[スポンサーリンク]

一般的な話題

化学作業着あれこれ

[スポンサーリンク]

薬品を取り扱う化学実験では普段着そのままで作業を行うことは危険であり、何かしらの作業着を着て仕事を行います。この記事では、企業における作業着について見ていきます。

作業着事情

学生実験や大学の研究室では私服の上に白衣を羽織って実験することが多いと思いますが、企業においては作業着で実験しているケースが多いと感じられます。そのため具体的に作業着の着用例について筆者の経験を元にまとめてみました。

1, 作業着とユニフォームを兼用している場合

作業着がユニフォームを兼ねている職場が日本の企業ではよくあります。就活サイトにて社員さんのインタビュー記事が載せられていることは良くありますが、その写真で作業着で実験しているならば、このスタイルを採用している職場です。基本的には、朝出社して退社するまでそのユニフォームを着て過ごします。ジャケットとパンツ、安全靴が一般的なユニフォームのセットで、規模が大きい大企業ではオリジナルの作業着を作っている場合も多いです。着替えは社内の更衣室で行えるため、ラフな格好で通勤することが可能です。ただし車通勤がメインの事業所では、自宅から作業着を着用して出勤する場合もあります。ユニフォームを兼用しているため、実作業を行わない研究・製造部門以外の社員も同じものを着用しています。来客が来た場合でもユニフォームなのでそのままの格好で対応することも多いです。洗濯は自宅で行う場合もあれば、クリーニング業者にお願いできる場合もあります。

筆者はファッションセンスがゼロなのでこのタイプの職場は大助かりですが、数枚のユニフォームを着まわすので色合いが抜けやすく、恰好だけはすぐに新人を卒業できます。また作業着で食事するのに抵抗がある場合には、少し戸惑うかもしれません。

ライトケミカル工業の作業着(出典:ライトケミカル工業2024卒採用情報

太陽ホールディングスの作業着(出典:太陽HD研究開発2daysインターン

2, 実験時のみ作業着を着用する場合

大学の研究室のように白衣を羽織って実験する職場もあり、この場合実験室に入る都度白衣を着るスタイルとなります。白衣のデザインは、様々で既製品に会社名を入れている場合やオリジナルデザインの白衣を作っている会社もあるようです。私服の上から着用するので着替える必要はなく、ランチでの外出や午後出張などが頻繁にある人は、便利なスタイルです。

この場合、他の人が実験中なのか事務作業・会議中なのかが判別でき、話しかけるタイミングを図りやすいことが特徴かもしれません。また筆者の見てきた限りでは、欧米の企業の研究所は白衣を実験時のみ着用するスタイルが多いです。

資生堂の白衣

3, 1と2が職種によって異なる場合

1と2の中間として職種によって作業着を常時着用する・しないが異なる職場があります。実験が多い職種では、常に作業着を着用し時々実験を見に行く職種では、白衣を羽織って実験室に入室することになります。

 

ジャケット作業着の機能

白衣についてはケムステで何度か紹介しているので、ここではジャケット型の作業着のデザインについて紹介します。共通点の紹介となるので、細かい点は会社によって異なります。まず、ほとんどがファスナーで前を閉めるタイプで、左と右の胸やお腹にポケットがあることが多く収納性に優れています。片腕にはペンを収納できるスペースがあり、ペンを持ち忘れること無いようなデザインになっています。夏冬用を使い分けている場合には、生地や通気性の面で違いがあることが多いです。化学実験では静電気で溶媒が着火する事故も想定されるため静電気帯電防止の作業服を使用します。

ジャケット作業着の一例(出典:ミドリ安全

作業着か白衣を選択できることはほとんどなく、職場のルールとしてどちらかを着用することになりますが、どちらも健康被害や事故の防止に役立つ基本的な装備であることは間違いありません。これから就職する学生の皆さんには、中高生の入学式の朝に初めて制服に袖を通す時のような希望に満ちた気持ちを、入社後作業服を着る時に思い出してほしいと思います。

関連書籍

[amazonjs asin=”4621306545″ locale=”JP” title=”教育現場のための安全な化学実験と事故事例”] [amazonjs asin=”4274222756″ locale=”JP” title=”はじめての基礎化学実験”]

実験保護具に関するケムステ過去記事

Avatar photo

Zeolinite

投稿者の記事一覧

ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

関連記事

  1. 日本国際賞受賞者 デビッド・アリス博士とのグループミーティング
  2. シクロヘキサンの片面を全てフッ素化する
  3. 【酵素模倣】酸素ガスを用いた MOF 内での高スピン鉄(IV)オ…
  4. 細胞の中を旅する小分子|第三回(最終回)
  5. 有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~
  6. TMSClを使ってチタンを再生!チタン触媒を用いたケトン合成
  7. 電話番号のように文献を探すーRefPapers
  8. 無限の可能性を秘めたポリマー

注目情報

ピックアップ記事

  1. キラルな八員環合成におすすめのアイロン
  2. 芝哲夫氏死去(大阪大名誉教授・有機化学)
  3. ライバルのラボで大発見!そのときあなたはどうする?
  4. 加藤 昌子 Kato Masako
  5. 有機化学の理論―学生の質問に答えるノート
  6. 合成小分子と光の力で細胞内蛋白質の局在を自在に操る!
  7. 【書籍】機器分析ハンドブック1 有機・分光分析編
  8. 100年前のノーベル化学賞ーリヒャルト・ヴィルシュテッター
  9. 有機合成化学協会誌2018年8月号:触媒的不斉全合成・分子ローター型蛍光核酸・インドロキナゾリンアルカロイド・非対称化・アズレン・ヒドラゾン-パラジウム触媒
  10. 2017卒大学生就職企業人気ランキングが発表

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2022年12月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2024年12月号:パラジウム-ヒドロキシ基含有ホスフィン触媒・元素多様化・縮環型天然物・求電子的シアノ化・オリゴペプチド合成

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年12月号がオンライン公開されています。…

「MI×データ科学」コース ~データ科学・AI・量子技術を利用した材料研究の新潮流~

 開講期間 2025年1月8日(水)、9日(木)、15日(水)、16日(木) 計4日間申込みはこ…

余裕でドラフトに収まるビュッヒ史上最小 ロータリーエバポレーターR-80シリーズ

高性能のロータリーエバポレーターで、効率良く研究を進めたい。けれど設置スペースに限りがあり購入を諦め…

有機ホウ素化合物の「安定性」と「反応性」を両立した新しい鈴木–宮浦クロスカップリング反応の開発

第 635 回のスポットライトリサーチは、広島大学大学院・先進理工系科学研究科 博士…

植物繊維を叩いてアンモニアをつくろう ~メカノケミカル窒素固定新合成法~

Tshozoです。今回また興味深い、農業や資源問題の解決の突破口になり得る窒素固定方法がNatu…

自己実現を模索した50代のキャリア選択。「やりたいこと」が年収を上回った瞬間

50歳前後は、会社員にとってキャリアの大きな節目となります。定年までの道筋を見据えて、現職に留まるべ…

イグノーベル賞2024振り返り

ノーベル賞も発表されており、イグノーベル賞の紹介は今更かもしれませんが紹介記事を作成しました。 …

亜鉛–ヒドリド種を持つ金属–有機構造体による高温での二酸化炭素回収

亜鉛–ヒドリド部位を持つ金属–有機構造体 (metal–organic frameworks; MO…

求人は増えているのになぜ?「転職先が決まらない人」に共通する行動パターンとは?

転職市場が活発に動いている中でも、なかなか転職先が決まらない人がいるのはなぜでしょう…

三脚型トリプチセン超分子足場を用いて一重項分裂を促進する配置へとペンタセンクロモフォアを集合化させることに成功

第634回のスポットライトリサーチは、 東京科学大学 物質理工学院(福島研究室)博士課程後期3年の福…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP