日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープンアクセスとなりました 32-1号 (2022年2月発行)の紹介です。
本号では、今もなおホットな機械学習・ロボティックス・AI 創薬の特集が組まれています!
著者の所属はすべて掲載当時のものとなっております。ご了承ください。
各項目のタイトルおよび画像から該当記事へ飛べます (新しいタブで開きます) ので、隅々までご覧ください。
■巻頭言
次世代創薬科学研究者育成に向けた産学連携教育
国嶋 崇隆*
*金沢大学 医薬保健研究域薬学系、日本薬学会 医薬化学部会
本号の巻頭言は医薬化学部会長(当時)の国嶋先生からのメッセージです。薬学教育において多分野にまたがる高度な専門性が求められる創薬研究者をいかに育成すべきか、この難しい課題への医薬化学部会の産学連携による取り組みである創薬人育成事業にさらなる期待が込められています。
■創薬最前線
JCRファーマの創薬研究 ~一歩前に出る~
薗田 啓之*, 高橋 健一**, 平戸 徹**
* JCRファーマ株式会社
** JCRファーマ株式会社 研究本部
創薬最前線では、JCRファーマ株式会社における創薬研究の取組みが紹介されています。「J-Brain CargoR」などバイオ医薬品で独自の基盤技術を次々と生み出し、希少疾患や難病への挑戦を続けています。
■WINDOW
Rgenta・BioInformaticsに基づくRNA創薬へのさらなる挑戦
石井 喜英*,**, 神谷 博貴*, 折田 正弥*, 青山 和誠*
* Axcelead Drug Discovery Partners株式会社
** 武田薬品工業株式会社
RNA を低分子創薬の標的とする創薬研究では、一般にヒットの創出が困難ですが、Rgenta 社は Bioinformatics の徹底した活用によって、様々なヒットを創出することに成功しています。本稿では、この創薬プラットフォームの概要、今後の課題、ならびに創薬ベンチャーのビジネスや先端技術の取り込みについて説明されております。先端創薬のビジネスや、探索研究を進めていくうえで有用な内容となっていますので、ぜひご一読ください。
ESSAY 特集:創薬を加速する機械学習とロボティックス
■ESSAY
序論 機械学習とロボティックス特集にあたって
夏目 徹*
*国立研究法人 産業技術総合研究所
本号の特集は「創薬を加速する機械学習とロボティックス」。序論は、汎用ヒト型ロボットを開発された夏目先生による「機械学習とロボティックス特集にあたって」です。ロボット・AI・デジタルトランスフォーメーションが研究者にもたらす「真の」価値について解説頂いています。
■ESSAY
In silicoドラッグリポジショニングによる創薬支援
広川 貴次*
*筑波大学 医学医療系 生命医科学域
In silico リガンド-タンパク質ドッキングシミュレーションを活用したドラッグリポジショニングの基本概念が概説されています。さらに、COVID-19 治療薬探索の実例や今後の展望について紹介されています。今まさにホットな内容です。是非ご一読ください。
■ESSAY
構造生成器による医薬品分子設計の新展開
海東 和麻*, 山西 芳裕*
*九州工業大学大学院 情報工学研究院 生命化学情報工学研究系
創薬プロセスにおいて最も困難な課題の一つは、望ましい表現型を持つ低分子を効率的に同定することです。海東博士らは、TRIOMPHE (transcriptome-based inference and generation of molecules with desired phenotypes) と名づけた、オミックスに基づく構造生成器を開発しました。この創薬 AI は様々な標的タンパク質に対するヒット化合物の設計に役立つことが期待されます。
■ESSAY
反応条件探索への機械学習の応用
笹井 宏明*
*大阪大学 産業科学研究所
「収率は高い方がいい」の一文でこの論文は始まります。合成研究者は、反応温度や反応時間など多くの可変パラメーターを変えて実験を繰り返し、満足できる反応条件を探し出すのが当たり前でしたが、筆者らの機械学習を取り入れた試みは、そういった試行錯誤の在り方に一石を投じるかも知れません。ぜひご一読ください。
■ESSAY
AIとロボティクスを組み合わせた創薬モダリティ探索研究のデジタルトランスフォーメーション
角山 和久*, 原田 博規**
* アステラス製薬株式会社 アドバンストインフォマティクス&アナリティクス室
** 国立研究開発法人 物質・材料研究機構 千現地区 外部連携部門 企業連携室
低分子創薬では、分子設計-合成-活性評価-考察のサイクルを繰り返し、医薬候補化合物を創製します。本稿では、AIとロボットを組み合わせ、このサイクルを自動化する取組が紹介されています。プレゼン資料まで自動で作成してくれるとのことですが、人間の重要性も記載されています。
■SEMINAR
重水素標識化合物の医薬・産業における用途と効率的合成法の開発
佐治木 弘尚*, 山田 強*, 井川 貴詞*
* 岐阜薬科大学
C-H から C-D という最も小さい官能基変換を受けた重水素標識化合物。質量や結合安定性の違いを利用して様々な用途が考えられています。本稿では、重水素化医薬品の開発状況と合成法が紹介されております。実用的な合成法の確立により、その活用場面の広がりが期待されます。
■COFFEE BREAK
日本酒とペプチド
堤 浩子*
*月桂冠株式会社 醸造部 生産技術課
日本酒を有機化学的に紐解いた大変興味深い記事です。日本酒の醸造過程において有機化合物がどのように合成されているのか、なぜ麹菌が機能性ペプチドを必要とするのかについて、発酵の専門家の視点からわかりやすく解説されています。お酒がお好きな方も苦手な方も、ぜひご一読下さい。
関連動画-本号寄稿者による講演動画
MEDCHEM NEWS 紹介記事バックナンバー
・MEDCHEM NEWS 31-4号「RNA制御モダリティ」
・MEDCHEM NEWS 31-3号「ケムステ代表寄稿記事」
・MEDCHEM NEWS 31-2号「2020年度医薬化学部会賞」
・MEDCHEM NEWS 31-1号「低分子創薬」
・MEDCHEM NEWS 30-4号「ペプチド化学」
・MEDCHEM NEWS 30-3号「メドケムシンポ優秀賞」