だいぶ遅くなってしまいましたが、年末に開催したケムステV年末ライブの模様を報告いたします。
はじめに
ケムステV年末ライブは昨年で3回目となり、ケムステの恒例行事となりました。今年の振り返りの後、ケムステ版の注目分子「今年の分子2022」を紹介し、最後に記事ランキングベスト10を発表するという内容でライブを行いました。
今年の分子2022
今年の分子はChemistry & Engineering Newsが選ぶ “The molecule of the year” のケムステ版で、ケムステスタッフの投票で決定しています。
栄えある今年の分子2022に輝いたのはヘキサジンでした!こちらの分子は2022年の4月にNature Chemistryで報告されたもので、ベンゼンの窒素バージョンです。構造的には非常に不安定でありながら、合成によって作り出されたことに心を打たれるものがあります。
こちらの分子を推薦したケムステスタッフのMaitotoxinさんは、「構造有機の花形、シンメトリックなオールカーボンなんちゃら系は、めちゃくちゃ可愛いですよね。同時に天然物によく見られるアシンメトリックなヘテロ環マシマシ構造は、美しすぎます。そんな中、まるで天然物と人工物の美しい骨格を両どりしたかのようなヘキサジン合成報告が出てて、僕は昇天しました。炭素を含まず有機化学とは言えないこの化合物、実は可愛いだけでなく、材料学としても良い機能を持つことが期待できます。その点でも素晴らしい論文だと思いノミネートさせていただきました。選ばれて嬉しいです!ヘキサジンかわいい!⸜(*˙꒳˙*)⸝」とコメントしています。
ちなみに本家の“The molecule of the year”では、全フッ素化キュバンが1位に輝きました。ケムステでは、この分子を報告した研究者の方にスポットライトリサーチにてインタビューを行っています。
Announcing C&EN’s 2022 Molecule of the Year! Read all about this year’s contenders in the 2022 Year in Chemistry issue. https://t.co/0efvOYNzMS pic.twitter.com/iVSDoC0yXd
— C&EN (Chemical & Engineering News) (@cenmag) December 15, 2022
2022年 人気記事 Top 10
次は、2022年ケムステ人気記事 Top 10として、2022年に公開された記事の中からPV (ページビュー) 数の多かった記事をランキング形式で紹介しました。
毎年恒例の記事ですが、トップ10にランクインしました。正直、合併や買収以外で順位が大きく変動することはないので、ランキング自体は面白くありません。なのでランキングの発表というよりかは、各社の大きな動きを取り上げています。こちらにランクインしている企業で働く皆さんは、来年も同じか上の順位で発表されるよう日々のお仕事頑張ってください(笑)
昨年は酢酸エチル不足の記事がトップ10にランクインしましたが、今年はさらに色々値上がりや不足の嵐で大変な一年でした。今のところ実験室レベルでのパラジウムの供給は大丈夫な印象ですが。他の試薬や溶媒の値上がりが著しくて教員はヒィヒィ言っております。
どなたかのツイートを見てこちらの記事を書きました。機械学習で上手くいかなかったことについて論じた論文ということで、興味深い内容でした。グラフィカルアブストラクトもでかでかと「Failed」とスタンプが押されていて、パンチの効いたデザインになっており、注目を集めていると思います。
戦争の影響を示す暗いニュースですが、化学ではあまり使わないネオン、クリプトン、キセノンの製造方法について勉強する機会になりました。
記事が公開されたのは3月ですが、残念ながら9か月たったいまでも戦争が終わっていません。一刻も早く平和な世界が訪れることを望みます。
6位:創薬におけるモダリティの意味と具体例 13,244 PV
「モダリティ」という言葉が実はあまり好きではないというか、ぽっと出の印象があって苦手なのですが、それでも「モダリティとはなんぞや?」と答えられるようになるため書いてみた記事です。ある著名な先生から記事についてのご講評をいただき、感慨深い思い出もあります。
5位:ピレスロイド系殺虫剤のはなし~追加トピック~ 13,782 PV
生活に近い事象やものについて個人的に不思議だと思うことを掘り下げるタイプの記事を最近意識して書いていたのですが、この記事はその中でも発端と準備して集めていた資料がカチッとうまく合わさった感があり楽しんで書けました。引き続き精進いたします。
4位:【誤解してない?】4s軌道はいつも3d軌道より低いわけではない 14,336 PV
「原子の電子配置は化学の基礎でありながらややこしく、私自身も構成原理について初めて習ったとき、遷移金属周りの電子配置について混乱したことを覚えています。なので、この記事がたくさんの人に読んでいただいていると聞いて、うれしく思います。今後も学生の勉強を手助けする記事を書いていきたいと考えているので、来年もよろしくお願いします。」
3位:尿酸 Uric Acid 〜痛風リスクと抗酸化作用のジレンマ〜 25,069 PV
どこかで紹介されたか分かりませんが一瞬だけめっちゃバズった記事です。私はまだ痛風にはなっていませんが、いくら尿酸の抗酸化作用が強いと行っても基準値以上に上げたいとは思いません。適度な尿酸値を保つことが大事ですね。年末のビールはほどほどに。
2位:ケムステ版・ノーベル化学賞候補者リスト【2022年版】36,381 PV
年齢も経て昔ほどのペースではなかなか記事を執筆できてませんが、毎年恒例、ノーベル化学賞の執筆記事でまたもや効率良くランクインです。ブランドの力で恐縮です。今年は2年連続有機合成への授賞という、大方の予想を軽く超えていく選定でしたが、自分の研究分野とかなり近いこともありので、大変刺激的な出来事でした。新たなものづくりの世界を拓いてくれた成果を、皆で称えましょう!
1位:イグノーベル賞2022が発表:化学賞は無かったけどユニークな研究が盛りだくさん 38467 PV
今年のナンバーワン記事かつ本家ノーベル賞の記事よりも注目された結果になり驚いています。こちらは毎年取り上げている定番記事ですが、どんな研究が受賞したのか、いつも楽しみながらこの記事を書いています。今年のイグノーベル賞には化学賞が無かったので、来年こそは化学賞が登場することを期待します。
以上、ランキングとコメントをダイジェストでお送りしました。動画ではトップ10 全記事に対する山口代表からのコメントもありますので、ぜひご覧ください!!ちなみにトップ10発表後には、Chikako Shiratakiさんのおめでたい話と、Spectol21さんの重大発表、代表の爆弾発言がありました。
V年末ライブの後は、スタッフでV忘年会を実施しました!記事制作の裏話や業界、研究、進路の話を夜遅くまでしました。ケムステではスタッフを常時募集しておりますので今日のある方は、ぜひ【スタッフ募集のPR記事】をご覧の上お問い合わせください!
それでは、本年も Chem-Station をどうぞよろしくお願いいたします!