前回は「アゾ重合開始剤の特徴と選び方」についてご紹介させていただきました。
第二回では、さらに一歩踏み込んで、「こんなアゾ重合開始剤があったらいいのに」を叶える弊社開発商品を紹介させていただきます。
AIBNは一般的なアゾ重合開始剤のひとつですが、溶解性が低く、ニトリル基による毒性や着色といった問題があります。
富士フイルム和光純薬では、AIBNの課題を解決できる新しい開始剤「V-601」を提供しています。V-601は、 AIBNとほぼ同じ活性を持ちながら、各溶媒への溶解性、分解物の毒性、化合物の透明性において優れた特長を持っています。さらに、低金属グレードも開発しており、半導体などの最先端材料への展開も可能です。
無料サンプルも提供していますので、ぜひお試しください。
V-601の基本情報
化学名 | Dimethyl 2,2′-azobis(2-methylpropionate) |
CAS RN® | 2589-57-3 |
分子量 | 230.26 |
分子式 | C10H18N2O4 |
Ⅰ.V-601とAIBNの違い
(1) 半減期温度はほぼ同等
V-601はAIBNとほぼ同等の半減期温度を持っているため、AIBNと同じ重合条件で使うことができます。
AIBNは長い歴史を持ち、多くの研究論文で使用されてきました。V-601は、それらの論文で使われているAIBNの代替品として利用できます。
(2) 透明性が高い
V-601はAIBN比較して重合物の着色が少なく、液晶ディスプレイや塗料用樹脂などにも対応可能です。
AIBNはニトリル基の影響で着色が避けられませんが、V-601は非ニトリル性のため重合したポリマーの透明性に優れています。
(3) 溶解性が高い
V-601はAIBNに比べて溶剤およびモノマーへの溶解性に優れており、ハンドリングが容易で分子量を制御しやすいというメリットがあります。濃度の高い溶液を作りたい方には特におすすめです。
また、溶解性が高いため、反応系の溶剤を削減でき、VOC(揮発性有機化合物)低減やエネルギーの削減による環境保護に貢献できます。
(4) 分解生成物の揮発性が高い
V-601の分解生成物はAIBNのそれよりも揮発しやすい性質を持っています。また、V-601の分解生成物は水と共沸するため、反応後に簡単に取り除くことができます。
重合後に残る分解生成物は、不純物であるというだけでなく、VOC(揮発性有機化合物)になる恐れがあります。分解生成物の揮発性が高いV-601を利用することで、製品化後のVOCの低減が期待できます。
(5)分解生成物の毒性が低い
V-601はAIBNに比べて分解生成物の毒性が低く、作業環境の改善に繋がります。
Ⅱ.V-601の使用例
これまでご紹介したV-601の特性を活かして、様々な用途に使われております。
特に透明性や溶解性の高さから、高品質なポリマーを求められる分野で選ばれております。
Ⅲ.HPグレード(金属管理品)
さらに不純物の管理、特に金属管理が求められるポリマーの製造向けに、V-601の金属含量を管理したグレードもございます。半導体やLCD向けのポリマー製造に最適です。
当社では、V-601の他にも、AIBN、V-65(低温用)の金属管理品をご用意しております。
アゾ重合開始剤の金属管理品について、詳しくは⇒こちら
Ⅳ.アゾ重合開始剤残存率計算ツールのご紹介
最後に、アゾ重合開始剤をお使いの皆様へお役立ちツールを紹介します!
通常、残存率や反応条件(分解反応時間、分解反応温度)を特定するためには、文献を参照したり複雑な計算式を用いて計算したりする必要がありますが、それらをワンクリックで算出できるのが『アゾ重合開始剤 残存率計算ツール』です。
当社の研究部門でも大好評のツールですので、研究の際には是非ご活用ください!
ここまでお読みいただきありがとうございました。
富士フイルム和光純薬では、豊富な知見から様々なご提案をさせていただいております。皆様の研究をサポートいたしますので、お気軽にお問い合わせください。
アゾ重合開始剤とその関連技術について学べるシリーズ
- 第1回 アゾ重合開始剤の特徴と選び方
- 第2回 AIBNに代わるアゾ開始剤!優れた特長や金属管理グレート品、研究に役立つ計算ツールもご紹介
- 第3回 ラジカル重合の弱点を克服!精密重合とポリマーの高機能化を叶えるRAFT重合
- 第4回 ポリマーを進化させる!機能性モノマーの力