[スポンサーリンク]

一般的な話題

有機合成化学協会誌2022年9月号:π-アリルパラジウム・ポリエンマクロラクタム・Sirtuin蛍光プローブ・安定ラジカルカチオン・金属-硫黄クラスター

[スポンサーリンク]

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2022年9月号がオンライン公開されました。

学会シーズンですね。勉強の秋ということで、学会での勉強に合わせて有機合成化学協会誌を使って勉強しましょう。

今月号も充実の内容です。

キーワードは、「π-アリルパラジウム・ポリエンマクロラクタム・Sirtuin蛍光プローブ・安定ラジカルカチオン・金属-硫黄クラスターです。

今回も、会員の方ならばそれぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。

巻頭言:日米の地方大学での研究経験から

今月号の巻頭言は、愛媛大学大学院理工学研究科 井原 栄治 教授による寄稿記事です。日米の地方大学の違い、また地方大学の現状について考える巻頭言です。オープンアクセスですのでぜひ。

π-アリルパラジウムの極性転換による二酸化炭素を用いた触媒的カルボキシル化の開発

美多 剛1,*樋口裕紀2、佐藤美洋2,*

1* 北海道大学化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)

2* 北海道大学大学院薬学研究院

π-アリルパラジウム種の極性転換が鍵となる、二酸化炭素からの多種多様なカルボン酸の合成が詳細に解説されております。インドール環を壊したり(脱芳香族化)、2つの二酸化炭素を一挙に導入したりと、非常にユニークな反応ばかり。得られたカルボン酸を用いた生物活性化合物の合成も紹介されており、読み応えのある内容となっています。ぜひご一読を!

多能性幹分子としての天然由来ポリエンマクロラクタム:その化学と生物活性,および人工多能性幹分子創製へ向けた試み

叶 直樹*

*星薬科大学薬学部・医薬品化学研究所

筆者が開発に取り組んでいる人工多能性幹分子(iPS分子)のプロトタイプの合成に関する総合論文。ポリエンマクロラクタム天然物に対する合成デザインのコツなど、非常に学ぶことの多い内容です。

Sirtuin蛍光プローブの創製とそれを活用した論理的阻害剤開発および探索

川口充康、中嶋雄哉、中川秀彦*

*名古屋市立大学大学院薬学研究科・薬化学分野

SIRTのケミカルバイオロジー研究に大きく貢献しうる1段階蛍光SIRT検出プローブの開発に関する総合論文です。細胞イメージング、ペプチド性阻害剤開発、アイソザイム選択的蛍光プローブライブラリー構築、スクリーニング小分子阻害剤までと、幅広い総合論文です。

安定ラジカルカチオン種が示す奇抜な性質と機能

鈴木修一1*小嵜正敏2直田 健1

1*大阪大学大学院基礎工学研究科

2大阪公立大学大学院理学研究科

電子供与性の高い複素環構造を基盤として種々のレドックス部位や常磁性ラジカルユニットを組みあわせる巧みな分子設計によって、数多くの高安定性ラジカルカチオン種を創り出しています。可逆な熱応答性を示す誘導体の動画は楽しめます。

有機金属化学に関わる金属-硫黄クラスターによる小分子の活性化および変換反応

谷藤一樹1、大木靖弘1*清野秀岳2*

1*京都大学化学研究所

2*秋田大学秋田大学教育文化学部

本総合論文では,「金属-硫黄クラスター」を触媒として用いた不活性小分子の分子変換反応が記されています。クラスターが多段階還元を司ることで達成される窒素や二酸化炭素の還元反応に加え,これらクラスターを触媒として利用した種々の有機合成反応がわかりやすく紹介されています。

Review de Debut

今月号のReview de Debutは1件です。オープンアクセスですのでぜひ。

ギ酸塩を原料とする二酸化炭素ラジカルアニオンの発生と光反応への利用 (京都大学大学院薬学研究科)松本 晃

感動の瞬間:楽しき出会い 

今月号の感動の瞬間は、九州大学先導物質化学研究所 友岡 克彦 教授による執筆記事です。
「行き当たりばったり」なのか、必然的だったのか、結局のところわからないのですが、筆者も感動に巡り会えたときはどうして巡り会えたのか考えてしまいます。オープンアクセスです。

これまでの紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズを参照してください。

関連書籍

[amazonjs asin=”4759819320″ locale=”JP” title=”企業研究者たちの感動の瞬間: モノづくりに賭ける夢と情熱”] [amazonjs asin=”4759810803″ locale=”JP” title=”化学者たちの感動の瞬間―興奮に満ちた51の発見物語”]

Avatar photo

めぐ

投稿者の記事一覧

博士(理学)。大学教員。娘の育児に奮闘しつつも、分子の世界に思いを馳せる日々。

関連記事

  1. 向かう所敵なし?オレフィンメタセシス
  2. 自動車の電動化による素材・化学業界へのインパクト
  3. 単一分子の電界発光の機構を解明
  4. ルイスペア形成を利用した電気化学発光の増強
  5. 配位子が酸化??触媒サイクルに参加!!
  6. 有機化学を俯瞰する –古代ギリシャ哲学から分子説の誕生まで–【前…
  7. カーボンナノベルト合成初成功の舞台裏 (2)
  8. アメリカ化学留学 ”大まかな流れ 編”

注目情報

ピックアップ記事

  1. ノーベル受賞者、東北大が米から招請
  2. 化学物質はなぜ嫌われるのか
  3. コンピューターが有機EL材料の逆項間交差の速度定数を予言!
  4. 下村 脩 Osamu Shimomura
  5. エリック・ジェイコブセン Eric N. Jacobsen
  6. 糖鎖合成化学は芸術か?
  7. 仏サノフィ・アベンティス、第2・四半期は6.5%増収
  8. 『分子標的』に期待
  9. ジメチル(2-ピリジル)シリル化合物
  10. 有機合成者でもわかる結晶製品生産の最適化と晶析操作【終了】

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2022年9月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930  

注目情報

最新記事

日本化学連合シンポジウム 「海」- 化学はどこに向かうのか –

日本化学連合では、継続性のあるシリーズ型のシンポジウムの開催を企画していくことに…

【スポットライトリサーチ】汎用金属粉を使ってアンモニアが合成できたはなし

Tshozoです。 今回はおなじみ、東京大学大学院 西林研究室からの研究成果紹介(第652回スポ…

第11回 野依フォーラム若手育成塾

野依フォーラム若手育成塾について野依フォーラム若手育成塾では、国際企業に通用するリーダー…

第12回慶應有機化学若手シンポジウム

概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大学理工学部・…

新たな有用活性天然物はどのように見つけてくるのか~新規抗真菌剤mandimycinの発見~

こんにちは!熊葛です.天然物は複雑な構造と有用な活性を有することから多くの化学者を魅了し,創薬に貢献…

創薬懇話会2025 in 大津

日時2025年6月19日(木)~6月20日(金)宿泊型セミナー会場ホテル…

理研の研究者が考える未来のバイオ技術とは?

bergです。昨今、環境問題や資源問題の関心の高まりから人工酵素や微生物を利用した化学合成やバイオテ…

水を含み湿度に応答するラメラ構造ポリマー材料の開発

第651回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院工学研究科(大内研究室)の堀池優貴 さんにお願い…

第57回有機金属若手の会 夏の学校

案内:今年度も、有機金属若手の会夏の学校を2泊3日の合宿形式で開催します。有機金…

高用量ビタミンB12がALSに治療効果を発揮する。しかし流通問題も。

2024年11月20日、エーザイ株式会社は、筋萎縮性側索硬化症用剤「ロゼバラミン…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー