化学が好きだからという学生さん、素晴らしいです。すぐ研究に戻りましょう!
卒業のため、就職のため、教授が怖いから、なんとなく、、、色んな理由があると思います。
就職したら役にも立たない研究テーマなんて頑張ってやる必要あるの?卒業したら研究続けるつもりないよ?という方もいるかもしれないです。
でも本当に役に立たないでしょうか?もちろん研究そのものが役に立てば良いですが、研究の過程で得たものにはもっと普遍的な価値がある、言い換えればスキルアップにつながるというのが筆者の考えです。
はじめまして、KeNといいます。
大学教員をやっていましたが今は企業研究者として働いています。
筆者自身最初は「なんとなく」研究していました。ただ教員を経て、特に企業に移ってから、研究の過程で得た能力を意識する場面が増えました。そして研究による教育の価値が少しでも広まればなと思いこの場をお借りしました。
研究を通じて得られる能力は数多ありますが、ここでは3個に絞って筆者の考えを書きたいと思います。
(注: 研究に身を捧げろ、というやりがい搾取の意図は全くありません。ただ学費や時間を費やすなら研究室や大学の資産も使い倒してスキルアップしたほうがええやん、というのが筆者のスタンスです。また筆者は大学院生にはもっと金銭的サポートがあるべきだと思いますが、それは別の機会にしたいと思います。)
(大学院で身につけるべきスキルとして書かれた加納先生のこちらのnoteもとても参考になります )
仮説構築、検証の経験
課題を定め、仮説を立て、調査を行い、アウトプットにつなげる。研究者に限らずビジネスパーソンであれば誰でも欲しい能力でしょう。「仮説思考」と検索すれば書籍や多くのウェブサイトが見つかります。
研究はこのプロセスを体験し身につけられる活動ではないでしょうか?
例えば収率を上げるという課題に対して反応機構や副反応に関する仮説を立て、実験して検証し、最終的には研究室内や学会、論文で発表を行う、という具合です。
この過程には実はもう一つ良いことがあります。自分で考えた仮説・実験がうまくいくととても楽しいです。どうせやるなら楽しいほうが良いですよね。
表面的な知識・理解からの脱却
検索すれば膨大な情報が得られるため理解・経験した気になることは簡単です。ただ裏を返せば表面的な理解で思考が止まってしまう危険もあります。
書籍「イシューからはじめよ」でも表層的な理解からの脱却が論じられており、研究者だから深い理解が必要というわけではないようです。
研究を進めるということは、研究室の知見や関連文献の情報から必要な情報を自ら抽出し、自分の研究テーマという箱の中で混ぜ合わせ新たな発見を得るプロセスでもあります。この経験を繰り返すことでバラバラに見える情報からその関連性や軽重を推し量る素地が作られると思っています。氾濫する情報の奥に何があるか、何と関連しているのかを予測するためのトレーニングとも言えるでしょう。
幸いあなたの研究テーマはあなただけのもの、つまりそのテーマを通じて得られる経験はあなただけのものです。良い機会だと思いませんか?
理解される、興味をもたれるプレゼン
皆さんは学会発表と就活の面接で同じ発表をしますか?
Yesの方、聞き手の背景知識や発表に求めているものを考えてみてください。例えば面接官があなたの研究分野に明るくない場合、学会発表と同じでは面接官はイントロで脱落でしょう。興味が薄れ最終的には…という可能性もありますね。
もしあなたの努力を正当に評価してほしいと思うのであれば、相手の理解度や求める内容(化学的な議論がしたいのか、あなた自身の能力を見たいのか)に応じてプレゼンの中身を変える必要があります。研究の場を離れ、評価してほしいものが「自社製品」や「新規事業案」にかわった場合も同じです。相手に興味をもってもらえなければ始まりません。
研究室内での議論は頻度も高くその練習に最適です。単に結果や関連研究を並べるのでなく、そこから何が言えるのか、何が面白いのか、相手に理解され興味をもたれるプレゼンを目指しても良いのではないでしょうか?
おわりに
上記はとても教員的かつ主観たっぷりの意見です。また先述のように学生の方に押し付ける意図は全くありません。
ただ研究やる意味なんてないやんというのは少し違って、座学では得難い、かつ汎用性の高い能力を得る良い機会なのではと思います。少なからず就活には役にたつはずですし、転職や転職先で役に立つことは実証済みです笑