さてことしもいよいよ、ノーベル賞シーズンが到来します!化学賞は日本時間 10月4日(水) 18時45分に発表です。
昨年のノーベル化学賞は、「クリックケミストリーと生体直交化学」という非古典的分野を対象に、Barry Sharpless、Morten Meldal、Carolyn Bertozziの3名が受賞しました。
大方の予想に反して2年連続の有機合成化学からでしたが、こちらも注目されていた分野でしたので、納得の受賞と言えるでしょう。ただ、予想を当てるのは難しい・・・!
しかし懲りずに、今年もやりますケムステノーベル賞予想企画!3年前よりSNSハッシュタグでの応募形式を採用していますので、お気軽にご参加いただけます。
「この化学者に違いない!全くわかんないけどこの化学者っぽい!」・・・とする各自の予想を、
というハッシュタグをつけて、SNS(Twitter・Facebook)でつぶやいて頂きます!後ほどハッシュタグを足がかりに的中者を追跡し、当選10名にAmazonギフト券10,000円をプレゼントします。
毎年恒例、
『SNS予想で盛り上がれ!2023年ノーベル化学賞は誰の手に!?』
参加の仕方
下記の受賞予想と2023年の候補者リストを参考にしながら、お持ちのSNSアカウント(Twitter・Facebook)またはケムステSlackで、
というハッシュタグを付け、受賞が予想される化学者名と受賞理由をつぶやいて下さい。必ず
化学賞はなかなかズバッと当てられないので、今年、1アカウントあたりの予想投票数は上限無しとします。つまり気軽につぶやけばつぶやくほどチャンスは増えます!! アカウント種の個人・団体は問いません。
見事予想的中に至ったつぶやきは、可能な限りケムステスタッフが回収して抽選に附し、当選者にAmazonギフト券10,000円をプレゼントします!今年は当選者 最大10名です!
リストには全ての候補者が網羅されているわけではありませんので、自分が予想する化学者がリストになくても、自由につぶやいていただいてOKです。良さそうな候補者は、こちらでも適宜リストに追記させていただきます。
発表直前(10月4日(水) 18時44分59秒)までに行われたつぶやきを有効投票とします。滑り込みでもOKですので、ぜひぜひご参加ください!
※受賞理由・ハッシュタグが書かれていないと有効投票には成りませんので、必ず記載くださいね!
以下、いつものようにいくつかの資料・ケムステ独自の考察と予想を、投票の参考資料として記載します。
受賞分野の周期表 (1970-2022)
例年掲載している受賞分野一覧表、昨年の業績は有機化学として、上記のとおりアップデートしています。いつも通り、傾向として見て取れるのは下記の通り。
1. 圧倒的に有機化学、生化学分野からの受賞が多い
2. 有機化学は4〜5年に一度のペースで受賞している
3. 生化学は近年だと10年で4~5回の受賞ペース、うち半数は構造生物学領域
4. 分析化学や理論化学からは授賞間隔が長い
5. 物理化学、無機化学は少ない
6. ここ数年は、単一分野に当てはめにくい研究業績が増えている
生物学のエッセンスを含みはしますが、2年連続で有機化学から授与されたため、今年はさすがに同分野から受賞することは無いと思われます。では他分野ならばどれなのかと言われると、これといって決め手になる法則はないように思います。歴史上、昔の成果から順番に受賞するというわけでももはやなく、予想は難しくなる一方です。
筆者個人は6.のトレンドを重視して、予想すべきなのではないかと考えています。タテワリの専門性ではスケールの大きな社会課題の解決には繋がりづらい昨今です。融合分野・複合分野・学際分野を最初から考えておくのが良いのではないでしょうか。
さらには科学の世界においても、特に欧米圏ではDiversity, Equity, Inclusion(DEI)の思想が一層重視されてきています。近年の受賞者にも女性科学者が多く見られたり、欧米圏外の人材が取り沙汰されることが増えているのも、この潮流に無縁ではないでしょう。つまりは女性やLGBT、人種マイノリティに属する科学者が台頭しやすい分野が仮にあるとすれば、そこに授与されやすくなっている時代なのでは?という見方もできてよく、実際に合理性がありそうです。
登竜門賞の受賞者
ノーベル賞の対象となる学者には、その前に有名国際賞を授与されることがよくあります。受賞者をチェックしておけば、可能性の高い化学者が絞れるかも!? 化学賞と親和性の高い賞に加え、存命日本人化学者(受賞年)の一覧も記しておきます。
化学系
- ウルフ賞:藤田誠(2018)、菅裕明(2023)
- ロジャー・アダムス賞:山本尚(2017)
- プリーストリーメダル
- ベンジャミン・フランクリンメダル:澤本光男(2017)
- ロバート・ウェルチ化学賞
総合系
生命・医学系
他メディアの予想:2023年版
① クラリベイト・アナリティクス社 「引用栄誉賞」
毎年発表されている賞ですが「各分野の論文引用数が上位0.1%である」という客観的データをもとに、現在注目を集める分野を育てた化学者を選び出しています。受賞予想企画の一面もあるとされています。過去の受賞者からもノーベル賞受賞者が多く出ていますので、参照価値は高いでしょう。ただ個人的には「受賞後すぐさまノーベル賞」という性質でもない印象を持っています。少し前に受賞した化学者をチェックするのが的中の近道かも?
今年の化学賞は以下の3分野が選ばれています。
- 合成生物学の分野の先駆けとなった合成遺伝子回路の先駆的研究
James J. Collins (MIT・Harvard)、Michael Elowitz(Caltech・HHMI)、Stanislas Leibler(Rockefeller、Institute for Advanced Study)
- 生物学研究に革命をもたらした次世代DNAシーケンシング手法の共同発明
Shankar Balasubramanian(Cambridge)、David Klenerman(Cambridge)
- 革新的な薬剤および遺伝子のターゲティングおよびデリバリー手法の開発への貢献
片岡 一則(iCONM)、Vladimir P. Torchilin(Northeastern)、Karen L. Wooley(Texas A&M)
②各種メディアの論評記事(随時追記予定)
今回もリンクだけをご紹介します。各自でお読み頂き、予想にお役立て下さい(随時更新)。
- ノーベル賞2023(NHK)
- 【ノーベル賞発表迫る】日本人の有力候補者と研究内容をまるっと紹介(ニュースイッチ)
- 注目「ノーベル賞」日本人有力候補 物理学賞の大穴に「2回目&最高齢」の江崎玲於奈氏 2年ぶり栄誉へ高まる期待
- ノーベル賞は誰に、受賞者を直前予想(日経新聞)
- 2023年ノーベル賞 10月2日から発表 注目される日本の研究者は(NHK)
③ケムステ版ノーベル化学賞候補者リスト:2023年版
いつもの通り、各媒体の情報を総合した上で、分野別にリストアップしています。今年も別ページにまとめました。→ こちら
全ての候補者が網羅されているわけではありませんので、良さそうな候補者は随時リストに追記させていただきます。
ノーベル賞委員会の審査員リストから洞察する
ケムステでは7年前から、「受賞発表を担当する委員会メンバーの専門分野」が的を絞るための情報として有効と考え、予想に活かしています。
これまでの発表担当者と専門分野、受賞成果の対応関係は下記の通り。きわめて良い一致を見せています。
- 2015:Claes Gustafsson(生化学・遺伝子工学)→「DNA修復機構」
- 2016:Olof Ramström (有機化学・超分子化学) →「分子マシンの設計と合成」
- 2017:Peter Brzezinski(生化学・生物物理)→「クライオ電子顕微鏡」
- 2018:Sara Snogerup Linse(生化学・タンパク質科学)→「進化分子工学研究への貢献」
- 2019:Olof Ramström(有機化学・超分子化学)→「リチウムイオン電池」
- 2020:Claes Gustafsson、Pernilla Wittung-Stafshede(生化学)→「ゲノム編集」
- 2021:Peter Somfai(有機化学・有機合成化学)→「不斉有機触媒」
- 2022:xxx(xxx)→「クリックケミストリーと生体直交化学」
昨年の予想では、以下のように述べました。
そういうわけで、理論化学も捨てきれませんが、今年の説明者はHeiner Linkeと予想します。こうなるとナノ物理分野が来るでしょう。
実際の説明者(Expert)はなんと、Olof Ramströmでした。今回3回めです。このひとかなり幅広くうまく説明できる化学者みたいです。確かにケミカルバイオロジーに関連するクリックケミストリーを紹介するならこの人な気がしますが…完全に外しました。
…気を取り直して今年も以下のルールに則り、受賞発表担当者を予想します。
- 議長・主事メンバーの分野からは選ばれることがない(2020年はサポートメンバーが説明者となり選ばれました)
- 残りのメンバーの分野に近いものがノーベル賞として選ばれる
さて、今年の化学賞審査委員会のメンバーは・・・・
Xiaodong Zou:Professor of Inorganic and Structural Chemistry
Peter Somfai 2021年「不斉有機触媒」Professor of Organic Chemistry
Peter Brzezinski:2017年 (主事) 「クライオ電子顕微鏡」Professor of Biochemistry
Olof Ramström:2016年 「分子マシンの設計と合成」「リチウムイオン電池」「」Professor in Chemistry
Heiner Linke:なし Professor of Nanophysics
Johan Åqvist :(議長) Professor of Theoretical Chemistry
の6名です。Claes Gustafsson 2015年「DNA修復機構」2020年「ゲノム編集」Professor of Medical Biochemistryが今年から抜けて、サポートメンバーだった、Xiaodong Zouがメンバーに入りました。無機構造化学が専門分野です。MicroEDなどの構造解析にも長けているようです。Johan Åqvistは長年いますが、まだ1回も説明してないまま議長になってしまい3年目です。Heiner Linkeはサポート役からのメンバー入り3年目です。そうなると、今年は、ナノ物理分野?と予想できます(昨年もその予想でした。外しましたが)。
3年前から追加されたCo-opted membersというコミッティーメンバーのサポート役も要注意です。
Pernilla Wittung-Stafshede:「ゲノム編集」Professor of Chemical Biology
Andrei Chabes:Professor of Medical Biochemistry
今回、新しく、医薬生物化学分野からAndrei Chabesが加わりました。詳細はよくわかりませんが、医薬関連の化学ならば説明できるかもしれません。
というわけで、近い将来、Xiaodong Zouが説明するならば共同研究者に入っている藤田誠教授やオマー・ヤギー教授ら北川進教授の可能性は高いですし、Pernilla Wittung-StafshedeやAndrei Chabesが説明するならば、生化学的な受賞、もしくは医薬品関連で、PROTACや、ひとまず落ち着いた、mRNAワクチンの開発:Katalin Karikó (カタリン・カリコ)なども可能性がありそうです。
ケムステ版予想:2023年ノーベル化学賞はこれだ!?
そういうわけで、今年の説明者は昨年のリベンジでHeiner Linkeと予想します。こうなるとナノ物理分野が来るでしょう。
受賞者の特定はいつもどおり難しいですね。物理学、物理化学的に貢献しているナノサイエンス。なんとなく無機材料っぽい感じもしなくもないです。
予想も同じで、過去に引用栄養賞を受賞した
ナノ結晶の合成と広範な応用:Moungi G. Bawendi (モウンジ・バウェンディ)、Christopher B. Murray (クリストファー・ミュレイ)、Taeghwan Hyeon(テファン・ヒョン)
を予想します。Xiaodong Zouが出てくる可能性も考えて、構造解析分野でなく、その対象となる無機材料っぽいものと予想するならば、あえて日本人で
超伝導体材料の開発:Hideo Hosono (細野 秀雄)、Yoshinori Tokura(十倉 好紀)
も予想に加えておきます。
【10月3日8;40追記】mRNAワクチンの開発:Katalin Karikó (カタリン・カリコは医学生理学賞でしたね….しっかり化学なんですがそんなときもあります。おめでとうございます!ここにきて、鉄板ですが、次世代太陽電池の開発の可能性が急に高まってきました。Tsutomu Miyasaka (宮坂 力), Nam-Gyu Park(ナム=ギュ・パク), Henry J. Snaith(ヘンリー・スネイス)もしくは、 Michael Gratzel(マイケル・グレッツェル)も加えて3名というのも可能性がある気がします。
【10月4日17:22追記】化学賞受賞者のリーク記事がでたというお話を聞きました。代表が確認したのは15:30ですので、もしリークが正しかったばあいそれ以降の投稿による正解は無効といたします。別の方だったらOKです。
さて皆さんはどんな予想をしますでしょうか?
タグとともに、今回もTwitter、Facebook、ケムステSlackなどで盛り上がっていただければ幸いです。
それでは日本時間 10月4日18時45分を楽しみに待ちましょう!