研究をしていると避けては通れないのが進捗報告や成果発表です。スライドやポスターを作る際に、「この器具の絵があるとわかりやすくなるんだけどな」「でも自分で描くのは難しい…」という経験がある方は多いのではないでしょうか。そんな時に便利なのが、インターネット上で配布されている「フリー素材」の活用です。フリー素材という言葉には厳密な定義が存在していない(と思います)が、一般的には、「その素材(画像や音楽など)の制作者が、第三者が(場合によっては条件付きで)そのコンテンツを利用することを許可している素材」であると筆者は解釈しています。
有名なフリー素材が「かわいいフリー素材集 いらすとや」の各種イラストです。いらすとやwebサイトの「ご利用について」のページには、いらすとやの配布素材は規約の範囲内であれば個人・法人・商用・非商用を問わず無料で利用可能であること、また素材の加工もOKであることが明記されています。ただし、作者の「みふねたかし」さんは著作権の放棄はされていないとのことで、そのことも同じページ内に明記されています。非常に多岐にわたる内容のイラストが老若男女どんな立場の人も使いやすいタッチで描かれて準備されており、いらすとやのイラストを公的な場で見かけることも少なくありません。
本記事のアイキャッチ画像にも、いらすとやの素材を使用させていただきました。
いらすとやwebサイトにも化学に関わるイラストが多数掲載されているのですが、「この器具のイラストを探していたけど見つからなかった…」「この操作のイラストがあったらいいのにな…」ということもあるかと思います。そこで今日は、化学系研究者に役立ちそうな素材サイトを2つご紹介します!
化学研究系フリー素材サイトの紹介
1, かがくイラスト 化学の素材屋さん
「かがくイラスト 化学の素材屋さん」は、北海道大学の有機系研究室で技術員をされている「おやすみん」さんが制作・運営をされているフリー素材サイトです。化学系ラボに所属する方が作られているだけあって、ガスボンベのイラストであれば各種の気体が揃っていたり、コールドトラップはデュワー瓶の有る無しだけでなくデュワー瓶断面図付きバージョンが用意されていたり…と、かゆいところに手が届くラインナップになっています。割れたガラス器具のイラストや測定装置のイラストなどは、注意喚起用の掲示物を作成する際などにも活用できそうです。また、器具だけでなく分子のイラストや細胞のイラストも用意されています。筆者は、ポルフィリンのイラストがイチオシです。色使いやタッチがポップでとても可愛いです!
本記事のアイキャッチ画像では、左側の3つが「かがくイラスト 化学の素材屋さん」でダウンロードした素材です。
「かがくイラスト 化学の素材屋さん」に掲載されている素材画像は、個人・法人・商用・非商用を問わず基本的には無料で使用可とのことですが、一部禁止事項があるので規約をよく読んで活用しましょう。
なお、おやすみんさんは、化学系ゆるキャラ「そるべんつ」のLINEスタンプも制作・販売されています。こちらも非常に可愛らしいです!(ちなみに、様々な化学系LINEスタンプについて、過去のケムステ記事でも特集をしています!)
2. 研究.net 研究イラスト素材
WDB株式会社が運営するwebサイトである「研究.net」のコンテンツのひとつに「研究イラスト素材」があります。やや生物系実験に寄りぎみの内容が多いですが、HPLCのカラムやカラムの内蔵構造など、結構マニアックなイラストが用意されています。ページの先頭にダウンロードの方法を書いてくれているのが親切ですね!画像サイズは小さめですがイラストの印象がシャープで、カッチリした雰囲気の書類の作成時などに本領を発揮しそうです。なお、研究.net の「研究イラスト素材」は、個人・商用を問わず全て無料で使用可能である旨が記載されていますが、素材の再配布はご遠慮くださいとのことです。
本記事のアイキャッチ画像では、右側の3つが「研究.net 研究イラスト素材」でダウンロードした素材です。
おわりに
化学系のフリー素材サイト2つを紹介しました。これら以外にも様々な素材配布サイトがあります。見やすく伝わりやすい資料や掲示物を作成するために上手く活用できるとよいのではと思います。
研究者とイラストは親和性が高く、進捗報告や成果発表だけではなく、論文の表紙やTOCにイラストを使用している場合も多いです。(京都大学は、「プロに依頼する科学イラストのススメ」という資料を制作・公開されています。)描き手によってイラストの持つ雰囲気も大きく変わるので、自分がどんなイラストが好きか(自作する場合には、どんなイラストが得意か)ということを意識することも重要なのかなと思います。イラストは、研究の方法の説明時に役立つだけではなく、肉眼では見えない現象を扱う化学分野にとって研究のコンセプトや成果を伝える際にも強い味方になります。ぜひ、効果的なイラスト活用方法を探ってみてください。
関連リンク
・キムワイプLINEスタンプを使ってみよう!(ケムステ記事)
・荒木飛呂彦のイラストがCell誌の表紙を飾る(ケムステ記事)
・論文・学会発表に役立つ! 研究者のためのIllustrator素材集: 素材アレンジで描画とデザインをマスターしよう!(ケムステ記事)
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