人事担当者は面接に進む人、進まない人をどう判断しているのか?
転職活動中の方から、「書類選考で落ちてしまう…。」という相談はとても多いです。せっかく時間をかけて履歴書、職務経歴書を作成したのに、何社も書類でお見送りが続くと落ち込んでしまいますよね。お見送りメールにも、「弊社の求める経験と合致しない」、「ご経験を生かして頂けそうなポジションがない」など、具体的な理由は書かれていないことがほとんどです。そのため、なぜ駄目だったのかはっきりと分からないまま転職活動を続けることになるので、モヤモヤしてしまう方も多いのではないでしょうか。では、人事担当者は面接に進む人、進まない人をどう判断しているのでしょうか?
職務経歴書に目を通すのは3分くらい!「会いたい」と思われる応募書類とは
人事担当者に聞いてみると、応募書類に目を通す時間はなんと3分程度という声が多かったです。人気企業であればあるほど応募者の数は多くなるため、1人の書類に十分な時間を費やすことは難しい状況です。最初に履歴書で学歴や所属企業などの基本情報を確認し、その後、職務経歴書にざっと目を通します。この時点で面接に進むかどうかの判断が行われていることが多いようです。人事担当者は複数のポジションの求人を担当し、通常業務をしながら、1日に多くの応募書類に目を通しています。そのポジションの要件を頭に浮かべながら、例えば「有機合成」や「高分子化学」など、求人のキーワードに合致するかを探しながら斜め読みします。この一読のときに「なぜこのポジションに応募してきたのだろう」と分からない場合は、選考に時間がかかるか、そのままお見送りになってしまうケースが多いです。短い時間の中で、「このポジションに合いそうだな」と思わせることができるかどうかが書類選考通過のポイントになります。
また、経歴や研究歴を事細かに記した長い履歴書も好まれない傾向にあります。なぜなら、情報量が多すぎると求人とマッチしているのか判断が出来なくなるからです。研究職の場合、これまでのアカデミアでの研究歴、論文のサマリーなどを長文で記載してエントリーする方もいらっしゃいますが、多くても3枚~4枚程度には納めるのが好まれます。もちろん、その企業に関係する内容を厚めに書くのは良いですが、全く関係ないテーマだと逆効果です。「このポジションには合わない」「企業研究をしていない」という印象を与えてしまうので、これまでの研究歴を網羅的に書かなくても大丈夫です。
転職活動において、職務経歴書を最初に目にするのは人事担当者であることが多く、必ずしもその技術や研究の専門家ではありません。つまり、職務経歴書を見て判断するのは、自身の研究テーマの専門外の人だということを認識しておく必要があります。そうした状況の中で、特に大事になってくるのは自分と応募企業の重なる部分をきちんと伝えることです。
「何を伝えるべきか」は求人票から逆算するのがコツ
それでは、自分と応募企業の重なる部分を伝えるにはどうすれば良いのでしょうか?コツは、求人票から逆算して職務経歴書を作成することです。まずは応募要件を見て、自分の経験やスキルに合致するところを書きだします。例えば、「高分子や有機合成の基礎知識がある方」が必須要件で最初に記載があった場合、学生時代から含めて、該当する経験を目立つように書きましょう。冒頭の職務要約の部分にも「学生時代から高分子や有機合成の研究に従事している」などと記載するのも有効です。研究分野や職歴の分野が跨ることは多いですが、全てを漏れなく書くと重要な部分が見落とされてしまう恐れがあります。
求人票は、その企業が候補者に何を求めているかが分かる重要な情報です。その企業の意図をきちんと掴んでおくことは選考に大きく影響します。職務経歴書は「自分が伝えたいこと」を書くのではなく、「応募企業が知りたいこと」を書くことが大切です。求人票は業務内容や条件など全体に目を通した後、「応募要件」「歓迎要件」が特に注目すべき項目となります。企業が求めていることと、自分の職務経歴書の内容が一致していると判断させるのが大事です。
職務経歴書はどの企業も一緒でいい!?
面倒かもしれませんが、職務経歴書は企業ごとに作成する方がベターです。全てを変える必要はありません。基本となる書類を一つ作成し、応募企業によってカスタマイズするのが良いでしょう。せめて志望度が高い企業だけでもカスタマイズして作成してみましょう。なぜなら、同じ業界・職種とは言え、企業の方針や状況によって求める人材は全く違うからです。
例えば、以下のような2つの企業の求人要件をみてみましょう。
どちらも化学メーカーの有機化学分野のキャリア採用において、実際に使用された求人票になります。
<A社の求人票>
◆必須要件:
・大学または大学院卒以上
・研究開発を遂行する上でのアイデアを自ら形にし、未知の研究分野を開拓した経験
◆歓迎要件:
・有機化学合成やポリマー合成の実績
・コミュニケーション能力、プレゼンテーション能力
<B社の求人票>
◆必須要件
・大卒以上(化学分野)で、下記、いずれかの知識、ご経験をお持ちの方
・重合技術、有機合成
・合成プロセス開発経験
・高分子化学の知識
・有機合成の知識
A社のポイントはまず、必須要件が有機合成等のスキルではなく、「研究開発を遂行する上でのアイデアを自ら形にし、未知の研究分野の開拓をすることができる方」という具体的な経験である点です。おそらく、既存事業領域に加えて、化学分野での新領域の開拓や、テーマ創出なども期待されているのではないかと思います。この要件を必須とする意図からは、「有機化学合成やポリマー合成の実績」という専門知識やルーティン的に合成をする経験よりも、企画力や推進力をもった人材を採用したいという想いを読み取ることができます。そして採用担当者も後者の経験の有無は必ず見ているので、経歴書には企画力や推進力に関連する経験を意識的に盛り込む必要があります。自分の経験を思い出し、新テーマの創出や探索に携わった経験がないか、他領域と共同で進めたプロジェクトがないかなど、時間をかけて何を最もアピールするべきか考えましょう。
B社については、「重合技術、有機合成」、「合成プロセス開発経験」、「高分子化学の知識」、「有機合成の知識」という具体的なスキルと経験が求められています。このように明確な要件の場合は、これまでにそれぞれの経験を何年程度実施していたか、まとめて記載すると分かりやすいです。「経験業務」という項目をつくり、重合技術〇年、有機合成〇年というようにまとめておくと、人事担当者の目にも止まりやすくなります。
2社の例からわかるのは、同じ化学企業の有機化学分野の研究職のポジションでも、求める人材は大きく異なるということです。少しでも書類選考の通過率を高めたいのであれば、求人票の要件を丁寧に理解した上で、その企業のためのご自身の経歴書を作成することをお勧めします。
以上、書類選考を通過するためのポイントについてでした。書類選考がなかなか通らないとお悩みの方や、これから転職活動を始める方の参考になれば幸いです
*本記事はLHH転職エージェントによる寄稿記事です。これまでの寄稿記事はこちら
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