祝連載ほぼ1周年(この記事が出る頃)!どうにか打ち切られずに続けることができました。コロナ渦中から始まったこのエッセイ,改めて国内編から今までを振り返っていただくのも面白いかもしれません。最初の方が内容が詰まってて明らかに面白いんだよなぁ。
ポンコツシリーズ
第13話:ポンコツ博士,コロナにかかる
ポンコツ博士,濃厚接触者になる
Defenceも無事終了し,晴れてPh.DとなったD5生らを祝った後日,仕事の引き継ぎを終えた。遂に当ラボも新体制でスタートだ。筆者は引き続き生物活性評価に必要な化合物の量上げと新規化合物の合成を進めた。そんなある日,新D5のラボマネージャーが学会に行った後の抗原検査でコロナpositiveになり,1週間ほどラボを離れることになった。筆者も含めたラボメンらは彼に会っておらず,濃厚接触者ではなかったので特に気にしていなかった。しかし,研究所内で立て続けにコロナ陽性者が発生して当ラボからもコロナ陽性者が発生した。筆者はこのラボメンとはガッツリ雑談していたので,濃厚接触者となった。
アメリカは経済活動優先であり「自分の体調ぐらい筋肉でどうにかしなさい」感覚である。濃厚接触者には抗原検査キットが無償配布され,5日後に検査をして陽性または症状があった場合,コロナ感染チームに連絡してくださいという指示が出た。したがって,体調は全く問題なかったため,筆者は5日後までの検査日まで普通に働いた。もし待機していたら留学人生の無駄になりそうだったので良かった。
ポンコツ博士,陽性患者になる
5日経った日,朝起きて喉が痛かった筆者は「これはもしや…」と思いながら抗原検査キットを使用した所,positiveの結果が出た。申し訳ないことに前日に短期留学中だった日本の大学生の送別会を開催したため,そこに居た人たちにお詫びと注意の連絡をして自宅で待機することになった。
筆者の場合,喉の痛みと若干体が熱いだけで普通の風邪と変わりなかった。そこまで体調に問題がないのに外出できないのは究極に暇だった。こういう時に惰眠を貪れば良いのだが,筆者は院生時代に研究ゾンビと化したため,長時間の睡眠がとれない体になっていた。じゃあ,暇なんだったらその間に論文を読め!とお叱りを受けるかもしれないが,筆者の愛用するMacbook Pro(10年目)もコロナウイルスにかかってしまったのか,研究所のwebに全くアクセスできなくなり,デスクワークもできなくなった。また,研究所の日本人研究者らと大谷Tシャツデーにエンゼルスの野球観戦する予定がなくなり,非常に悔しかった。
筆者は不労所得で優雅に生きていくセレブニートになることが人生最大の夢であるが,日本の大学院の有機化学分野で主な教育システムであるソルジャー化からのゾンビ化を経て暇な生活を過ごす行為がかなり辛くなっており,ニートの才能を潰されていたことが明らかになった。ちなみに本エッセイの執筆は最近の筆者における暇潰しの最上級である(仕事は振らないで)。どうやら筆者は暇すぎると非現実的な妄想を垂れ流し,しかしやけに真面目なことを考えるタイプのようだ。
ポンコツ薬剤師,セルフメディケーションする
…上述の冗談を書くほどあまりにも暇だったため,どのみち早く回復するしか選択肢がないと悟った筆者は,感染に対する基本に戻って筆者渾身のセルフメディケーション力でコロナとの戦いに挑んだ(手洗い,うがい,マスク,安静等)。また,オミクロン株に対応するため,筆者の必殺オプションとして3種の神器を用意して万全を期した。以下に,3種の神器を記す(*個人の感想です)。
① Tylenol・・・成分名:アセトアミノフェン 日本ではカロナールで有名だ。もしかすると,ジェネリック問題で日本では入手困難かもしれない。アメリカでは,なんと成分量500mgのTylenolが普通に薬局で買えるので購入した。突然だが,薬剤師の卵の薬学生に問題だ。アセトアミノフェン 500 mg錠はどこに保存しなければならないか?(正解は下記)
② Gatorade・・・本場のアメリカでは様々な種類があり,安い。水並みに安かったため,症状悪化で発熱時の脱水に備えて1Lサイズを4本を購入し,いつでも水分補給できるように備えた。日本ならOS-1かポカリを買うだろう。
③ はちみつきんかん+VC3000のど飴・・・カリフォルニア州であれば日本でスタンダードな飴ちゃんは日系スーパーで買える(5ドルくらいするが)。龍角散でもよかったが,コロナ回復後に舐めることも考慮してノー◯ルさんの飴にした。
ポンコツ発症者,回復する。
三種の神器を駆使することで症状発症を最小限に抑えることができた。最初の2日間だけ喉がかなり痛かったものの発熱は大したことなく,寝る前にアセトアミノフェン500mgを1錠投入するだけで心地よい睡眠が得られた。3日目には,軽い咳を残してほぼ全快した。早期回復の要因として,筆者はここ数ヶ月,仕事終わりに24時間営業のジムのプールに週3−4ペースで通い詰め,1時間ほど歩いたり泳いだりして体力をつけながらダイエットに取り組んでいたことも功を奏したのだろう(家のバスルームが古すぎてお湯が出ないから仕方ない)。
コロナになった後の感想として,セルフメディケーションの意識をもっと日本に浸透させるべきだと実感した。もちろん我慢しすぎると元も子もないが,日本では,クーラーをつけっぱなしで家でいくらでもゴロゴロできる。一方,アメリカは国民皆保険でないことが影響するのか,おじいさんやおばあさん,若い女性の方もジムに行って結構ハードな筋トレや運動をして普段から健康を重視している(カリフォルニアだけかもしれないし,食べる量も半端ないのでムキムキなのか太っているのか分からない人もいるが)。ただ,ルールを守った上,自分の意思を持ってコロナに対して必要以上に怯えていないのは確かであり,その根本には自分の体力に自信があるからであろう。
世の中における個人的な悩みは本人の強い意志と筋肉が解決する可能性を悟った。…いけない,暇すぎてまた変なことを考えてしまった。
ポンコツ患者,脱走する。
話が脱線したので話を戻すが,体調はほぼ完治したとはいえ,positive状態でホームステイ,ルームシェアの形態で他人と暮らしている。トイレやキッチンはルームメイトと共用していることから,ずっと籠もって身内でもない人のコロナリスクを上げることは良い状況なのか…?と自問自答するようになった。
最終的に,筆者は,彼らに迷惑をかけたくないので最低限のバストイレ以外は外出し,愛車に乗って海に向かうことに決めた(カリフォルニアはコロナでも外出OKです)。規制が緩和されて少しずつ動きやすくなりつつある日本の方々も,元気なのに何もできない時は公共交通機関や共同利用場所の利用を避けつつ,海や川(河川敷)に出かけて一万歩程度の散歩と日光浴でもしよう(山はダメだ,酸素が薄い)。日本でも河川敷や海岸なら一人になれる場所を確保できるだろう(都会は知らん)。
〜〜続く〜〜
関連リンク・余談
いらすとや :アイキャッチ画像の素材引用元。
アセトアミノフェンの含有量:日本でアセトアミノフェン錠は200 mgと300mgが定番規格であるが,500 mgも存在する(錠剤はデカめでアサコールとかと同じかちょい小さい・整形外科から関節系の痛み止めとして処方が出ていたイメージ)。500 mgはなんと劇薬扱いになるため,他の医薬品と区別して貯蔵・陳列する必要がある。試験問題にするにはちょっとマニアックな気もするが,国家試験や卒業試験の実務分野等でこれがもし出題されたらポンコツ神として崇めてほしい。*劇薬は白地に赤枠、赤字で品名及び「劇」の文字の表示が必要。