活用するスペクトル解析実践ガイド

概要ケモメトリクスと機械学習によるスペクトル解析を、Pythonの使い方と数学の基礎から実践…

一塩基違いの DNA の迅速な単離: 対照実験がどのように Nature への出版につながったか

第645回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院工学系研究科相田研究室の龚浩 (Gong Hao…

アキラル色素分子にキラル光学特性を付与するミセルを開発

第644回のスポットライトリサーチは、東京科学大学 総合研究院 応用化学系 化学生命科学研究所 吉沢…

有機合成化学協会誌2025年2月号:C–H結合変換反応・脱炭酸・ベンゾジアゼピン系医薬品・ベンザイン・超分子ポリマー

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年2月号がオンライン公開されています。…

草津温泉の強酸性硫黄泉で痺れてきました【化学者が行く温泉巡りの旅】

臭い温泉に入りたい!  というわけで、硫黄系の温泉であり、日本でも最大の自然温泉湧出量を誇る草津温泉…

ディストニックラジカルによる多様なアンモニウム塩の合成法

第643回のスポットライトリサーチは、関西学院大学理工学研究科 村上研究室の木之下 拓海(きのした …

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

医薬品設計における三次元性指標(Fsp³)の再評価

近年、医薬品開発において候補分子の三次元構造が注目されてきました。特に、2009年に発表された論文「…

AI分子生成の導入と基本手法の紹介

本記事では、AIや情報技術を用いた分子生成技術の有機分子設計における有用性や代表的手法について解説し…

第53回ケムステVシンポ「化学×イノベーション -女性研究者が拓く未来-」を開催します!

第53回ケムステVシンポの会告です!今回のVシンポは、若手女性研究者のコミュニティと起業支援…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー