今回は、特にソフトウェア開発の文脈で登場する「プロジェクトディレクトリ」という用語について、触れていきます。
聞き慣れない用語かもしれませんが、何かとっつきにくい言葉を解釈した話ではありません。
たとえば、「機械学習・AIの学習モデルを研究テーマに組み込むときや、企業内のDX推進を行なう上で、登場してもおかしくない話」
であり、「ニュアンスだけでも抑えておくと、役に立つ可能性がある内容」のため、まとめたものです。
先に「ニュアンスを把握するための結論」をお伝えすると、特定の文脈で登場する「プロジェクトディレクトリ」とは、「検討用フォルダ」と置き換えるとわかりやすいです。
どういうことか。
段階を追ってまとめました。
プロジェクトとは?
「プロジェクトディレクトリ」の説明に入る前に、簡単に「プロジェクト」という用語について触れておきます。
「プロジェクト」という言葉であれば、大学や企業、そして身近なニュースで聞いたことのある方もいるでしょう。
この言葉は、目的遂行のための業務のまとまりを指す印象があります。
もう少し詳細に触れると、「日々の業務ではなく、特に期間や目標といったゴールが決まっている、より規模の大きい業務のまとまり」という認識でしょうか。
厳密には異なりますが、「より規模の大きい業務のまとまり」というと、たとえば国立開発研究法人JSTが手がける「CREST」や「さきがけ」といった共同研究が挙げられます。(※ 厳密には異なると表現したのは、「CREST」や「さきがけ」は、JSTの事業における「プログラム」と定義されているためです。)
ディレクトリとは?
念のため、「ディレクトリ」についても、認識をあわせます。
イラストで説明しますと、ずばり「ディレクトリ」はこちらです。
PCのデスクトップ画面で、「気軽に作成できるもの」です。WindowsやMacでは「フォルダ」という言葉を使ったりもします。
プロジェクトディレクトリとは何か?
では、本題です。
たとえばですが、次のような文脈で「プロジェクトディレクトリ」という表現を使います。
これはある日、機械学習モデルを研究テーマに取り入れるための検討を進めていたときに、遭遇したものです。どのように解釈したら良さそうでしょうか。
プロジェクトの複製先となるローカル ディレクトリを選択 (または作成) します。
「5. プロジェクトを複製する」https://learn.microsoft.com/ja-jp/azure/developer/javascript/how-to/with-visual-studio-code/install-run-debug-nodejs#clone-project(参照日:2023年5月16日)より
愚直なものですが、先に触れた「プロジェクト」と「ディレクトリ」のイメージと合体させたうえで、上記の文の意味を考えてみると、どうなるでしょうか。
「なにか、共同研究で扱ううえでの「文書のまとまり」のこと?」
「どこにアクセスするのが正解なの?共有ドライブにアクセス?ダウンロードしないといけないもの…?」
用語を知らない立場からしたら、上記のようなイメージを持たれる方もいるでしょう。
英単語の意味だけを知っていても、「単語のイメージや用法」を知らないと、ニュアンスがつかみにくい状況に似た話です。
「プロジェクトディレクトリ」という用語は、特にソフトウェア開発の文脈においては、広く使われる「プロジェクト」のニュアンスと、「ディレクトリ」の意味合いをただ単に加算しただけではないのです。
では、「プロジェクトの複製先となるローカル ディレクトリを選択 (または作成) します。」という文を、「検討用フォルダ」に置き換えたうえで意味を解釈すると、いかがでしょうか。
おそらく、「要は、自分のPC環境に、検討用フォルダの複製先となるフォルダを選択(または作成)してほしいってことでしょ?」のように、解釈できるかと存じます。
何か自身のPC環境で、実験結果を前処理しテーブルデータ化したものや、機械学習モデルを扱う際に「検討用のフォルダとして扱うための箱」が、「プロジェクトディレクトリ」のニュアンス、なのです。
より正確にお伝えすると、テーブルデータや機械学習モデルに限らず、「ソフトウェアを構成するための、ソースコード、設定ファイル、スクリプトを格納し、フォルダとして扱うための箱」が、プロジェクトディレクトリなのです。
さいごに
仮に個人で検討用フォルダを作り、機械学習モデルのデータや、モデルで使うライブラリ情報が記載されたファイルやテスト用データをフォルダにまとめても、「プロジェクトディレクトリ」と表現できるでしょう。
ですが、より実践的には「GitHub」などの開発用プラットフォーム上で管理したり、GitHub上で管理されたリモートリポジトリを「自分のPC環境にダウンロードして、プロジェクトディレクトリとして扱う」ユースケースが多いことでしょう。
AIベンダーのお客様から、「本プロジェクトでは、プロジェクトディレクトリをGitHubで管理します」とサラッと話題に上がるかもしれません。
ここはひとつ、「ざっくり言うと、検討用フォルダのことなんだな」と、気に留めておくとよいでしょう。
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