薬品を取り扱う化学実験では普段着そのままで作業を行うことは危険であり、何かしらの作業着を着て仕事を行います。この記事では、企業における作業着について見ていきます。
作業着事情
学生実験や大学の研究室では私服の上に白衣を羽織って実験することが多いと思いますが、企業においては作業着で実験しているケースが多いと感じられます。そのため具体的に作業着の着用例について筆者の経験を元にまとめてみました。
1, 作業着とユニフォームを兼用している場合
作業着がユニフォームを兼ねている職場が日本の企業ではよくあります。就活サイトにて社員さんのインタビュー記事が載せられていることは良くありますが、その写真で作業着で実験しているならば、このスタイルを採用している職場です。基本的には、朝出社して退社するまでそのユニフォームを着て過ごします。ジャケットとパンツ、安全靴が一般的なユニフォームのセットで、規模が大きい大企業ではオリジナルの作業着を作っている場合も多いです。着替えは社内の更衣室で行えるため、ラフな格好で通勤することが可能です。ただし車通勤がメインの事業所では、自宅から作業着を着用して出勤する場合もあります。ユニフォームを兼用しているため、実作業を行わない研究・製造部門以外の社員も同じものを着用しています。来客が来た場合でもユニフォームなのでそのままの格好で対応することも多いです。洗濯は自宅で行う場合もあれば、クリーニング業者にお願いできる場合もあります。
筆者はファッションセンスがゼロなのでこのタイプの職場は大助かりですが、数枚のユニフォームを着まわすので色合いが抜けやすく、恰好だけはすぐに新人を卒業できます。また作業着で食事するのに抵抗がある場合には、少し戸惑うかもしれません。
2, 実験時のみ作業着を着用する場合
大学の研究室のように白衣を羽織って実験する職場もあり、この場合実験室に入る都度白衣を着るスタイルとなります。白衣のデザインは、様々で既製品に会社名を入れている場合やオリジナルデザインの白衣を作っている会社もあるようです。私服の上から着用するので着替える必要はなく、ランチでの外出や午後出張などが頻繁にある人は、便利なスタイルです。
この場合、他の人が実験中なのか事務作業・会議中なのかが判別でき、話しかけるタイミングを図りやすいことが特徴かもしれません。また筆者の見てきた限りでは、欧米の企業の研究所は白衣を実験時のみ着用するスタイルが多いです。
資生堂の白衣
3, 1と2が職種によって異なる場合
1と2の中間として職種によって作業着を常時着用する・しないが異なる職場があります。実験が多い職種では、常に作業着を着用し時々実験を見に行く職種では、白衣を羽織って実験室に入室することになります。
ジャケット作業着の機能
白衣についてはケムステで何度か紹介しているので、ここではジャケット型の作業着のデザインについて紹介します。共通点の紹介となるので、細かい点は会社によって異なります。まず、ほとんどがファスナーで前を閉めるタイプで、左と右の胸やお腹にポケットがあることが多く収納性に優れています。片腕にはペンを収納できるスペースがあり、ペンを持ち忘れること無いようなデザインになっています。夏冬用を使い分けている場合には、生地や通気性の面で違いがあることが多いです。化学実験では静電気で溶媒が着火する事故も想定されるため静電気帯電防止の作業服を使用します。
作業着か白衣を選択できることはほとんどなく、職場のルールとしてどちらかを着用することになりますが、どちらも健康被害や事故の防止に役立つ基本的な装備であることは間違いありません。これから就職する学生の皆さんには、中高生の入学式の朝に初めて制服に袖を通す時のような希望に満ちた気持ちを、入社後作業服を着る時に思い出してほしいと思います。