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一般的な話題

MEDCHEM NEWS 32-3号「シン・メディシナルケミストリー」

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日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープンアクセスとなりました 32-3号 (2022年8月発行)の紹介です。

各項目のタイトルおよび画像から該当記事へ飛べます (新しいタブで開きます) ので、隅々までご覧ください。

■巻頭言

イノベーション創出力の強化をシン・メディシナルケミストリーに期待
岡田 安史
日本製薬工業協会 会長


今回の巻頭言は日本製薬工業協会 (製薬協) の岡田安史会長にご執筆頂きました。バブル期までと現在の日本の状況、創薬研究を取り巻く環境を踏まえて、我々創薬関係者が進むべき方向について示唆を与えて下さっています。ぜひとも「シン・メディシナルケミストリー」を実現させなくてはなりません。

■創薬最前線

官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)で構築する特発性肺線維症に対する創薬標的探索プラットフォームについて
中村恵宣*1,北村英也*2,小倉髙志*2,夏目やよい*1水口賢司*1,*3
*1 医薬基盤・健康・栄養研究所
*2 神奈川県立循環器呼吸器病センター
*3 大阪大学蛋白質研究所

本論文は、病態が複雑で診断・治療の難しい特発性肺線維症を題材に、実際の患者さんの情報をもとにした、使いやすい疾患データベース構築および創薬標的探索に繋がる AI 開発の紹介です。メディシナルケミストの「自分のつくった化合物が患者さんにしっかりと効いてほしい」という願いに応える取り組みです。ぜひご一読ください。

■WINDOW

アステックス社におけるフラグメント創薬研究
漆島 達哉, 長瀬 剛, 周藤 俊樹
大塚製薬株式会社

大塚製薬 (株) の子会社で、英国のバイオベンチャーとして創業したアステックス社におけるフラグメント創薬 (FBDD)について解説しています。近年立て続けに新薬が上市され、大塚製薬 (株) やビックファーマとの協業体制についても紹介されており、大変貴重な記事です。

■ESSAY 特集:液-液相分離を標的とする疾患制御

特集にあたって
白木 賢太郎
筑波大学

■ESSAY

タンパク質溶液の理解と凝集体の形成の制御
白木 賢太郎
筑波大学

本号では「液-液相分離を標的とする疾患制御」と題して近年急速に進展している相分離研究の特集を組みました。そこで相分離生物学の第一人者の白木賢太郎先生に特集緒言と相分離を応用したタンパク質安定化のための最新技術に関する論文を寄稿していただきました。相分離はこれから創薬の一部になると言われており、創薬研究者にとって必読の特集です。

■ESSAY

天然変性タンパク質を標的とした創薬 ~その可能性と課題~
廣明 秀一
東海国立大学機構名古屋大学

天然変性タンパク質 (IDR) は、生理的条件下で決まった三次元構造をとらないタンパク質です。本稿では、IDR を創薬標的とした化合物取得戦略と、溶液 NMR を活用したその加速戦略が紹介されています。
IDR は疾患との関連性も報告されており、今後の進展が期待されます。

■ESSAY

タンパク質活性を隔離・放出する人工相分離ドロップレット
築地 真也, 吉川 優
名古屋工業大学

細胞内での相分離現象を利用して小分子や光で標的タンパク質を隔離 (不活性化) もしくは放出 (活性化) する新しい技術に関する解説記事です。基礎研究のみでなく創薬や細胞医療にも有用なツールとして今後の応用が期待されます。ぜひ、ご一読下さい。

■ESSAY

相分離制御破綻と創薬展望
森 英一朗*1吉澤 拓也*2齋尾 智英*3
*1奈良県立医科大学
*2立命館大学
*3徳島大学

本稿では相分離に関する最近の研究進展が紹介されています。相分離の制御の破綻と神経変性疾患等の病態発症の関連性が解明されつつあり、今後の創薬展開への期待が述べられています。ぜひご一読ください。

■ESSAY

液-液相分離を誘起する高分子細胞内送達ペプチド
二木 史朗, 広瀬 久昭
京都大学

抗体・バイオロジクス等、高分子医薬の細胞内送達技術は、非常にチャレンジングな領域であり、注目を集めています。本稿では、L17E ペプチドを用い、液–液相分離を起点とする高分子送達について記載されています。ぜひご一読ください。

■DISCOVERY

新規非ステロイド型ミネラロコルチコイド受容体拮抗薬 apararenone (MT-3995) の創製
飯嶋 徹*1,2, 赤塚 英則*3,4,武富 啓*1
*1 田辺三菱製薬株式会社
*2 東京大学
*3 三菱ケミカルホールディングスグループ
*4 サンケミカル株式会社

本論文は、既存のステロイド型ミネラロコルチコイド受容体拮抗薬の課題を解決する低分子創薬の紹介です。自分たちの仮説に基づいて化合物をデザインし、受容体選択性が高く高活性な MT-3995 を見出しています。コンパクトで低分子量化合物に仕上げているところも秀逸ですので、ぜひご一読ください。

■COFFEE BREAK

自作の竹笛でバッハを奏でる
和田 猛
東京理科大学

核酸化学の第一人者である東京理科大学薬学部 和田先生は、自作で竹笛を作成しバッハを演奏するという高尚な趣味をお持ちです。YouTube チャンネルも開設されておりますので、皆さん研究の気分転換に覗いてみてください。新しい発想が生まれるかもしれません。

関連記事

「薬として働く人工核酸を有機化学的に創製する」和田 猛教授

和田先生のケムステVシンポご講演動画

■REPORT

LINK-Jによる、ライフサイエンス領域でのイノベーション創出とエコシステム構築の取り組み
曽山 明彦
一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン

一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワークジャパン (LINK-J) の狙いや活動報告が紹介されています。設立5年で会員数は 570 を超え、年間 500 回以上!のイベント・プログラムを開催しているそうです。オープンイノベーション・共創が益々重要になっている昨今、ぜひ読んで頂きたい内容です。

関連書籍

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MEDCHEM NEWS 紹介記事バックナンバー

MEDCHEM NEWS 32-2号 「儲からないが必要な薬の話」
MEDCHEM NEWS 32-1号「機械学習とロボティックス特集」
MEDCHEM NEWS 31-4号「RNA制御モダリティ」
MEDCHEM NEWS 31-3号「ケムステ代表寄稿記事」
MEDCHEM NEWS 31-2号「2020年度医薬化学部会賞」
MEDCHEM NEWS 31-1号「低分子創薬」
MEDCHEM NEWS 30-4号「ペプチド化学」
MEDCHEM NEWS 30-3号「メドケムシンポ優秀賞」

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DAICHAN

投稿者の記事一覧

創薬化学者と薬局薬剤師の二足の草鞋を履きこなす、四年制薬学科の生き残り。
薬を「創る」と「使う」の双方からサイエンスに向き合っています。
しかし趣味は魏志倭人伝の解釈と北方民族の古代史という、あからさまな文系人間。
どこへ向かうかはfurther research is needed.

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