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化学者のつぶやき

アカデミアケミストがパパ育休を取得しました!

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こんにちは、こんばんは、おはようございます、Macyこと九大院薬 助教の寄立麻琴です。
タイトルにあるように、本記事は育休を取った時の体験談なども含みますので、筆者実名として書かせて頂きます。
突然ですが、筆者はアカデミアで助教をしている2児(長女・次女)の父です。
そんな私が去年1ヶ月と少しの育休を取得し、家族との時間を取りましたので、これから出産を考えているor育休を取ろうと考えているご家庭の皆さんに向けて、記事を書くことにしました。

目次

1. 育休を取った理由と取ってみた感想
2. 新しい育休制度と育児休業給付金について
3. 育休を取る上で気をつけたい職場環境の整備
4. 替わりの効かない仕事をしている人の育児 〜仕事を止めない工夫〜

5. おわりに、メッセージ

1. 育休を取った理由と取ってみた感想

現在単身赴任中で、妻と子供二人は実家で祖父母と共に暮らしています。一人目が生まれたときは、妻が1年育休を取っている間、実家を離れ3人で暮らしていました。その後、子供と妻は仕事復帰に伴い実家に戻り、数年後二人目の子供を授かりました。2022年に二人目の子を出産した後、1ヶ月と少しの休暇を取り、職場から遠く離れた実家で家族と過ごしました。
また育休ではありませんが、年末年始、ゴールデンウィークなどの長期休暇を引き伸ばすことや、連休の帰省で家族との時間を極力取る工夫をしています。

「男性 育休 アンケート」とGoogle検索すると、様々な男性の育休に対する意識調査結果が出てきます。これら記事を読んでいると、父親が育休を取ることに対する不安要素は、「職場に戻りづらくなる気がする」と「給料が減ること」という点が大きいようです。
前者に関しては、昨今は「パパも家事」「女性の活躍の場を増やす」様々な運動が行われているためか、多くの年代において男性の育休取得に対する意識が「取ったほうが良い」という方向に変わって来ているため、積極的に職場に相談してみることをおすすめします。
それでも、育休の前例がなく理解に乏しい職場もまだまだあるのが現状かも知れませんが、若手が第1歩を踏み出す事が、今後の職場環境改善に繋がると思っております。実際、私が育休を取得する前に、同学部の同僚(助教・男性)が育休を取得されていたことで、育休取得に対するハードルが下がっていたことは、筆者の育休取得に良い追い風となりました。部下や社員に育休を取らせたことがない上司や組織の人には、ぜひ本記事を最後まで読み、育児への理解を深めて頂きたいです

気になる給料面など、一般的な話は後述致するとして、まずは筆者と妻が実際に育休を取ってみて感じた感想をお伝えします!

・筆者の感想
二人目の子供が生まれてからの育休でした。育休期間の半分を福岡で夫婦と子供二人で過ごし、もう半分を関東の実家で祖父母を含む6人で過ごしました。福岡での生活が先でしたが、生後2ヶ月の子供は日頃一緒に住んでいないパパに慣れず、ママじゃないとだめとなることが多く、苦労しました。最も印象に残っているのは寝かしつけで、長女が寝るのが次女よりも遅いため、長女が少し大きな声を出すと狭い家の中ではすぐに全部屋に声が届き、寝ていた次女が起きてしまう問題が初日から発生しました。長女は生後数ヶ月の頃は添い乳でしか寝れなかったので、夜起きてしまうとパパは戦力外でしたが、二人目は違う習慣をつけられればと思い、寝るまでパパ抱っこを続けました。ただ、妻は子供の鳴き声に反応して寝られなくなるので、妻は家で長女を寝かしつけ、筆者は外に散歩に出かけ(近隣には多少迷惑はかけましたが)抱っこで寝かしつけてから家に戻る日々を送りました。1~3時間くらい外を散歩することがほとんどで、結構しんどかったです。ママ抱っこならもっと早く泣き止むのに。。といつも思いましたが、それに依存すると将来的に良くないと思い、継続しました。あとこれは完全に個人的な感想ですが、筆者は料理が好きなのでいつも一人で料理を作っていますが、家族がいると食べてくれるのでシンプルに嬉しかったです(笑)

関東に戻ってからは、実家の祖父母がご飯を作ったり洗濯を手伝ってくれたため、子供を遊ばせたり寝かしつけたりしてくれたため外に出かけるハードルが少し下がりました。妻の感想にもありますが、4人で出かけると家事がおろそかになり、疲れている状態で夕飯を作ったり寝かしつけをしたりしないといけないのですが、祖母が夕飯を作ってくれてとても助かりました。大感謝です。祖父も、夫婦の手が回らない時に子供の相手をしてくれたのでとても助かりました。寝かしつけサイクルは、部屋の間取りが変わったことで声の届く範囲も福岡の家と異なったため、福岡で確立した寝かしつけ法を若干チューニングすることで最適な寝かしつけ方(実家Ver)ができました

大変だった点は、仕事の引き継ぎを一つ失敗していて、結果的に育休明けにしか完璧には対応できなかったことがありました。この話、詳細は後述します。

・妻の感想
産後のダメージがまだ残っている生後2ヶ月くらいで育休をとってもらえたのは良かった。上記エピソードにより長女を寝かしつけた時に一緒に寝ることができて、毎日まとまって3時間くらい寝かせてもらえたのは嬉しかったし、ありがたかった。生まれてまもなく哺乳瓶拒否になっていたので、そんな中一人で泣いている赤ちゃんを抱っこし続けるのは大変だったと思う。最終的には19時過ぎに風呂に入れた後、添い乳や抱っこをせずとも寝られるようになってくれたので、1人になっても二人の子供の寝かしつけができるようになったのは大きな成果だった。育休中、パパが夕飯のメインを作ってくれたので、ご飯の献立を考えなくてよかったのはとても助かった。大人も子供も食べられて、栄養が偏らない食事を毎日考えるのはかなりの労力なので、メニューを決めて作ってくれたことで精神的なストレスが減った。

大変だったことは、どこでも4人で出かけていたので、家のことをする時間が早朝になっていたこと。毎日外に出ると掃除する時間や体力がなくなっていたように思う。長女も甘えたい時期のため難しいが、二人一組で行動する時があっても良かったと思う。例えば、長女がプールに行きたいと言った時、一緒に行った次女は暑い中待っているだけになってしまい、少し可愛そうだったかなと思う。

また、パートナーの世話の焼ける部分は、子育て中のストレス(ホルモンバランスの乱れや育児への不安、疲れなどが原因)によって、より一層気になりました。主観が入るので具体例は多く挙げませんが、例えばおむつを替えてくれたのはいいんですが、替えて服着せて手を洗って満足しておむつを床に放置してるとか。1つ1つは軽いですが、細かいことが積み重なるとイライラしてきます。小さいイライラを蓄積させずに、思った時に注意するのが良いです。

・夫婦話し合いにより思った事

「パパ見知りの改善」
育休後、生後8ヶ月の時期に年末年始の休暇を迎えました。それまでも度々実家に帰っていましたが、パパが来ると大号泣するようになってしまいました(変なひげのおじさんが来たと思われた)。ママと他の人の区別がつくようになってきて始まる人見知りですが、パパ見知りには困ったもので、育休の時に確立した寝かしつけが全くできなくなってしまいました。ですが、年末年始に2週間弱、実家に滞在することができ、その間できるだけ話しかけたり、機嫌のよい朝に抱っこしたり遊んだりを続けたからか、最後の方はしっかり抱っこしても笑って、眠いときは寝付いてくれるようになりました。とても嬉しい瞬間でした。

「父親のワンオペ力向上の重要性」
母親は、美容院行きたい時に行けない、骨盤矯正や歯医者なども行けない、などなど、子供から目が離せないために(人によっては)年に1回すら行けずやりたいことができないといった悩みがつきものです。そこで、父親が子供の関係を良く保ち、1日の育児フローを把握して、子供の面倒を一人で見れる(ワンオペできる)環境づくりが大事だと思いました。長女とは二人で遊び場つきのショッピングモールに行ったり、近くの公園で遊んだり、ご飯を食べさせたり、パパ一人で面倒を見ることができます。次女はパパ見知りもあったので苦労していますが、授乳間隔の3時間の間だけですが父親のワンオペができました。小さいプログレスですが、父親の能力以前の問題も大きいため、できるようになったことを夫婦で喜びました。特に顔を見るなりピエンされていたヒゲじい筆者はとても嬉しい気持ちでした。

「父親の〇〇はやってるじゃんという意見は…」
多くの男性が思いがちな、〇〇はやってるのに、なんでやってない事ばかり責められるのだということ。育児をするのは両親であって、父親はサポート役ではありません。「育児のためにやっていること」は当たり前にすべきことなので、自分がやっている事を数えないこと。むしろパートナーがやっていることで自分ができることを観察して見つけることが大事だと思います。ちなみに長女が産まれたときには◯◯はやってるのに…とも思った筆者ですが、今回は他に何ができるかを以前よりは意識できたと思います(妻にとって足りてたかどうかは別として)。
ただし逆に、父親が育児に関する何かをできるようになったプログレスを、「その程度やって当たりまえ、それしかできないの?」というような言い方で否定してしまうと、かえって育児する気を失せさせてしまいます。つまりまとめると、お互いに何かをしたことを自負せず、パートナーがしたことを評価するパートナーに評価されたことで満足しない。これを繰り返すことが大切だと思いました。かかる時間は家庭に依ると思いますが、仕事の負担が1:1に近づいていくと思います。
ただ、多少チクッと刺さる言い方をされても、落ち込みすぎずメンタルを強く持ち育児を続けることも、父親に求められる大事なメンタリティーです。ホルモンバランスが乱れたり、疲れによりストレスを感じている母親は、ついイラッとしてしまうことはあるものです。きつい言い方をされても、大抵のことは落ち込んだりイラッとせずに受け止めましょう

新しい育休制度と育児休業給付金について

さて、ここからは新しい育休制度についてまとめて行きます!
2022年10月から改定された新しいパパ育休制度について、詳細はこちらをご参照下さい。以下にわかりやすい概要図を掲載させて頂きます。

  • 育休前に必要だった1年間の業務実績を撤廃、1年6ヶ月先までに雇用期限がなければOK。
    (図にはないが新規適用)
  • 育休申請が1ヶ月前から2週間前に短縮
  • これまでは分割取得が難しかったのに対し、新しい育休制度では最長2歳まで分割して育休が取得可能。

図1. 厚生労働省HPより抜粋

これにより、妻がどうしても仕事に出ないといけない時に夫が育休を取るなど、育児の分担がしやすくなります。女性も手に職を持って働く現代ではとても重要な制度であると言えます。
実際どのように育休が取れるの?という疑問は以下のイメージ図を見れば大体理解できると思います!

図2. 厚生労働省HPより抜粋

 

・育児休業給付金は日給×0.67円だけど…

育休取得において懸念の一つである給料の減額ですが、うまく取得すれば実質支給される金額は減るどころか少し増える場合もあります!
育休期間中は、欠勤と同じで、給料は“ゼロ“になります。その代わり、育休期間に応じて育児休業給付金が振り込まれるという仕組みになっています。
月給制であれば、「日給=月給÷当月の平日の日数」ですので、育休取得日がある月の一部である場合、勤務日(平日)×日給(=月給)が支払われることになります。

一方、育児休業給付金は、「土日休日を含む育休を取得した期間の日数×日給×0.67」となります。つまり、休日が無い場合でも「平日の日数×(7/5)×日給×0.67」=「月給×0.93」の育児休業給付金が支払われます。休日が多い月に育休を取ったり、金曜から月曜まで育休を取得することで育休期間中の土日祝日の割合を最大化すれば減給率を大きく緩和することができます!休日が多い月であればこれだけで月給よりも多く給付金がもらえることも。

また、育休を取った日数はボーナスに関わる勤労日数にカウントされないため、ボーナス額にも影響がある場合があります。振り込まれた給料・育児休業給付金・ボーナスを確認して計算しましたが、ボーナス額は年々変動するので例年より増えており、本来支給される額からの減額はイマイチわかりませんでした(汗

筆者の合計38日間の休暇の配分は、14日の育休と12日の土日祝日、3日の夏季特別休暇、9日の有給または振替でした。これ以上の日数取得ももちろん可能でしたが、家族との話し合いの結果このような形にしました。

・月末育休による社会保険料天引き免除

さらに、月末最終勤務日に育休を取得し、かつ育休合計日数が1ヶ月を超える場合、該当する月の社会保険料天引きが免除になります(
実はこの制度、2022年10月までは1日でも月末に育休を取れば社会保険料免除だったのですが、月末1日のみを育休にするちょっと制度の趣旨と異なる裏ワザを使う人が多すぎたため適用条件が変更になりました。

この制度、ボーナス月に使うことで、社会保険料天引きを大幅に削減することができます。月末から翌々月開始日まで育休を取ると2ヶ月分の社会保険料が天引きになるので最も効率的な育休取得方法になるでしょう。

3. 育休を取る上で気をつけたい職場環境の整備

先述のように、男性の育休取得に対する意識が高まっているのは事実です。
しかし、育休期間中における仕事の引き継ぎに関しては注意が必要です。

チームで仕事をしている場合、一員が数ヶ月抜けても、作業全体には本質的な支障は出にくいかも知れません。一方、完全な分業制で替わりがいない立場の場合、休暇を取ると業務全体に支障が出てしまいます。このようにならないために、仕事を引き継ぐ事ができる協力体制を常日頃から築いておく必要があります。

筆者の事例では、研究は学生に頑張って進めていただき、授業など大学の仕事は同研究室の助教の先生にお願いしていました。また、コロナ禍によりテレワークの文化が一般化したため、育休中でも取得者の裁量次第ではテレワークをすることは可能です。筆者は、子供が寝ている間にメール対応や論文書き、学生の研究進捗のチェックなどをすることは可能でした。

引き継ぎ不足だったと反省した点もありました。育休中に搬入作業が進む予定になっていた機器の搬入とセットアップが、想定していた通りに進まなかったことで少しトラブルになってしまいました。結果的には復帰直後に現場の状況を見て筆者自身がアレンジした所問題なく運用できるようになり良かったのですが、業者や機器管理係にアサインした学生との連携をZoomミーティングなどで取っておくべきだったと反省しました。

本記事執筆にあたり、育休を取った女性研究者にもお話しを伺いました。ボスの理解はあり、協力的で助かったが、学生の教育等に関してあまり打ち合わせをせずに育休に突入してしまったことは失敗だったとのこと。本当であればボスにもっと頼って学生を見てもらえばよかったが、ボスに学生を見させるという考えがなく(多分ボスも)、育休中に修論や卒論の添削をやってしまった。結果として卒論などの指導が中途半端になって学生に迷惑がかかってしまったかもしれない。と、貴重なご意見を頂きました。図2にもある通り、育休中の就労は原則的に想定されていない(パパ育休は多少許容範囲が広い:関連リンク)ですが、自分の指導学生の卒論などはチェックしたいのが教員の性です。それでも、育児の合間の短時間で完璧に卒論の添削をするのはほぼ不可能ですので、頼れる人に頼ることは必要でしょう

育休中、特に子供が寝る前の日中の時間帯は家事で忙しく、なかなかメールチェックの時間すら取りづらい状況でした。特に業者対応は日中にしか連絡が取れないケースも多いので、事前に入念に引き継ぎを行うべきです。また、学生・教員に関わらず自分の元々の仕事があるため人に仕事を振るのは気が引ける部分もありますが、お互いに思いやりを持って、対応することが大切です。育休中は研究にかけられるエフォートがゼロになると言う前提で育休前の準備をすることがとても大事人に頼らなくては解決しない問題はしっかり人に相談する勇気を持つことが大事です。仕事を頼みやすい人間関係を常に形成し、育休復帰後はお礼の品(お菓子やお酒など)を贈り、感謝の気持ちを形で表現することも大切かと思います。

4. 替わりの効かない仕事をしている人の育児 〜仕事を止めない工夫〜

このように育休を取得した経験と、妻が出産後も企業の研究員として働いている家庭事情が考慮されたためか(理由は伺っておりません)、学内の「男女共同参画FD」のパネリストとして招集され参加してきました。筆者の職場は大学病院が併設されていることから、病院に勤務する女性職員(医師や研究者)が継続して仕事ができる環境作りについて議論がなされました。女性職員が長期間の育休によって現場復帰が遅れることを懸念し、ベビーシッターの活用や男性の家事育児への積極的な参加をすすめるといった声が聞かれました。女性の社会新進出にも男性の育休取得は重要であると言えます。実際、新しい育休制度では、男性女性が交互に育休を取ることで、長期的なキャリアの穴を作らずに育児をするような新しいスタイルも取ることができます(図2参照)。

ただ、裏を返せば、キャリアのために止めない方が良い仕事をしている人は男女問わずいるはずです。育休で研究を止めることはできても、同業者の研究は止まらず、同じコンセプトの論文や特許を先に出されてしまうこともあります。そのような人たちのために職場が作らなければならない環境とはどのようなものでしょうか?
男女共同参画FDで出た一つのアイデアは、職場と託児所と自宅のトライアングルを小さくするということでした。つまり、職場内またはすぐそばに保育園などの施設があり、職員の子供を優先的に入れることができる環境が整っていれば、育児と仕事の両立に大きく貢献するでしょう。そのためには、多くの職場(付近)に保育所を作り、保育士を増やす事が大切だと思います。

・未来の託児所について考える
京都大学iCeMSの深澤愛子 先生のTwitterで「学術集会に託児室が必要」ということについて語られています(元Tweet)。
現地オンラインハイブリッド開催を続けることも一つの解決策かとは思いますが、現地参加しか選択肢がない場合も出てくると思います。保育士不足も深刻な問題ですので、保育士を増やす努力をした上で、託児所を用意することもこれから重要になってくるかもしれません。実際に、いくつかの学術集会で託児所を設ける試みがされているそうです。
そもそもこの議論の根底には「家族の予定を毎回合わせるのが大変」という悩みがありますが、新しいパパ育休制度で少し意識の変化があるかもしれません。というのも、男性職員が短期間の育児休暇を取る事が一般的になれば、その期間のみ男性職員が遅めの出勤、早めの退勤する事に精神的な足かせがなくなる可能性があるからです。数日間のために育休を使うのなら給料の観点から有給を取得した方が良いですが、パパが子育てのために有給を取れる環境もとても大事だと思います。職場と託児所と自宅のトライアングルを小さくすることも、この問題を解決する有効な対策の一つですね。

もう一つの解決策は、ベビーシッターでしょうか。アメリカで夫婦共に活躍しているとある研究者の方は、ベビーシッターや家政婦(夫)を雇って、夫婦お互いの家事に対するウエイトを減らしていると言います。日本ではあまりこのような文化が一般的ではないかもしれませんが、実践されている日本人研究者の話では、「逆に家族の時間を大切にするようになった」「夫婦どちらかが家事を沢山しているという不平等感がなくなり夫婦仲を良く保てる」といった声を聞きました(男女共同参画FDにて)。人に子育てを手伝ってもらうと子供に注ぐ愛情が減るというのは必ずしも皆に当てはまる考え方ではないのかもしれません。
ただ、送迎バスに児童を放置した事件など記憶に新しい昨今、見ず知らずの人に子供を預けるのが怖いといった不安は拭えないのが現状なのだと思います。このようなサービスを提供する信頼の高い保育業者ができることも、今後重要なのではないでしょうか。

5. おわりに、メッセージ

・妻からのメッセージ
育休1ヶ月というのが世間的には長めなのかもしれないですが、最低でもその程度取ってみないと育児の忙しさを垣間見ることすらできないのではないかと思います(日経新聞調べ、男性育休の平均日数は約30日[2022/11/21])。育児は赤ちゃんの成長と共に、悩みのポイントが変化し続けるため、その都度工夫が必要です。パートナーどうしコミュニケーションを良くとり悩みを共有し、共に考え、父親は育児をサポートするという意識ではなく、主体的に関わることが大切だと思います。

父親も母親も、子供が産まれたら初めての育児が始まります(2人目でも、2人育てるのは初めて)。母親は産後ホルモンバランスの乱れや育児への不安、思い通りにならないことからストレスを抱えがちです。そこで、やって欲しいことをやってくれなかったり、世話の焼ける行動ばかりしていると、イライラがつのり感情的になってしまいます。夫が妻のやってほしいことを(言わずとも)理解して的確にやってくれると、負担が減り、イライラが解消され、育児や家庭環境の好循環ができると思います。

男性の育休は、男性が育児を理解するための期間でもあり、夫婦コミュニケーションの時間を多く取ることができる大切な期間だと思います。育休を取られる男性は、ただ育休を取るだけではなく、育児において何をすべきかを良く観察し、考えることを意識していただきたいです。

・筆者からのメッセージ
育休取得や長期休暇の延長により育児に関わろうと努力している単身赴任研究者の化学者のつぶやきを、妻と私の感想も交えてお伝えしました。男女共同参画FDにも参加し、今後の育児に対する課題についても考えさせられました。男性の育休取得については少子高齢化の改善にも関わるとても重要な課題であり、どのような職種においても、職場全体が真剣に理解を深めるべき内容だと思います。また、妻のメッセージにもあるように、育休制度の云々以前に、男性が育児にコミットすることは、子供のためにも妻のためにも必要不可欠です。結果として育休が欲しくなるのではないかと思います。本記事が、読者の皆様の子育てや育休について考えるきっかけとなっていただければ幸いです。

多忙過ぎて子供を持つ未来が全く見えないという研究者の方の声を耳にすることがありますが、研究者に限らず、多忙でも子供を産みたいと思える環境整備が進むことを切に願っております。

謝辞

本記事執筆にあたり、ご助言を頂いた京都大学 深澤愛子先生、名古屋大学 八木亜樹子先生、ケムステスタッフ 白瀧千夏子さん、および妻 寄立結菜に感謝申し上げます。

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Macy

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有機合成を専門とする教員。将来取り組む研究分野を探し求める「なんでも屋」。若いうちに色々なケミストリーに触れようと邁進中。

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