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一般的な話題

企業における研究開発の多様な目的

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何の目的でこの研究をしているのか、この研究が成功するとどんなことが得られるのか。本記事では、企業における研究の目的について過去の記事やプレスリリースを振り返りながら考えていきます。

背景

イントロダクションの問いに一言で答えるなら、「新しい製品・技術のために研究しています。」というのが王道ではないかと思います。しかし、どういう風に新しい製品なのかという疑問も湧きますし、新しい製品のためではない研究もあるわけであり、筆者が思いつくところの研究開発の多様な目的について見ていきます。

より高い機能・効果のための研究

一番わかりやすい例がより高い性能・効果をもたらす研究ではないでしょうか。例えば電池の研究では、より電池容量が高くなるような電極・電解質などです。性能とコストは背反関係になることが多く、コスト未知で大幅な性能向上を狙った研究は長期的な研究として行い、コストを考慮した性能の向上は、製品化に近い短期の開発で行うことが見受けられます。また応用先がより性能を高くするために要求が変わり、異なる素材を探す研究も行われています。

例:イオン伝導ポリマー膜

既存の製品と比較して10倍以上の安定した電池作動時間を示した例です。

新しい機能・効果のための研究

今までになかった機能や効果をもたらす研究もイメージしやすいと思います。例えば創薬研究では、薬が無い病気に対して、その病気を治すための新しい分子構造を持った薬の研究がなされています。新しい機能・効果をもたらすのは新しい材料だけでなく、既存の材料を使って新たな応用先を探す研究も多くなされています。自動車向けの部品を全く異なる分野に転用するのは考えにくいですが、化学メーカーが製造する素材にはいろいろな可能性があり、今売っている素材の売り上げをさらに伸ばすために現状の応用先とは異なる応用先を探す研究を行うことがあります。

例:ムール貝の分泌物

既存製品からの転用ではないですが、ムール貝の分泌物からヒントを得て新しい粘着テープを開発しています。

新しい製造プロセスのための研究

すでに販売している製品に対して製造プロセスを改良する研究も行われています。この研究の成果としては、製造コストの低減による利益率の向上などがあり、より安い原料や簡便な合成方法で製造できないか検討することがあります。また製造時の安全性の向上のため、反応性が低い基質や反応条件の使用を検討することも製造プロセスに関する研究の一つです。さらに原料が調達できなくなった時に備えて、別の原料を使った検討なども製品供給の安定化のための研究として行われています。

例:AIによるプラント制御

AI研究では、製造プロセスの向上に貢献しています。

ハンドリング性・安全性を向上させるための研究

前述と似ている内容ですが、製品の性能・対象は同じでも、安全性やハンドリング性を向上させる研究も行われています。安全性に関して性能が良ければ何でもよいわけではなく、なるべく毒性が低いもの、分かりやすい例で言えばSDSにてピクトグラムが付かない化学物質が好まれます。ハンドリング性については、応用先での使い勝手を良くすることであり、同じような効果を示して物性の異なる化学物質を探索する場合もあります。

例:新しい顔料「YInMnブルー」

安定性、安全性、元素の入手性すべてが良好な既存の青色元素は無く、この新しい青色色素はそれを克服した開発例だと言えます。

環境負荷を低減する研究

昨今SDGsが叫ばれる中、多くの企業が何かしらの活動を行っています。化学品を製造するとたくさんのエネルギーを消費し、化合物によっては再生不可能な廃棄物を多く排出している場合もあります。そんな現状を変えるべく、リサイクル可能な素材の開発や二酸化炭素をなるべく排出させない製造プロセスの研究があります。この研究では、上記とは異なり単純な利益が向上するか不明ですが、社会的責任を果たすための研究として近年では大変重要なテーマです。

例:合成燃料

二酸化炭素の排出を抑えるために、二酸化炭素から燃料を作る研究は環境負荷の低減に役立ちます。

製品統合のための研究

会社としては、たくさんの種類の製品を少量ずつ販売するよりも、少ない種類の製品を大量に販売したほうが都合が良い場合が多いです。そのため製品の統合を目指すことがありますが、何らかの理由があってそれぞれの製品があるわけであり、複数の製品を統合できるように、どちらかを改良したり新しい製品を作るための研究開発を行います。

メカニズムの解明のための研究

製品の開発には直結しないものの、現象理解のための研究を行うこともあります。理由がよく分からないが、うまく性能が出せない時は、製品の開発から離れて原理の理解のための研究を行います。そして判明したメカニズムを元に効果的に製品の開発を進めることができます。

例:体臭のメカニズム解明

ワキガ臭を最も特徴付ける硫黄臭の発生メカニズムについて解明した例であり、この研究を基に消臭スプレーの開発が行われたと思われます。

上記全てを行っている企業は少なく、業界によってどのタイプの研究に注力しているかは変わると思います。この記事から企業の研究=性能向上・新規品というわけでは無く、いろいろな角度から良い製品を作ることを目指していることを理解いただけたらと思います。

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ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

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