ラジカル重合はビニルモノマーなどの重合に用いられる方法で、開始反応、成長反応、停止反応を素反応とする連鎖反応であり、主にアゾ化合物や過酸化物が開始剤として使用されています。アゾ重合開始剤は熱及び光により分解し、フリーラジカルを発生するアゾ基(R-N=N-R)を持った化合物です。この反応性に富んだフリーラジカルを利用し、各種ビニル系モノマーの重合や有機化合物のハロゲン化反応などに使用されております。
この記事では、アゾ重合開始剤の特徴やラジカルの発生機構について詳しく解説し、重合開始剤の選定方法についても紹介します。
ラジカル重合開始剤について
ラジカル重合開始剤は、大きく分けて下記の3種類があります。
・熱重合開始剤(熱による重合)
・レドックス開始剤(酸化還元反応による重合)
・光ラジカル開始剤(光による重合)
これらの中でも熱重合開始剤は広く利用されており、主に「アゾ化合物」と「過酸化物」が使用されます。アゾ重合開始剤は、過酸化物と比較して、安全性と反応制御の点でメリットがあります。
アゾ重合開始剤の特徴(過酸化物と比較して)
アゾ重合開始材は以下の特徴を有するため、安全かつ生成するポリマーを制御することができます。
・一次反応で分解します。
・誘発分解しません。(金属接触などで分解しません)
・分解時に溶媒の影響を受けません。
・炭素ラジカルを生成し、過酸化物と比べて副反応が少ないです。
・衝撃に対して安定であり、操作、輸送及び保管中の取り扱いが安全です。
富士フイルム和光純薬では、有機溶剤に可溶なタイプ、水に溶解するタイプなど様々な構造を有するアゾ重合開始剤を取り揃えております。お客様の用途に合わせて最適なご提案をさせていただきますので、お気軽にご相談ください。
ラジカルの発生機構
・アゾ重合開始剤が熱または光で分解し、窒素ガスと炭素ラジカルを発生する(1)。
(溶液での分解は一次反応速度式に従い、分解温度(分解活性)は開始剤の構造によって異なる)
・炭素ラジカルがビニルモノマーと付加反応(付加重合)し、ポリマーを生成する(2)。
・(ポリマー末端にアゾ開始剤が導入されるので、末端基の効果が期待される)
・一般的なアゾ重合開始剤の開始剤効率は0.5~0.7程度であり、残りは再結合(3)や不均化(4)を起こす。
アゾ重合開始剤の選定方法
アゾ重合開始剤は、溶媒の種類、重合方法、重合時の温度の3つの観点から、何が適しているかを決めることができます。
(2)10時間半減期温度
溶液中でアゾ基の濃度が10時間で半分となる温度が10時間半減期温度です。この温度を参考に、重合温度に適する開始剤を選定します。
アゾ重合開始剤の使用環境がわかる!残存率計算ツールのご案内
アゾ重合開始剤を用いた研究をする際、是非お使いいただきたい計算ツールをご紹介します。
通常、残存率や反応条件(分解反応時間、分解反応温度)を特定するためには、文献を参照したり複雑な計算式を用いて計算したりする必要がありますが、それらをワンクリックで算出できるのが『アゾ重合開始剤 残存率計算ツール』です。
是非研究にお役立てください!
アゾ重合開始剤とその関連技術について学べるシリーズ
- 第1回 アゾ重合開始剤の特徴と選び方
- 第2回 AIBNに代わるアゾ開始剤!優れた特長や金属管理グレート品、研究に役立つ計算ツールもご紹介
- 第3回 ラジカル重合の弱点を克服!精密重合とポリマーの高機能化を叶えるRAFT重合
- 第4回 ポリマーを進化させる!機能性モノマーの力