記念すべき海外編20話ですが国内プレゼン回想録です。ネタが尽きて瀕死です。実験ネタを誰かください。
ポンコツシリーズ
続きだよ9話・10話・11話・12話・13話・14話・15話
第20話:博士,日本を堪能する② プレゼン編
ポンコツミーハー,T大に参上する。
某月,筆者は日本最高峰の大学の一つであるT大に進入した。これまでT大をうろついたことがない筆者にとってT大は格好の観光スポットだった。1つ残念だったのは,ミーハーらしく出たり入ったりしようと思った歴史ある赤い門が閉まっていたことである。とりあえず閉まっている光景を写真に収めておいた(Fig. 1)。そして思ったより広くて普通に迷子になった後,同じく迷子の先生方を発見して2日間の勉強会会場である某研究棟に入場した(トラブルで扉が開かなかったため,全員迷子状態だったようだ)。
ポンコツ勉強家,アカデミア勉強会に参加する。
筆者は普段,学会の講演やセミナーで気が付けばほぼ寝ている非常にfrivolousな人間だが,勉強会中に眠気は一切なく集中して全ての講演を聞くことができた。近い世代の先生方があれこれ新しいことに挑戦していることは刺激的で面白く,これを聞くだけでも日本に帰ってきた意味があったと実感した。そして大阪で吉本新喜劇が始まる時間帯に筆者の発表時間がやってきた。お腹が空き始めて疲れる時間帯のため,真面目なやつは学会ですることにして化学漫談を行った。時間内で抑えた普通のスライドも用意していたが,現地の雰囲気的に冒険が許されそうな感じだったため,余談で時間オーバーが決定的なスライドに変更した。
ポンコツプレゼンター,プレゼンの極意を思ひ出す。
普段の姿を知っている人達は信じられないと思うのだが,壇上では思いの外それなりに発表するタイプである(と思う)。一方,筆者のプレゼン技術は産まれ持って身についたものではない。恩師に徹底的にスライド作りを仕込まれた→初めての口頭発表で規模の大きさにアガって個人的には失敗した→オープンキャンパス・シンポジウム等で一般向けプレゼンを度々こなした→学会中にスーツのお尻部分が破けて発表時に不思議な踊りをしながらとある口頭発表賞を受賞したなど,様々な修羅場で培われたものである。
「知らない人へ伝えるための手段だから常に聴衆へ分かりやすくすることを考えてスライドを作る」「人ががっかりしない最低限の美しさ」等のプレゼンの基本を守っているため,第一印象で”うわぁ…きったねぇ…見る気失せるなぁ…”という印象を与えにくい(と思う)。将来プレゼンがジョブズ化する読者の学生も,きたるべき時に備えて失敗経験も含めた様々な場数を踏むことを推奨する。
ポンコツ漫談家,非公式プレゼンで遊ぶ。
今回の発表では「他分野から学ぶ研究の方向性と現場の共感性」をコンセプトに,発行数累計600万部以上を誇る名作レーシング漫画:Capetaを引用しながらこれまでやってきた研究活動を振り返る構成で展開した。Capetaは筆者世代にとってタイムリーな連載時期だったことから認知度が高いと確信していたが,Capetaを知る先生が1/12という大事故に遭って見事ツカミに失敗した。例える場合はもう少しcatchyなものにしなければ事故率が向上して共感性が低下することを勉強した。
一応「なんかちょっと踊る大捜査線ぽかった」とご講評をいただき,筆者が目指す現場感溢れる発表と研究スタイルを伝播できていたようだ。オンライン発表では中途半端なスベり具合だったが,今回は全力でスベりきれたことに筆者は満足した。満足したので今度は真面目な研究プレゼンにしようと思った(いや,でもやっぱり無理かも)。下記に懇親会の写真を添付する。*ちなみに学生の皆様はボッスの許可なく冒険的なプレゼンを学会ではもちろんのこと研究室間の勉強会やセミナーで行わないように。個人的な責任を背負える非公式の場だから許される行為である。
ポンコツ西日本民,K大に参上する。
勉強会中「Capetaはよくわからんけど,学生に聞かせたい内容だなー。帰国まで時間ありそうなら来ますか?」とM氏からセミナーのお誘いがあったので,筆者は「行きますよ!〇〇日は暇なんで!」と快諾した。数日後,筆者は約6?年ぶりにK州地方に参上して懐かしさを覚えた後,読み方がよく分からない駅から会場入りした(Fig. 3)。ここでの発表は,勉強会の反省からCapetaの引用を泣く泣く諦めて本エッセイをイメージできる「群青」とインスパイア元である「ブルーピリオド」を引用した構成に変更した。筆者が作ったスライドはミルクボーイの漫才を参考にテンプレート化した構成であるため,研究結果以外はマイナーチェンジが可能だった。そして余談にポンコツ氏推奨の研究姿勢を学べる教育漫画として左利きのエレンとCapetaを推しておいた。
某有名菓子屋の超ヒット商品であるアル◯○ートのCMや春の甲子園の入場曲になった群青を知らない学生はほぼおらず,「この人…研究のついでに何喋ってんだろう…」と学生がちょっと面を喰らいながらニヤニヤしている雰囲気を筆者は感じ取れた。対面発表は会場の雰囲気がわかるため,オンライン発表よりも遥かにやりやすいことを改めて実感した。一応,メッセージ性を込めた漫談型研究プレゼンとして作成したので,今後,学生が筆者のプレゼンから研究や生活に何か役に立つことを得たのであれば幸いだ。セミナーに許可をしてくださった先生方と聞いてくれた学生,他ラボなのにわざわざ聞きにきてくれた方や筆者レベルに内容を覚えている超コアな読者に感謝したい。(M氏,ゴチになりました)
ポンコツおのぼりさん, W大にも参上する。
学生の感触が良かったことからもう少しn(試行回数)を増やしておきたいと思い,W大でも喋ってみることにした(Fig. 4)。筆者はコンプライアンス観120%アウトの某選手権出場経験者が集うような恐ろしい都内有名大学としてW大を認知していた。15年以上前から時代がストップしている筆者は,アメリカへのフライト前日にここで息絶えるのか…と勝手に恐怖していたが,全くの杞憂であった。W大のみなさんは非常に優しく,前日の呼びかけにもかかわらず学生がセミナーに参加してくれた。
前回のセミナーからさらに遊びを追加した結果,会場のニヤニヤした雰囲気を感じ取れて筆者は非常に満足した。急遽セミナーを許可してくださったラボのボッスおよび交渉してくれた化学好きのサッカーボーイに感謝したい。その後,某ラボのボッスに周辺の小料理屋さんや生涯2or3回目の家系ラーメンを奢っていただいた。ご馳走様でした。
ポンコツ博士,大学行脚を総括する。
今回,筆者は全国各地でプレゼン行脚をこなしたが,自分が携わったことを絶賛アピールするためではなく,様々な方が積み上げた成果を聴衆へ共感させることでお世話になったことへの謝辞になることを目指したものである。学会発表を控える学生も自分以外のことを考えてスライドを作れば,独りよがりで分かりにくいスライドになりにくくなるだろう。そして,どうすれば明快な発表になるかを自然に考え始めると思うのでぜひ試してほしい。元から分かりやすくしようとしていない発表を見た瞬間,どんなに良い成果でも筆者はガッカリしてしまう(自分に理解できる頭がないことでもあるので偉そうに言えないが)。
Capetaが微妙に不完全燃焼だったため,名脇役である社長(初めてのスポンサー)の名言と画像リンクを載せておく。
社長「オマエは勝負に勝った。勝った者が何よりまずせなあかんことは」「大よろこびすることや。おまえのためやない。あいつらのためにや。」「そしてワシのためにもな!戦いは一人で勝てるもんやない。周りに助けてくれる人間がいるからや。そいつらにまた助けたいと思わせる…」
*このシーンは主人公(カペタ)が初出場のカートレースで初優勝した際のアドバイスである。その後,カペタが全日本F3年間チャンピオンになった回想でまた出てきた際には御涙頂戴不可避である(その後の祝勝会もアツい)。
日本でのプレゼントークに満足して2年目のアメリカ留学へ旅立った筆者は,一部の化学系読者がポンコツ氏はもう化学ネタを書かないのか?という一抹の不安を抱えている噂を聞いてしまった。これはマズイ…と思った筆者は何か実験回を書こうと思った。しかし,ネタがない。今の筆者はたけしを描いていた時のネタに困窮していたしまぶー先生の気持ちがよくわかる。
〜続く〜
関連リンク・おまけ
いらすとや :アイキャッチ画像の素材引用元。
化学の素材屋さん:アイキャッチ画像の素材引用元②。
筆者が仕込まれたプレゼン作成時に心掛けている基本(言われた内容に脚色あり…?)
① 余白の美学および行間の美学を徹底すべし。隙をなくして余裕は生まれず(*近い言葉を言われた気がする)。
② 慣れないうちは無駄な鉤括弧・色付け等は極力省いてシンプルにすべし。文字色は原則2-3色以内(青・赤・黒)で勝負する。シンプルイズザベスト。なんでもかんでも足したがる癖を我慢して削る努力を。シンプルイズザベスト。
③ 囲いを極力しない。スライドの調和が崩れてそこにしか目がいかなくなる。囲いは線ではなく四角図形(線なし)で。
④ 1つのスライドに1つの展開・内容を(目安1分)。どんなに優秀な人でも物事を1分で理解することは普通の人と同じように難しいので,説明したい内容を同時にごちゃごちゃさせない。シンプルイズザベスト。
⑤ 多くのアカデミア達は大体老眼or近視が入って目が悪いので,大きな文字+細い明朝を使わずゴシック系フォントを使え。小さくすることよりも常に大きくすることを考えろ。プレゼンにおいては化学構造も字も太くてデカけりゃデカい方がいい。
などである。まだまだあるが,文字におこすとかなり多いので参考になりそうなYoutubeリンクを貼っておく。
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