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隠れた資質をも掘り起こす、 40代女性研究員の転身をどう成功させたのか(実例)

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大学を含む公的研究機関で働く研究員の多くは、任期制という不安定な雇用形態で働き、昨今では人員削減も行われている。その一方、企業では、研究員あるいは研究経験者の募集が増えている。

LHH転職エージェント(※)でも近年は、アカデミアから一般企業への転身を希望する研究員が少なくない。コンサルティングにより、希望にかなう一般企業への転職を実現した研究員の事例を、ライフサイエンス&メディカル紹介部製薬課の二宮悠輔氏に紹介していただこう。

※人財サービスのグローバルリーダーであるAdecco Groupは、日本における人財紹介および転職支援サービスのブランド「Spring転職エージェント」を「LHH」へ統合。これに伴い2023年4月3日、同ブランド名を「LHH転職エージェント」に改称。

企業で働く自身の将来像を思い描けない研究員

公的な研究機関に勤める40代半ばの女性I氏は、先行きの見通しが立たないまま、研究員の仕事を続けていた。

直近の業務は中枢神経系の基礎研究。専門性の高い研究実務に携わることに、やりがいを感じていたものの、雇用契約は数年単位で更新をしており、近く迎える任期満了は年齢的にも契約更新があやぶまれる状況だった。また、職場環境の悪化がI氏の働く意欲を萎えさせてもいた。

「最近就任した研究室のリーダーにマネジメントの経験がなく、さらにIさん直属の教授と専門も研究に対する姿勢も異なっていたため、研究室の運営が相当混乱していたようです」とコンサルティングを担当した二宮氏は、Iさんの転職理由をふり返る。

つまり、2人の上司から異なる指示が下される状況下でその両方に応えようと努めるIさんの業務負荷が増大していた。

「私は、新しい発見や発明を生み出せるほど優秀な研究者ではない」とIさんは自身を評した。しかし「0から1を生むことができなくても、1を10にする研究業務には全力で応えたいという思いで、これまで取り組んできた」と語った。

そんな努力家のIさんだから、混乱し、業務も急増した研究室では、自身が納得のいく仕事はできないと感じ、転職活動を始めたのだ。

I氏の転職をサポートした二宮氏が所属するライフサイエンス&メディカル紹介部製薬課は、製薬企業を中心に、CROやライフサイエンス関連の商材を扱う企業を担当する部署。そのなかで二宮氏はバイオベンチャー企業を主としながら、製薬企業全般にかかわる転職案件を手がけてきている。

I氏の転職先の希望が製薬企業の技術サポートか研究補助だったので、二宮氏の担当になったのだが、最初のヒアリングで、Iさんが一般企業での業務をあまり具体的にイメージできていないことが気になった。

なぜなら、LHH転職エージェントがコンサルテーションに用いるビジョンマッチングでは、求職者のキャリア・ビジョン、ライフ・ビジョンと、求人企業が求める人材像とをすり合わせていくことを重視するからだ。求職者がどのような職場環境で自身の力を発揮していきたいと考えているのか、また自身の将来像をどう見据えているのか――自己実現を図るための手法としてのビジョンマッチングは、ひとりひとりが心に秘めたキャリアやライフに対する想いを言語化し、明確にしていくことがとても大切だからだ。

「Iさんは一般企業での勤務経験がありませんし、おそらく常に契約更新のことを気にかけながら仕事をするような環境にあったので、自身のキャリア・ビジョンやライフ・ビジョンを考えてみる機会があまりなかったのだと思います」と二宮氏。

こうして始まったI氏の転職活動は、二宮氏とともに面接対策を講じながら、企業で活躍する自身の姿をかたちづくっていく作業ともなった。

 

当人が気づいていない能力を見抜くコンサルティング

I氏は礼儀正しく、会話も明瞭、自身の考えや感じたことを的確に表現できる人だった。前職では研究室が受け入れた留学生の指導もしており、英語も堪能だった。

ヒアリングを通して、研究者としての能力を自分では卑下していたが、二宮氏は、Iさんをかなり有能な人物と考えた。彼女の要望に沿う3社の求人を紹介し応募を勧め、そのうち1社の書類選考に通った。海外製のかなり特殊な研究用試薬を取り扱う商社の技術営業職だった。

これまで営業職の経験がないI氏にとって、当該案件について具体的な業務のイメージがわかず、不安な表情を浮かべていた。そこで二宮氏はこう尋ねた。

「研究室の備品や試薬の調達で、海外製品を発注したことはありますか」

I氏は、研究用資材の在庫管理や調達業務もしていた。

「そのとき、納品までの期間をどれくらい見込んで発注していましたか」と尋ねると、空輸の遅延なども想定し相応の時間的猶予を見込んで発注していたと言う。

「それを商社の立場でメーカー側と交渉するのが技術営業の仕事ですよ」と二宮氏が伝えると、I氏の表情が途端に明るく変わった。前職で自分が担当していた業務と求人職種が求める要件の中にある共通点に気づいた様子だった。

コンサルテーションで会話をする中で、研究計画の立案と進捗管理、留学生の指導、実験資材の調達までも行っていた話を聞いた二宮氏は、Iさんに相応の高い管理能力があることを見抜き、面接では、これまでのエピソードを含め自身の実績を話すようアドバイスした。

一方、求人企業側は二宮氏の人財紹介からI氏のキャリアに関心を示した。

「同社は、細胞培養関連の取り扱い試薬を増やす方針だったので、その分野の経験があるI氏を有望視していました。しかし、40代半ばという年齢から未経験の業務についていけるかどうかという懸念も示しました」

その点について、二宮氏は履歴書だけではわからないI氏の専門性や、人柄、仕事への熱意や今後の展望などを含め強みを打ち出し「他の専門領域へのアンテナも張ることのできる人財です」と自信をもって推薦し、求人企業側の不安を払しょくした。

実はこの場面、LHH転職エージェントが基本とする「360度コンサルティング」の特色をよく表している。これは、業種ごとに専門性を持つコンサルタント1人が、求職者と求人企業を双方向に取り持つというもの。だから、両者の意向を綿密にすり合わせ、懸念材料があればそれを取り払っていくこともできるのである。

 

求められるのは「自分のキャリアは自分で切り拓く」意識

I氏の面接は3度、すべてリモートで行われた。1次面接のみ二宮氏も立ち会うことができた。面接では、人事部の面接官がI氏と同じ研究機関の出身だったこともあり、会話が弾んだ。I氏は、業務のことばかりではなく、アカデミアから企業への転身でとまどったことや、その対処についてなどを積極的に質問した。

感触は良好だったものの、面接後に今度はI氏が懸念を挙げた。それは、自分に知見の乏しいケミカル商材を任されたら困るというものだった。二宮氏は、求人企業に1次面接の感触を聞く際に、それとなくI氏にどのような業務を担当してほしいのかも尋ねた。

すると「細胞培養関連の商材を取り扱う業務に」という答えが返ってきた。

I氏はそれを伝え聞いて安堵し、求人企業への転職により前向きに望むようになった。これもまた、企業と求職者の両者と向かい合う「360度コンサルティング」とコンサルタントが担当することの理由のひとつと言える。

面接が進む過程で、I氏は二宮氏にこう語った。

「これまでは中枢神経領域に特化した実験をしてきて、スペシャリストを目指してきました。けれど、これからはもっと視野を広げてケミカル系の商材などの知識も蓄えスペシャリストではなく、ゼネラリストを目指していこうと思います」

それは、I氏がこれまで不明瞭だったキャリア・ビジョン、すなわち将来こうありたいという自分の姿を、自ら見出して明確に表明した瞬間だった、と二宮氏は言う。

「個人的には、アカデミアに長く在籍する方は、自分でキャリアを開発するという意識が、企業で働く方に較べて薄いように感じます。与えられたプロジェクトの中で、自身のスキルを発揮できればいいという意識が強いのかもしれません。しかし、企業が人財として求めているのは、自分のキャリアは自分で切り拓く意識と、実行力です」

3次面接を終えたI氏に、もうためらいはなかった。内定が出ると即座に入社を承諾した。

二宮氏は、医療機器の営業職から現在の人財紹介業に転身した経歴を持つ。それは「医療の業界にこそ人財の適材適所が必要だ」という医師の言葉がきっかけだった。

「より幅広いステークホルダーを対象に、医療の世界で活躍したいと強く思っている方を支援したい」という二宮氏の想いが、The Adecco Groupの掲げるビジョン「人財躍動化」と合致した。

それゆえに、ビジョンマッチングにおいても、求職者と求人企業の相互理解を最も重視している。

「互いに相手の意向を十分に汲み取れるようにサポートし、幸せなキャリアの形成と高い満足に貢献することが、ベストマッチングにつながり、そこにLHH転職エージェントのコンサルタントとしての存在価値がある」と自負をもつ。

今回のI氏は、まさに二宮氏の秘めた想いが転職の成功に結実した成功例といえるだろう。

 

LHH転職エージェント コンサルタント:二宮 悠輔

大学院修士課程で動植物の病害応答機構の研究に携わる。新卒で入社した医療機器メーカーにて臨床に近い経験を積みLHH転職エージェント(アデコ株式会社)へ。製薬・医療機器(メディカル)業界、理化学機器(ライフサイエンス)領域、特に創薬ベンチャーや新規事業立ち上げにおけるCxO候補のリサーチや各種専門職の転職支援に強みを持つ。

 

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LHH転職エージェントについて


LHH転職エージェントとは、世界最大の総合人財サービス企業アデコが日本で展開する転職支援サービスのブランド名称です。国内では大都市圏を中心に事業を展開し、各領域に精通した転職コンサルタントがさまざまな業界・職種の転職サポートを行っています。ライフサイエンス・メディカル領域においては、化学業界を軸に、理化学機器、製薬、再生医療、医療機器といった分野でご活躍される方々の転職をサポートしています。

LHH転職エージェントの転職支援サービス特設サイトを見る↓↓↓

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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