「幼い子どもがいるので勤務地が遠いと通えない」「朝夕の子どもの世話で、勤務時間が制限される」など、子育て中の女性が転職を考える際に思い悩むことは数多くあります。
しかし、高い専門性を持ち、家庭との両立を図りながら仕事でも自己実現を果たしたいと思っている方も多くいらっしゃいます。
今回の事例は、2人の子どもを育てながら受託検査機関に勤務する女性の話です。ある理由から転職活動に踏み出しましたが、希望する求人は皆無でした。にもかかわらず、彼女は希望するポジションでの転職を成し遂げます。
転職成功の背景には、LHH転職エージェントのLife Science紹介部 Biotechnology課で活躍する湯浅友二さんのサポートがありました。どのようにして彼女の転職を成功に導いたのか、そのプロセスをうかがいました。
(この記事のポイント)
- 専門性を生かし、仕事にやりがいを求める求職者の強い意志
- 「求人なし」を覆したコンサルタントの発想と行動力
- 求職者の心情をくみ、気持ちに寄り添うサポート
- 「ビジョンマッチング」による丁寧な面接対策
- 求職者の自信を育むキャリアビジョンの明確化
経歴・人柄に遜色なし。ただひとつ障害となった転職条件とは
「この条件を満たすのは、ちょっと難しいかもしれない」
最初にIさんの転職希望を聞いたとき、湯浅さんはそう思いました。すでに転職活動を始めていたIさん自身も、同様の感触を持っていました。他の人材紹介会社を利用していましたが、条件に合う求人がまったくなかったのです。
「例えば関西とか関東といった大まかな地域の指定なら、Iさんのキャリアから見て、いくつも求人企業は拾い出せると思われたのですが……」
Iさんは40代の女性で2児の母です。受託検査機関で病理標本の作製や薬理試験などの業務を経験し、その後に品質管理・品質保証を担うポジションに就いていました。
「そのキャリアを生かして転職したいけれど、子育て中で保育園の送り迎えもあるので、自宅から通える会社を強く希望していました」
Iさんが希望される通勤範囲内での求人案件は限られており、さらに専門性を生かす仕事を見つけるのは難しくなります。実際、LHH転職エージェントの求人情報にも、Iさんの希望に合致する求人はありませんでした。
しかし、湯浅さんには1社だけ、心当たりがありました。募集こそしていませんが、ある医薬品の受託製造会社が新工場を建設中であることを知っており、それがIさんの通勤圏内だったのです。
湯浅さんが所属するLife Science紹介部 Biotechnology課は、バイオ、製薬、医療機器、化学などの領域にかかわる転職支援をしています。同社では、業界ごとに専門的な知識や情報に精通したコンサルタントが転職支援に当たりますが、加えて特色のひとつとなっているのが「360度式コンサルティング」です。
これは、1人の担当者が企業と求職者の双方をサポートする一気通貫型のサービスです。他の人材紹介会社では、企業と求職者の担当者が別々の場合が多いのですが、360度式コンサルティングなら、求人企業と求職者の要望をワンストップでつなげられます。
求職者を担当しているコンサルタントが企業も担当しているため、製薬会社をメインとする転職支援を行っている湯浅さんは、その新工場に関する最新情報も持っていました。
「募集はしていなくても、来春には稼働を開始する工場ですから、人材を求めているはずだと思い、問い合わせてみました」
そして、Iさんの話をすると「会ってみたい」という返事がありました。360度式コンサルタントで培われた企業との信頼関係が、隠れていた求人を掘り起こしたのです。
「仕事のやりがい」を求めての転職にコンサルタントが寄せた思い
Iさんの転職理由は、ジョブローテーションにより、意にそぐわない部署に異動となったことでした。薬理試験などに携わってきたのに、営業事務に配置換えされました。
Iさんは、事務職を望んでおらず、試験業務を続けたいと声を上げましたが、会社は聞き入れてくれませんでした。仕事にやりがいを感じられなくなり、今後も自身の意志とは関係なく異動が繰り返されるのではないかと、将来に不安を抱くようにもなりました。
湯浅さんには、Iさんの気持ちがよく理解できました。湯浅さん自身も以前、仕事にやりがいを感じられずに悶々とし、転職に踏み切った経験があるからです。
その転職の契機となったのは「人財躍動化」という言葉との出会いでした。「人材躍動化」とは、人材サービスのグローバルリーダーであるAdecco Groupが共有する理念です。湯浅さんは、誰もが力を最大限に発揮できる環境づくりを目指すその考え方に共感し、その人材紹介・転職支援ブランドであるLHH転職エージェントが最大の特色とする「ビジョンマッチング」にも強く惹かれました。
これは、求職者のキャリアビジョンやライフビジョンに基づく転職支援を行うというもの。単に就労条件をすり合わせるのではなく、将来にわたって活躍できる環境を求職者が得られるよう、すなわち「人財躍動化」を実現するために、求人企業との最適なマッチングを追求してゆく独自の方法論に基づく手法です。
仕事にやりがいを求めて現職に就いた湯浅さんは、Iさんの気持ちに寄り添い、その希望をかなえるために全力でサポートすることを決意しました。仕事と子育てに追われながら転職活動に取り組むIさんとの伴走が始まります。
求職者との対話を通して明らかにするキャリアビジョン
Iさんとの初回の面談で、湯浅さんが受けた印象は、コミュニケーション能力の高さだと言います。
「どの質問にもハキハキと答えられる方でした。ご経歴の面でも、品質管理・品質保証の業務にかかわるマネージメント経験や部下の指導経験もありました」
企業にIさんの経歴や人柄を伝えたとき、担当者が関心を示したのも、それらの点でした。しかし、一次面接への準備を進めるなかで、湯浅さんには一抹の懸念がありました。それはIさんが、自身のキャリアビジョンをうまく言葉にできなかったことです。
「面接では、Iさんがなぜ品質管理のポジションを希望するのかを『将来はこうありたい』という抱負を含め、きちんと説明しなければなりません。けれども、Iさんはジョブローテーションで職種が変わった方、つまり自身の希望でポジションが変わったわけではないので、キャリアビジョンを自分なりにまとめて話すことが難しいようでした」
そこで湯浅さんは、Iさんのこれまでの業務経験をふり返ることから始め、丁寧に質問を重ねながら、これからの希望を引きだそうとしました。
「お子さんの世話や家事があるので、Iさんとの面談は夜に1時間くらいしかとれませんでした。その終わりごろに『実は、無菌製剤や注射剤などの経験を増やしていきたいと思っていたんです』という会話がポンと出てきたんです」
無菌製剤や注射剤は、求職先の企業が主力とする領域です。それを指摘すると、Iさんはようやく腑に落ちた表情になりました。それを見て取った湯浅さんは「もう一度、面談をして、キャリアビジョン・ライフビジョンを明確にしましょう」と提案。当人の希望もあり、面接へ向けた2度目の面談を行いました。
「2度目はスムーズに運びました。最後にはIさんは『自信を持って、面接でこれは伝えてきます』と言ってくださいました」
湯浅さんが『こう話しましょう』『そこはこのように』と指示や指導をしたわけではなく、Iさん自らが考え、導き出したキャリアビジョン・ライフビジョンに、当人も何等かの手ごたえを感じた様子。「その一言がうれしかった」と湯浅さんはふり返ります。
業種別の支援体制とビジョンマッチングによる成果
一次面接の結果は良好でした。
「緊張はしたようですが『落ち着いて話ができました』と言っていました。また、Iさんが『経験を増やしたい』と言っていた領域については、面接官からいろいろと深掘りをする質問もされたようです」
再び準備を重ねて臨んだ2次面接後、Iさんは「入社したいという気持ちをアピールし過ぎたかもしれない」と言っていましたが、その表情は晴れやかだったそうです。Iさんは内定を受け、入社を決めました。
今回のケースが成功したポイントを、湯浅さんは二つ挙げました。
一つは、求人募集がない企業に対し、その企業に関する最新情報をともに、求職者の経歴に合うポジションがあるか、そして募集の可能性はあるかを直接打診したことです。これは、業界別で専門性の高いコンサルタントチームの存在と、企業との関係性があってこそできることです。
もう一つは、ビジョンマッチングにより、求職者のキャリアビジョン・ライフビジョンを明確にしたことです。
「たいていがそうですが『あなたのキャリアビジョン、ライフビジョンは?』と尋ねられて、スラスラと答えられる方はごく希です」
しかし、中途採用の場合、求人企業は求職者の経歴や人柄だけではなく、人材として成長する可能性と、その人の専門性や経験がどう自社に貢献するかを評価します。ですから、キャリアビジョン、ライフビジョンを明らかにすること、それも型どおりの言葉ではなく自分の言葉として表現できることがとても大切なのです。
「ふだんはあまり意識していなくても、仕事のうえでは『この能力を伸ばしたい』、私生活では『こういう家庭人でありたい』という思いは誰にでもあります。それを明らかにしていくのがビジョンマッチングという手法なのです」
そして「それを用いて支援することこそがLHH転職エージェントのコンサルタントである私たちの介在価値です」と言葉を結びました。
まとめ
子育て世代の転職にはとかく制約がつきまといます。特に女性の場合は、キャリアを生かして仕事を続けたいと思っても、専門外の職種への転職や、転職そのものをあきらめてしまう方も少なくないと思われます。
LHH転職エージェントでは、webに掲載されない求人情報を提供することができますし、今回のケースのようにときには求職者が希望する求人先を探し出すこともあります。
「キャリアも専門性もありながら、それを生かせないのは本当にもったいないことです。ご自身の条件に合う求人がなくても、すぐにはあきらめないで私たちにご相談ください」と湯浅さんは言います。
転職支援のプロフェッショナルがビジョンマッチングを用いて伴走する求職活動。1人で思い悩むことなく、次のステップへ踏み出すことができます。
(注)
※人材サービスのグローバルリーダーであるAdecco Groupは、日本における人材紹介および転職支援サービスのブランド「Spring転職エージェント」を「LHH」へ統合しました。これに伴い2023年4月3日、同ブランド名を「LHH転職エージェント」に改称しました。
コンサルタント:湯浅 友二
LHH転職エージェントで、メディカル業界の専門職の転職支援を行う。内資・外資系製薬企業、CRO、ベンチャー企業に対して求職者と企業の双方を担当する360度式の一気通貫型コンサルティングにより、双方に対して精度の高い情報を提供。今後の業界動向も踏まえたキャリアのご提案と細やかなサポートを心がける。
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LHH転職エージェントについて
LHH転職エージェントとは、世界最大の総合人財サービス企業アデコが日本で展開する転職支援サービスのブランド名称です。国内では大都市圏を中心に事業を展開し、各領域に精通した転職コンサルタントがさまざまな業界・職種の転職サポートを行っています。ライフサイエンス・メディカル領域においては、化学業界を軸に、理化学機器、製薬、再生医療、医療機器といった分野でご活躍される方々の転職をサポートしています。