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ヒドラジン合成のはなし ~最新の研究動向~

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Tshozoです。今回はアンモニアと関係の深いヒドラジンの話をします。アンモニア合成の進化を話している以上、これに関連する材料の合成方法もやはり進化しなければならないのが人類の発展ですので記述しなければならない気になったためです。お付き合いください。 なお本件の下敷きとして(文献1), (文献2), (文献3), (文献4)を多用しております。

ヒドラジンの概要 特徴と用途と反応と

ヒドラジンはH2N-NH2で示される窒素化合物でアンモニア(NH3)の兄弟分。その反応性の高さから様々な材料の原料として使用されたり「常温常圧で液体で燃えにくく、しかしいざという時に着火しやすい」という他の燃料にない特性を持つことから昔から(ナチスドイツ メッサーシュミット ME163の混合燃料に使用されたのが最初(文献1))ロケット推進剤/燃料として使用されたり、その関係でエネルギーキャリアとして提案されたり、発がん性のあるかなり危険な物質ですが特定業界では重要かつ不可欠な材料でもあります。市販されているのは無水、64%, 54%の水溶液の3種類がほとんどで無色透明の刺激臭のする液体であり、取り扱いには細心の注意を要します(文献3)。

定性比較一覧表

特長としては、アンモニアより窒素濃度が高く窒化させやすいことから半導体で使われる窒化膜の窒素キャリアとして応用が進んでいるほか、特異な還元性・反応性を生かして下記のような様々な反応に使用されます(ケムステ記事)。最終的に非常に安定な窒素分子が出てくる反応が多いため収率・反応速度が概して高く、窒素原子を分子内に効率的に導入するツールや還元剤としては非常に重要な位置付けにあると言えます。ただ酸化数がアンモニアより高く燃料的には劣化した状態(後述)なので、ロケット等の特殊な用途を除きコスト的にあんまりいいキャリアではないのは理解できるかと思われます。

al-ane3.gif

ケムステ内記事より引用 ウォルフ・キシュナー反応
ロシアで発見された当時は封管内、KOH固体、ヒドラジン、エタノールを混ぜ
200℃に加熱するという恐ろしい条件だったが今は色々マイルドになる工夫があるらしい
以前書いたチチバビン反応といい当時のロシアでは新化合物を殴って作っていた感がある

もう一つの代表的な反応 ケムステ記事より引用
ニトロ基を選択的に還元できるので便利 なおOs/Cを使わなくても
(強熱を伴ってよければ)微粒Fe3O4表面でも同様反応が進行する

ヒドラジンそのものの合成方法としては単純で(後述)各種方法が採られて生産され続けています。しかし、ヒドラジンの原料であるアンモニア価格≒天然ガス価格がこうも乱高下すると商売は正直しんどい。原料価格がクソ上がるのに合成方法がほぼ固定化しているので付加価値はなかなか上げられず、利益率は上がらない、しかしニーズとしては存在するので供給し続ける必要がある、、、という状況にあるのではないでしょうか。

ということでアンモニア合成方法が高速度で進化しつつある現在、ヒドラジン合成方法もそりゃ進化しなきゃいかんだろうということで下記をつづってみます。

ヒドラジン合成方法 歴史とおさらい

ヒドラジンの合成方法は大きく分けて3つ(文献2)、①Olin-Raschig Process、②Bayer Ketazine Process、③Atofina PCUK(Pechiney–Ugine–Kuhlmann/かつて存在したフランスのエンジニアリング会社名らしい) Process。どれも非常にシンプルでゴマカシが効かず、歴史上最初に開発された①は雑に進められる代償に高温(200℃)が要るのと副生成物が大量に出るため後処理や再利用等の配慮が必要、という特徴を持ちます。②③はその弱点を補ったもので、そのうち③がプロセスが複雑であるものの効率が①②より大幅に良い、という利点を持った先進的な合成方法という位置づけですね。というか、いずれも生成物の危険性や設備投資のことを考えると後発が出にくいと思われます。

①②③それぞれのプロセス ①②:(文献2) ③:(文献1)
なお②は比較的低温で進められる利点があり、
また③は他の2個より高収率で投入エネルギーが激減し
副生物がほとんど発生しないという特徴がある

しかもハーバーボッシュ法同様、①は生産開始から100年以上、②は80年以上、また③も発明から50年以上(1972年、1981年に生産開始)経っていて完成度が十分高く、ヒドラジン自体が他の材料にマネできない機能があるため確実な需要があり、各社成熟している。日本では三菱ガス化学と大塚化学の事業合併会社エムジーシー大塚ケミカルが8割以上のシェアを持ちマーケットをグリップし(日本カーバイド工業がそのほかのプレーヤー)で、海外に目を移すとArxada(旧Lonza/Arch Chemicals), Lanxess(旧Bayer), Arkema(旧Atofina)などの大手プレイヤーに加え中国からも競合が出て、一方で全体の使用量が伸びているという話も聞かないので(解釈次第かもしれませんが)年々競争が激化していると考えられます。蛇足ですが、どのメーカさんも設備の写真を公開していないようです。ロケット燃料、爆薬や軍需産業用材料とも大いに関連するためそうそう公開するわけにもいかないのでしょう。

また今一度ヒドラジンの構成を見てみますと、窒素の酸化数が-2で、アンモニア(-3)より1高い。しかし、上記プロセスを考えると原料としてはアンモニアから作らざるを得ない。つまりヒドラジン1分子をつくるのに水素1分子分もムダにしているということ。翻ってアンモニア製造コストの約90%が水素を作るための天然ガス原料費が乗っかっている(記事リンク)。つまり合成上ブレイクスルーが無ければ水素を無駄にし続けて原料高で苦しくなるのは必至。つまりアンモニアを経由しない、窒素から直接ヒドラジンを作るプロセスを、資源危機が叫ばれる今だからこそ強力に模索していかねばならないと強く思うわけであります。

そこで今回、アンモニアを経由しない窒素分子からの直接ヒドラジン合成がどういうものがあるのか、またその最新の研究動向はどうなっているのかを調べてみることとします。

アンモニアを介しない直接ヒドラジン合成 歴史

大前提として上記に挙げた①②③のプロセスは長期にわたる各社の実績と共に現在1社あたり年間数万トン以上を合成可能で、この強力な既存技術に互するためにはアンモニアを介さず窒素分子から直接合成できるだけでなく、スケール的にも特に最も先進的な③と量的・コスト的に比肩し得るものでなければらない。それには量的反応では太刀打ちできず、触媒的反応が必須。しかしそのハードルは想像以上に極めて高い。ということで歴史的な経緯を辿る意味も込めて、まず量論反応としての空気中窒素分子からのヒドラジン合成の歴史をみてみます。

空気中からの窒素固定 全体像 (文献4)より引用 今回のヒドラジン合成は赤矢印で示した部分
(図中は触媒的合成の代表例のみ示されています)

これが結構古く、50年以上も遡ります。窒素分子からヒドラジンを世界で初めて合成したのは旧ソビエトの有機金属化学者アレクサンダー・エフゲニー・シロフ(A. E. Silov・ロシア語版Wiki)博士で、反応はこういうもの↓。特に1969年の例は中心金属を還元側にバリバリ寄せ窒素を錯体ではさみ、還元剤とプロトンを放り込むというもの。この結果なぜかヒドラジンが出てくるという結果でした。確かにブリッジしている窒素にプロトンと還元剤(電子)が等分に2個ずつアタックすれば出来るんでしょうが、確率的だとしてもエネルギー的に起こり得るのか、と疑ってしまいたくなる。ともかくアンモニアを介さないヒドラジン合成の歴史はここに幕を明けました。

1969年、1970年のどちらも還元剤(Red)にNa/Hgアマルガムを使用しているもよう
1969年と1970年で中心金属を変えた理由は文面からは読み取れなかった (文献5)より引用

↑の反応を世界で初めて発案したアレクサンダー・エフゲニー・シロフ博士 
有機金属業界ではソビエト連邦のみならず、世界的に著名な方だったらしい

この成果があった1970年代はこの分野が盛り上がったようで、東京大学干鯛教授、イギリスのChatt教授をはじめ様々な著名化学者が数々の 関連論文を出されておられます(文献5)。しかし結局触媒反応は20世紀には実現せず、その後もShilov博士の敷いたベクトルからはなかなか外れられない状況が続きます。というか分析技術が発達しておらず試行錯誤の時期が続いたというべきかも。とはいえその模索の中でも現在につながる重要成果が出ており(下図)、いずれもなんでそういう反応に行くの、という感があります。

(文献5)から引用 Tylerの錯体構成は後述のAshleyによる世界初の触媒反応につながる
またBercawの成果はNH3が出ないという前例のない結果
ただ酸との反応でモノが壊れてしまい、この後の明確な発展はないもよう

で、こうした成果から50年以上の現在もなお触媒反応例は世界で5個未満。そもそも一体何が難しいかというと窒素から2個目の水素分子で止める=ジェットコースターの途中で下車する、それをどういう仕掛けでやるのか、という点。つまり強力な還元反応を進める触媒が居ないと窒素開裂が進まないけど、同時にヒドラジンが出来ても止まらず(反応性も高いので)アンモニアに至るジレンマをどう解決するのかが本件の肝要でしょう。個人的には幼少頃に百貨店屋上で熱中していたこういうゲームに似てるな、と思ったりしました↓。

新幹線ゲームと言うらしい Wikiより引用  実はWeb版もある(リンク)
ゴールに到達するとお菓子がもらえた

化学的なイメージは上図 (文献7)の図を筆者が編集して引用 MeCN中なので注意
窒素分子開裂後の坂道の途中に生成物たるヒドラジンがあり、
ここで選択的に止められる方法論やコンセプトが確立していないのが問題なのかも

その世界初の触媒的反応の例としてインペリアルカレッジロンドンのAshley教授によるもの(文献8)があります。科学的にどういう理由か判然としないのですが、明らかにアンモニアよりもヒドラジンが選択的に出来ている条件を見出しています(下図)。しかしかなりピンポイントの条件に留まっており論文後半で還元メカニズムや反応中生成物の溶解性などが影響することについてこまごまと書かれていますが正直スッキリした記述がなく、また続報が今のところ無く謎は膨らむばかり。ただAshley教授の論文発表ペースを見ているとかなり長期にわたっているので、何か深淵な検討が進んでいるのかもしれません。

(文献8)より引用 中心金属が0価の場合に限って高い選択性を発揮する
中心金属の酸化が進むと選択性が徐々になくなるのは確認済で、
また還元剤の強さを上げて(コバルトセン→KC8)も逆に選択性が悪くなることも示している

もう一つの例は何度もご紹介している東京大学西林教授による例(以前の記事)や、その進化版の(文献9)(下図)。これまでの西林教授の戦略は高還元性の中心金属を用い窒素分子を開裂させつつ、中心金属に配位した窒素原子を一電子還元剤で連続反応させるというもので、現在もその流れで世界初の大量常温常圧アンモニア合成を成し遂げた系統の触媒を適用されています。ただこの系統ではアンモニア合成が優先され行き過ぎてしまって目的のヒドラジンを得るにはちょうどではない。とはいえど還元性を緩めると触媒サイクルが回りにくくなる。そのせいかヒドラジンはかなりの量生成しているものの選択性がまだ十分に高まっていない。つまり、もう一つ「ひねり」が必要になるのでしょう。この問題に真摯に向き合った人にしか思いつかないような、「当たり前」の切り口になると思うのですが..

(文献9)より引用 ヒドラジン合成総量としてはどの例よりも多く
触媒安定性が光るものの
選択性がまだアンモニア>ヒドラジン、の状態
もう一つ何かカラクリが必要な状況であると推定

最後の例がCaltechのPeters教授によるもので昨年非常に興味深い作り分けに関する論文(文献10)を出しています。実はこれは作り分け条件をおそらく世界で初めて科学的に示した興味深いものですので、少し詳細に書いてみます。要点としてはpHだけでなく、還元剤の電位とのセットでアンモニアとの作り分けが可能であるとする内容。いかにヒドラジンを多く生成するかではなくアンモニアをいかに生成させないかという観点で進めた研究と言え、その着眼点は参りましたと言うべき卓越したものだと思われます。具体的には下図左の赤丸部の方に全ての生成物を流すべく、Selectivity Determining Stepであるところの配位した2個の窒素のうち中心錯体に食いついているほうの窒素原子をどう狙うかに力点を置いた形の反応制御と言えます。

もう少し踏み込んでみてみると、このSelectivity Determining Stepを確定するまでの経緯が面白く、もともとこの成果の少し前に光化学的窒素固定反応を達成した論文での取り組みが発端であり、

Our laboratory recently discovered that blue light irradiation of N2R catalyzed by a tris(phosphino)borane iron complex
(Fe+, see Figure 1b for structure), with decamethylcobaltocene (Cp*2Co) as the reductant (E°(CoIII/II) = −1.9 V vs Fc+/0 in MeCN)28 and anilinium acids (pKa ≤ 10.6 in MeCN), results in some selectivity for N2H4 (1:2.3 N2H4:NH3). In the dark, this catalysis almost exclusively produces NH3.

・・・系に光を当てるとヒドラジンがアンモニアと交じって少量出て、光を当てないとアンモニアだけしか出てこないという点。これがまず中心金属である鉄原子のどの電子状態が必須になるのか、の最初の判断基準になりました。そしてこの鉄原子の状態を作るにはかなり強い、一般に使われるSmI2よりも強い還元電位を持った電子供与体が必要になることが本論文の検討の中でわかります。

モデル反応によって明らかにした、還元剤の電位が
鉄原子-窒素錯体の構造に与える影響を明らかにした図(文献10)
まず外側の窒素原子を2つ反応させる状態を作るために強い還元電位が必要と主張

更に、FeN-NH2(メスバウアー分光で確認)状態に持ち込んだ後、ここで鉄原子から遠い外側の窒素をアタックするような酸性度の強いプロトン供与体の存在下ではアンモニアが出来てしまうため、より弱いプロトン供与能力を持つ構造(実際には上記の還元能力を高めてかつPCET:プロトン-電子カップリング移動反応が実行できる複合還元剤)を新たに開発し適用したのですから、なんとも恐ろしい努力を為されたのだと脱帽しました(下図)。

とは言えケチをつけるわけではないのですが収率がチョットヒクイデスネ、という印象。まぁ反応制御原理が明確になることがずっと大事なのでこの点は些少の事でしょう。また上記機構はPeters教授がこれまで進めてきているend-onで配位するタイプの窒素固定触媒に限ったメカニズムかもしれませんので、この内側のNを狙うという反応制御方法が主流になるかというとまだはっきりしないでしょう。

で、これら3つの各成果の共通事項は、まず触媒反応側で共通するのは当たり前ですが中心金属が鉄原子であるということ(Bercawの例はZrですが触媒反応でないので除外)。鉄原子を中心金属とした窒素固定触媒のアンモニア合成活性はこれまでモリブデン錯体に後れを取っており、現状でTON(≒触媒回転数)は200未満にとどまっています。しかしヒドラジンになるとこうも話が変わるのはいかにも不思議。Peters教授が示されたようにend-on型のヒドラジンに流れる傾向の構成ができやすいのが理由である可能性は高いでしょうけど、これを調べていくと鉄原子はニトロゲナーゼの中心金属のひとつでもあり、色々調べていくと生体内で鉄原子とモリブデン原子がお互いを補うように窒素固定反応が動いていた、とかいう美しい反応機構とかが出てくるとかっこいいのですがどうでしょうか。ダメですかそうですか。

あともう一つはpH制御が大事になる点。ヒドラジンは塩基性ですから酸と仲が良く、できた瞬間に中和されアンモニアに至らず途中下車的に進むイメージでしょうか。じっさいAshley教授の例の場合、溶媒への溶解性も加味した[Ph2NH2][OTf]という、試薬メーカにも存在しないような混合酸(しかも弱酸の部類)を用いていて、また西林教授もBrookhart酸をベースにした混酸を使っており、Peters教授も上記のとおりpHバランスが反応機構的に(内側のNを狙うという観点で)大事という見解を示しています。この点で言うと、反応収率等が改善されるためにはより酸に安定な窒素開裂・還元触媒が必要になってくるのではないか、その場合鉄原子が酸に対してモリブデンや他の触媒よりも有利にはたらいているのかもしれない、的なことが考えられます。ただプロトンと仲がいいというのは有機溶媒に対する溶解性に制限がつくことにもなり、ここらへんは相当シビアな戦いになるのかもしれません。

一方で、還元剤(電子供与体)についてはPeters教授がその電位に適値があるという指針を示しているものの、ちょっとホンマかなあという印象があり主張されている値をそのまま受け取れるかは微妙。ただあまりにも強いのはアンモニア比を上げてしまうというのは概論的に推定できるわけで、ここにも何かキャップが必要になるでしょう。

しかし全体を通してみてみると、こういうpHや電位を厳密に調整する反応は制御が厄介であんまり量が合成できるものになると思えない(偏見)。あとプロトン供与体を回収するにも面倒。イオン交換樹脂のような回収分離できるものを介在させての合成も少し想像しましたが、一般にイオン交換樹脂は官能基がかなり強い酸だったりしますしまたその樹脂に生成物などがトラップされてうまくいきそうなイメージが出来ない。となると窒素が開裂されたブリッジ中間体が安定な状態を狙ってプロトンが2つ同時にアタックするとか、ヒドラジンのような直線構造しか出来ない立体障害を持つ触媒構造とかいう離れ業が、、、とかも思いましたが熱力学上怪しいですし手の込んだ話で値段が安くなる要素が見えなくなる。

ということでこのきわめて難易度の高い課題に対しては無責任に各研究室の取組みの発展を祈るしか出来ないのですが、手立てがなくなっているわけではなく「やることはなんぼでもある」なのだと思います。個人的に気になっているのは上記の過去のBercawの例を代表として「うまくいったけどうまくいかなかった」パターン。こういうので何故触媒反応がうまくいかなかったのか、是非とも知りたい次第ではありますので。

終わりに

ということでかなりのハードルが立ちはだかっているわけなのですが、ここ20年ほどで急速に進んだ窒素固定化学の発展の流れに合わせると何かのきっかけで急速に進みそうではないか、と予想しております。その理由はやはりアンモニア。20年前は常温常圧なぞ夢のまた夢のレベルでしたが、各研究者の尽力により少なくとも産業化を議論するレベルまで至っている。同じ柳の下に二匹ドジョウが居るかどうかというのは正直わからんですが、まぁ同じ窒素化学なので居るでしょう! 1910年~1930年のドイツ化学発展史を専門にしている筆者からすると、なんというか科学がはっきりすれば色々一気に進むような話なのではないかと。

また付加価値的なところとしては超高純度無水ヒドラジンが一気に作れるようになる、とか一気にヒドラジン類体を合成できるとうれしい、ということが考えられる。後者の観点は逆にR-とかを途中で付けた方が反応性が制御出来て良い、ということもあり得ない話ではないので、ここらへんは「いっぺんやってみる」精神が必要なのではないでしょうか。

ただヒドラジンが空気と水とかから作れたらいうなれば爆薬が空気と水とエネルギーから出来るわけで、ヘタな使い方をすると元気玉とかいうレベルのことが実現してしまうわけです。というか、ちゃんと管理しないと危ない。〇ロみたいなことに繋がってしまうのである意味危険な領域なのかもしれません。世界中が色々と難儀な状況に突入しつつある現在、こういう観点でも研究の発展を見守っていきたい次第ですね。

それでは今回はこんなところで。

参考文献

1. “The Late Show with Rob! Tonight’s Special Guest: Hydrazine” Robert Matunas, December 8th, 2004, リンク

2. “HYDRAZINE SYNTHESIS: COMMERCIAL ROUTES, CATALYSIS AND INTERMEDIATES” Res. Chem. Intermed, Vol.24, No.2, pp.183-196 (1998), リンク

3. ” Synthetic Nitrogen Products; A Practical Guide to the Products and Processes”, Gary R. Maxwell Published by Springer US, リンク

4. “Dinitrogen Fixation: Rationalizing Strategies Utilizing Molecular Complexes”, Chem. Eur. J. 2021, 27, 3892 – 3928, リンク

5. “Nitrogen Fixation: Fundamentals and Applications”, Proceedings of the 10th International Congress on Nitrogen Fixation, St. Petersburg, Russia, M. E. Volpin & A. E. Shilov, May 28—June 3, 1995,  リンク

6. “Transition Metal‐Dinitrogen Complexes: Preparation and Reactivity”, Yoshiaki Nishibayashi, published:25 January 2019, リンク

7. “Evaluating the Thermodynamics of Electrocatalytic N2 Reduction in Acetonitrile”, ACS Energy Lett. 2016, 1, 4, 698–704,  リンク

8. “Selective Catalytic Reduction of N2 to N2H4 by a Simple Fe Complex”, J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 13521−13524, リンク

9. “Catalytic Reduction of Dinitrogen to Ammonia and Hydrazine Using Iron Dinitrogen Complexes Bearing Anionic Benzene-Based PCP-Type Pincer Ligand”, Bulletin of the Chemical Society of Japan, Volume 95, Issue 4, April 2022, Pages 683–692, リンク

10. “Highly Selective Fe-Catalyzed Nitrogen Fixation to Hydrazine Enabled by Sm(II) Reagents with Tailored Redox Potential and pKa”,  J. Am. Chem. Soc. 2023, 145, 27, 14784–14792, リンク

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メーカ開発経験者(電気)。56歳。コンピュータを電算機と呼ぶ程度の老人。クラウジウスの論文から化学の世界に入る。ショーペンハウアーが嫌い。

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