ポンコツシリーズ
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第19話:博士,日本を堪能する①
ポンコツ博士,一時帰国を画策する。
渡米してはや1年,筆者は日本への一時帰国を決めた。帰国理由は多々あったが,コロナの影響でオンラインで開催されていた勉強会が対面で開催されることがオフィシャルな理由であった。すなわち,筆者を直接見た先生方がほとんどいないため,アカデミア界隈で珍獣のような存在を認知してもらうには良いタイミングだった。また,コロナによる出入国規制が出国時に比べると非常に緩和されていたことや,2月末-3月ならアメリカ⇄日本間の支出を往復800ドルまで削減できるJAL便が存在したことも帰国心を掻き立てた(ぶっちゃけこれが一番デカい。こっちにくる時は片道25万円もかかったのに…)。
ポンコツネゴシエーター,有給をフル確保する。
ボッスにお伺いする際の言い訳には「コロナで家族やお世話になった方々に長らく会えていないんだ。アメリカで無事なことを伝えたいんだ。あとは別件でゴニョゴニョの理由があって…」という情に訴える作戦で交渉へ持ち込んだ。その結果,ボッスが「有給システムは私もよくわからないが,ちゃんとした用事もあるなら1ヶ月くらい帰りなよ。家族を大切にするのはFantasticなことだ。」という信じられない温情を与えてくれた。社交辞令的なご厚意も図々しく受け取る筆者は1ヶ月の休みのうち,3週間を日本への帰国に,残り1週間を時差ボケ回復とWBC観戦に充てることにした。大昔は鬼のように厳しかった噂のボッスも歳をとると角が採れるものだ。
ボッスが軽くOKを言うだけで,下っ端がガッツリ休みをもらえるシステムは大変素晴らしいものである。知り合いのアメリカ人も営業マンだが彼も自分都合で休みを取れるらしく,毎年2週間から1ヶ月半程度の日本旅行をしているようだ。もちろん,アメリカ全ての企業がそういうわけではないだろうが,その母数や比率は日本企業よりもはるかに多いだろう。個々の時間の正確さとそれに付随する集団的な生真面目さ,信頼性がウリの日本企業ではなかなか導入・定着しにくいシステムだろうが,それでも時代の流れ的にその辺りのサバサバ感が増えてくればいいなぁと思った。
ポンコツ帰国予定者,旅行日程を設定する
筆者は,一足先に日本へ帰ったカリフォルニアメンバーらに第一回〇〇会 in Tokyoを開催することを連絡し,「田舎者でもキラキラ名所として知っているザギンでオシャなパーリィがしてみたい!」という最高に田舎者感丸出しの願望を東京民に伝えて都会滞在時の暇つぶしを確保した。また,アメリカで飲んだくれることはあまりなかったので,知り合いとの飲んだくれデーを各地に設定した。
その後,勉強会を含めた日本滞在時のノルマをこなす日程を組んでいった結果,太平洋ベルトを往復するハード日程になった。「…え?3週間帰国するのに実家での日中滞在が荷物整理する日しかない…。甥っ子と姪っ子にお土産を渡しに行く時間も作れなかった。そして頻繁に東京に行くから交通費でお金がとんでくやん…?」という当初の予定と全く異なり,筆者のお財布や親族に優しくない日程になった。これまでの人生でろくに旅行をしたことがない筆者ではうまくスケジュール管理できず,ポンコツ感満載の強行日程を組むことしかできなかった(さらに後日色々な日を間違えていたことが判明した)。
ポンコツ出国者,メンタルの成長を実感する。
それでも予定を3週間で詰め込むことができた2月某日,筆者は帰国した。出国前ではアタフタなった空港の手続きやそこに至るまでの会話等はスムーズに進み,全くストレスなく出国できた(しかし,ナッツが重すぎて100ドルの追加料金を取られた。二度とナッツ類は海外旅行のお土産にしない)。筆者の不安とは裏腹にできないなりにもこれまでの経験から容易に対処することができた。こういった感覚は座学で得られないため,何事も現場で経験することは良い勉強なんだなとしみじみと感じた。
搭乗後の機内はあの頃と違って満席であり,筆者は12時間のフライト間全く寝そべれなかった影響で腰に深刻な物理ダメージを喰らった。しかし,停滞していた物事が動き始めていることを実感できた影響から筆者のメンタルは快調だった。日本に移動(観光)する人が増えて社会に流動性が起き始めたことは非常に良いことである。筆者が所属する研究所では日本人研究者がコロナ前後で激減したため,新しい人材がくるのか楽しみになった。
ポンコツ日本帰還民,右往左往する。
メンタルが充実していたことからそのまま順調に帰郷できると思ったが,日本に着いてからが本番だった。ハプニングを文章に起こすと冗長になったため,箇条書き形式で記載する(余談に遂行前の文章を残しておく)。
① SIM差し込み口破壊や日米間の仕様の違いによる種々のモバイルアプリのエラー。② クレジットカードのPINコード/Tap認証トラブルによって生じた外国人枠での切符購入。③ 屈強なアメリカンであるジョン氏に成田エクスプレスの切符購入時から電車待ちまでずっと話しかけられたことによる実践的雑談英会話。④ 成田→東京の移動であたふたした結果,地元までの飛行機予約やフェリー乗船が間に合わず格安夜行バス(約12 h)に乗るハメになって瀕死の腰にさらなる追い討ちをかける等に見舞われた。幸い,時差ぼけは全くなかった。
ポンコツ帰国者,物価とおにぎりに感動する
日本に帰国して驚いたことはやはり物価(特に食べ物)の安さとその価格に見合わないクオリティの高さである。ありとあらゆる物が安く感動した。筆者は特におにぎりで感動した。帰国してすぐにファ○マで鮭おにぎりとおかかを調達した際,あまりの美味しさに広瀬ア○スの愛読書の名言に近い「このおにぎりが鮭だからちくしょう!!」を本当につぶやいてしまった。アメリカのスーパーでおにぎりを買おうとすると1個で大体2ドルから3ドル(250円-390円)かかるので,筆者の感慨もひとしおだった。
その後も「凄いおにぎりだろ…?たった一ドルなんだぜ。それで…。ウソ見たいだろ?」と某漫画のパロディがしばらく頭で反芻しており,筆者は結局,一時帰国中のホテル滞在時,朝ごはんを全てコンビニおにぎりで済ましてしまった。
上述のジョン氏が「滞在中は美味しい寿司とラーメンを食べたいんだ。YouのSushi barのおすすめはあるかい?日本にはよく遊びに来るが,こんなに安く美味しいものを食べられる場所が沢山あるのは本当にクレイジーだよ!」と言っていた気持ちがよくわかった。みなさんご存知のKura Revolving Sushi Bar(in CA)のお寿司は1皿約3.5ドルのところ(精算時にTax+Tips 20%がのしかかる),日本だとわずか1皿1ドル以下or1ドルちょい(税込)なのだからそりゃ食べにくる。
科学的な要素をねじ込めそうにもなく日記的内容になってしまったが,帰国時にこなしたアカデミックぽい出来事を書くには少々余白が足りないため,次回に回させていただく。こんなこと書く暇あったら仕事しろ!と筆者が繁忙期になったため,月1連載からさらに遅れるかも。
〜続く〜
関連リンク・おまけ
いらすとや :アイキャッチ画像の素材引用元。
化学の素材屋さん:アイキャッチ画像の素材引用元②。
おまけボツ原稿
(筆者の執筆スタイルはとりあえず書き殴ってから減らしていくスタイルだ。最近は校正をサボっているため,誤字脱字・文法間違い+長い。真面目に校正すると1話・2話の読み心地になる。)
ポンコツ帰還民,成田で泣く。
筆者は成田空港に到着後,日本用に携帯SIMを入れ替えを試みた。しかし,SIM挿入の受け皿をバキッと折ってしまい,SIMカードを認識しないポンコツ携帯を生み出した。空港内で「あぁっ!!」という筆者の悲痛な叫びと「このタイミングで!?」とウキウキな気持ちが焦りに一転した。あれこれやった結果,シャープペンシルの先でSIMをグッと押せば奇跡的に認識して電波を受信できた。どうにか日本で生きていけるようになったが,ハード日程の中で携帯ショップの来店予約というスケジュールを組み込むと共に余計な出費がかさむことが決定的となり,少々絶望した。筆者は,次回の機種変更でデュアルSIMのケータイをチョイスすることに決めた。
ポンコツ電車民,支払いで泣く。
次に,筆者はモバイルSUICAの確認を行った。ここでもまたトラブルが発生しており,センターに預けた6566円が何故か利用できないことが判明した。アメリカ版のGoogle pay(wallet)とおサイフケータイの互換性が上手くいかなかったようだ。仕方ないので筆者は成田エクスプレスの券売機に並んだところ,手持ちの日本円が1170円で切符代をキャッシュで払えないことが判明した。日本のキャッシュカードやクレカ等は実家に預けた+機能を一時停止させていため,筆者は絶望した。アメリカのクレジットカードでも決済を試みたが,アメリカのクレカはPINコードがないことから券売機エラーが起きた。日本人なのに切符を買えない移動難民になって本当に詰みかけたが,外国人枠用のみどりの券売所窓口ならクレカ+サインで購入できることが分かり,どうにか切符を購入できた。しかし,結局のところ,切符を購入するだけで30分以上手こずってしまい,筆者は地元に戻る飛行機やフェリーに乗れなくなった。モバイルPAY化が進んでいるとはいえ,1万円くらいの現金を持っておいた方が良いことを経験した。言語が通じようが通じまいが,どこでもトラブルは実在することを勉強した。
ポンコツ日本人,実践的英会話を日本で行う。
ちなみに,みどりの券売所の前に並んでいた際,かなり屈強なアメリカンに「何故君はこっち側で並び始めたんだい?君は観光客じゃなく日本人のように見えるけどRamsの帽子をかぶっているからLA(ロサンゼルス)に住んでるのかい?」と英語で突然話しかけられた。1年経っても筆者の英語力は対して向上しておらず,唯一身についた「Yeah!!」と「Ya!」の使い分けだけで日常をやり過ごしている筆者からすると対応できるか不安だったが,案外コミュニケーションを取れた。
少し会話するとサンフランシスコ出身のジョンは6日間で新宿近辺の日本食巡りと観光をしにきたようだ。新宿のおすすめポイントを聞かれたが全く分からなかったのでむしろ教えてもらった。田舎者の筆者は「新宿はロスのダウンタウンみたいにゴミゴミ(too many people and busy)してない?」と聞くと「ロスみたいに治安が悪くないよ!日本語が喋られなくてもトラブルがないShinjukuは最高さ!」と言っていた。
その後筆者は,回転寿司が大好きという彼にスシローと魚べい(←行ったことないが)を教えて座席に着くために別れを告げた。東京に詳しいジョンと券売所から成田エクスプレスまでの移動と待ち時間中も会話できたことから,一年前より多少成長していることを実感した。
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