およそ3年間に渡る新型コロナウイルス感染症の蔓延により、経済、文化、研究、社会活動のすべてが大きなダメージを受けた。2022年後半となり、未だ安心はできないものの、次のフェーズを見据えて動き出すべき時期に来ている。化学は、新たな分子を作り出し、素材や製品に新たな機能を与えることで、健康で豊かな社会の構築に貢献してきた。コロナ停滞からのリスタートの時期に将来に向けて化学は何ができるのか、本シンポジウムでは、日本化学連合に参加する学協会のwithコロナ時代における技術についての先端研究を紹介し、化学の役割を議論する。
概要・日時・申し込み
第16回日本化学連合シンポジウム
2023年3月7日(火)14:00~17:30
オンライン開催 参加費無料 要事前登録(3月3日(金)12:00締切)
参加申込:https://www.jucst.org/form/view.php?id=18379
プログラム
14:00-14:10 開会挨拶
第Ⅰ部 素材・材料の創製に基づく技術
14:10-14:40 講演1
「結晶をグラフェンで包んだ高速分離膜で富化酸素製造へ」
金子克美(信州大学先鋭材料研究所)
ゼオライト結晶をグラフェンで包接して、ゼオライト結晶面とグラフェン面間に酸素や窒素分子サイズに近い隙間を作製すると、分子の大きさが同じような酸素と窒素でも分離できます。それも、これまでの分離膜に比べて、分離の速度が50~100倍大きく、分離性能がとてもよいことが分かってきました。この分離膜を用いて、大気中から酸素濃度を高めた富化酸素を供給できる小型の装置ができると、医療に大変役立ちます。
14:40-15:10 講演2
「ウイルスを高効率に除去するナノ構造膜」
加藤隆史(東京大学大学院工学系研究科)
ナノあるいはサブナノメートルレベルの直径の揃った孔が規則的に配列している自己組織化ナノ構造膜により、ウイルス(直径が通常20-120ナノメートル)を極めて高い効率で除去することができた。この水処理膜は、自己組織化した液晶分子を光重合反応させることにより作製した。
15:10-15:40 講演3
「バイオ電池構築を目指した生体触媒の分子配向制御による高機能デバイスの開発」
末 信一朗(福井大学理事・副学長)
バイオ電池は、生化学反応に基づく酸化還元反応によって有機物から電気エネルギーを得る装置である。バイオ電池は温和な条件下で作動し環境負荷が小さいという利点がある一方で、電池出力の低さが問題として挙げられる。ここでは、アーキア由来の熱安定性の優れた酵素を用いてデバイス表面での酵素分子やメディエータ分子の配向制御を行い多様なバイオ電池の構築例について紹介する。
15:40-15:50 休憩
第Ⅱ部 予防・治療の技術
15:50-16:20 講演4
「感染症ワクチンの最適化に資する基盤技術構築」
吉岡靖雄(大阪大学微生物病研究所)
mRNAワクチン開発の歴史を鑑みても、昨今の感染症ワクチンの開発には、感染症学や免疫学は勿論のこと、化学を含めた分野横断的研究が必要不可欠といえる。本講演では、感染症に対するワクチン開発の現状と我々の研究成果について概説すると共に、化学とワクチン学の融合研究についても議論させて頂きたい。
16:20-16:50 講演5
「COVID-19治療薬Ensitrelvirの開発」
立花裕樹(塩野義製薬株式会社事業開発部)
塩野義製薬では、SARS-CoV-2の複製に必須なタンパク質である、3C-like proteaseプロテアーゼをターゲットとした創薬にいち早く取り組み、1日1回、経口投与(5日間)での治療が可能なEnsitrelvirを創製、2021年7月には臨床試験入り、2022年11月22日に日本で緊急承認された。本講演では、このスピード創製がどのようにして可能となったのか、についてを論じたい。
16:50-17:25 総合討論
17:25-17:30 閉会挨拶
主催・共催お問い合わせなど
主 催:日本化学連合
共 催:(予定)化学工学会、クロマトグラフィー科学会、高分子学会、触媒学会、石油学会、日本エネルギー学会、日本化学会、日本ゼオライト学会、日本地球化学会、日本膜学会、日本薬学会
協 賛:化学工業日報社、化学情報協会、日本セラミックス協会、繊維学会、先端膜⼯学研究推進機構
後 援:(予定)新化学技術推進協会、日本化学工業協会
協 力:Chem-Station
問い合せ先:一般社団法人日本化学連合 事務局 E-mail: secretariat@jucst.org