bergです。この度は2023年8月5日(土)に横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校・附属中学校(神奈川県 横浜市 鶴見区)にて開催された「理研よこはまサイエンスカフェ」に参加してきました。この記事では会の模様を簡単に振り返ってみたいと思います。
演題と講師の先生は以下の通りです。
・開催時間:14:00 – 15:30
・講師:本間 光貴(ほんま てるき) チームリーダー
(理化学研究所 生命機能科学研究センター 制御分子設計研究チーム)
・演題:「『くすり』を創る科学 AIとシミュレーションによる未来」
・対象:中学生以上
・参加費:無料
夏休み期間ということもあり、親子連れの方や学生さんをはじめ多くの方々で満席でした。
講義ではまず、言わずと知れたギブズエネルギーとエンタルピーやエントロピーとの関係式を皮切りに、疾病の原因となる標的タンパク質と阻害剤との結合の強さへ展開されされていました。エントロピー支配の例として、タンパク質への結合部位を複数有する生理活性物質について、それらが常に所望の方向を向くように配座を固定した誘導体では薬理活性が劇的に向上したケースを挙げられており、たいへん印象的でした。
また、人類が既に単離したとされるものだけでも108~1010個、潜在的には1060種類にものぼるとされる化合物群のなかから目的の薬効を持ち、副作用や毒性が無視できるほど小さく、吸収から代謝・排泄に至る体内動態にも問題のない物質を見つけ出す必要性、先行研究や既存の特許への抵触の回避の困難さについても述べられており、創薬研究の難しさを改めて実感できました。
こうした課題を解決する上での切り札となりうる計算科学についても、従来のMM法やDFT計算(関連記事:ヒュッケル法(前編)~手計算で分子軌道を求めてみた~)のそれぞれの欠点を超克したFMO法について解説いただき、昨今話題のChem TSを用いたシード化合物の絞り込みなど、最先端のお話を伺うことができました。
今回のサイエンスカフェではご講演以外にもこんにちに至る理研の歴史など概要説明のほか、数々のグッズまでいただくことができました。大勢の一般市民を対象に無料で飲み物と茶菓子まで提供してこのようなサイエンスカフェを開催されていたことからも、理研が広報に力を入れていることを窺い知れました。
一般向けということもあり非常に敷居は低くなっておりますので、みなさんもご興味があればぜひご参加されてみてはいかがでしょうか?
最後となりましたが、ご講演くださった本間先生、シンポジウムをセッティングしてくださったすべての方々に心よりお礼申し上げます。