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化学者のつぶやき

タンパク質の定量法―ブラッドフォード法 Protein Quantification – Bradford Protein Assay

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原理

ブラッドフォード法(Bradford Protein Assary)は BCA法と並び、もっともよく使われるタンパク質の濃度定量法である。

クマシーブリリアントブルー(CBB) G-250という色素がタンパク質の塩基性・芳香族アミノ酸側鎖と相互作用する結果、その吸収ピークが465 nm→595 nmへと変化すること(メタクロマジー)を応用している。

長所

  • 測定範囲は0.01-2 mg/mL、感度が高い
  • 操作がきわめて簡単、迅速
  • キレート剤・還元剤の影響を受けにくい

短所

  • 界面活性剤の影響は受けやすい
  • 反応液が酸性であるため、脂質を含むサンプルは沈殿を生じやすい
  • タンパク質種によって結果が変動する
  • 色素がガラスや石英のキュベットに吸着する

プロトコル

Bradfordアッセイキットは各社から市販されているが、下記のレシピにて試薬は調製可能である。

Bradford試薬の調製法

CBB G-250 (200 mg)をエタノール(100 mL)中に攪拌して良く溶かす。その後85%リン酸(200 mL)を加える。これをMQ水へと加えて、2 Lにする。この溶液に含まれる青色不溶成分を、脱脂綿や#1ろ紙でろ過して除く。冷蔵庫で遮光保存する。

プロトコル
  1. サンプル(100 μL)に対し、Bradford試薬を1mL加え、ボルテックス攪拌する
  2. 5~30分の間に595 nmの吸光を測定する。
  3. BSAを標準試料として希釈系列と検量線を作成し、それをもとに濃度を定量する。

膜タンパク質などの場合、可溶化するために1M NaOH水溶液の添加が推奨されている[2]。

関連動画

 

 

参考文献

  1. ”総タンパク質の定量法” 鈴木祥夫、ぶんせき 2018, 1, 2. [PDF]
  2. “[6] Quantification of protein” Stoscheck, C. M. Met. Enzymol. 1990, 182, 50. doi:10.1016/0076-6879(90)82008-P
  3. “Comparison of five methods for determination fo total plasma protein concentration” Okutucu, B.; Dincer, A.; Habib, Ö.; Zihnioglu, F. J. Biochem. Biophys. Methods 2007, 70, 709. doi:10.1016/j.jbbm.2007.05.009
  4. “A Rapid and Sensitive Method for the Quantification of Microgram Quantities of Protein Utilizing the Principle of Protein-Dye Binding” Bradford, M. M. Anal. Biochem. 1976, 72 (1–2), 248–254. doi:10.1006/abio.1976.9999
  5. ”Linearization of the Bradford Protein Assay Increases Its Sensitivity: Theoretical and Experimental Studies” Zor, T.; Selinger, Z. Anal Biochem. 1996, 236, 302. doi:10.1006/abio.1996.0171

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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