日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープンアクセスとなりました 31-3号 (2021年08月発行)の紹介です。
本号では、山口潤一郎代表によるケムステ20年の運営に関する裏話が掲載されています!ケムステ読者の皆さん、必読です!
各項目のタイトルおよび画像から該当記事へ飛べます (新しいタブで開きます) ので、隅々までご覧ください。
■巻頭言
科学的評価と政治的判断
松木 則夫*
*東京大学 相談支援研究開発センター
本号の巻頭言は、東京大学の松木則夫名誉教授 (元 日本薬学会会頭) よりご寄稿いただきました。世界水準と比較した日本のパンデミック対応 (政治的判断) と専門家の役割 (科学的評価) が述べられています。専門家でないアカデミアや学生の役割についても、我々は改めて考えてみる必要がありそうです。
■創薬最前線
中外製薬の創薬研究
飯倉 仁*
*中外製薬株式会社 研究本部
Roche社との戦略的アライアンスを活かし、革新的な抗体や低分子の新薬を創出している中外製薬の創薬研究について飯倉研究本部長にご紹介いただきました。現在取り組んでいる次世代抗体や中分子創薬等の技術ドリブン創薬の推進、外部連携の強化、デジタル技術の活用等の 2030 年に向けた新成長戦略について概説されています。ぜひご一読ください。
■WINDOW
大阪大学免疫学フロンティア研究センターにおける新しい産学連携とヒト免疫学研究の推進
高木 昭彦*
*大阪大学 免疫学フロンティア研究センター
大阪大学免疫学フロンティア研究センター (IFReC) のヒト免疫学を中心とする研究活動についての紹介記事です。センターの運営にあたり IFReC 研究者の自由な研究活動を可能とする製薬会社との包括連携は、これまでにない独自の産学共同研究システムとして大変興味深いものです。ぜひ、ご一読下さい。
■WINDOW
グローバルファーマが本邦のアカデミア、スタートアップ企業に期待すること
本田 孝雄*
*日本イーライリリー株式会社 エマージングテクノロジーアンドイノベーション ジャパンアンドアジア
イーライリリー社でオープンイノベーション活動を推進している著者が、その活動を紹介されています。加えて、国内のアカデミア、スタートアップへの期待についても経験に基づいて率直に述べられています。研究成果をビジネスにつなげる上で示唆に富む内容となっていますので、ぜひご一読ください。
■DISCOVERY
FBDD を活用した非ヒドロキサム酸型新規 LpxC 阻害物質の創出
牛山 文仁*, 山田 洋介*, 松田 洋平*, 美馬 将司*, 杉山 寛行**
*大正製薬株式会社 医薬研究本部 Discovery研究所
**大正製薬株式会社 学術センター メディカルインフォメーショングループ
多剤耐性グラム陰性菌に対して新規作用機序を有する感染症治療薬が切望されていますが、これまで開発されてきたヒドロキサム酸型 LpxC 阻害剤は構造由来の毒性懸念から断念されています。本項は、FBDDを用いた毒性懸念の少ない非ヒドロキサム酸型 LpxC 阻害剤 (化合物17) の創薬成功例の紹介です。
■DISCOVERY
経口型低分子GnRH受容体拮抗薬TAK-385(レルゴリクス)の創製
三輪 憲弘*, 飛髙 武憲**, 日下 雅美***, 北崎 智幸****
*スペラファーマ株式会社 事業管理本部 営業部
**武田薬品工業株式会社 (退職)
***株式会社新日本科学
****Axcelead Drug Discovery Partners 株式会社 事業推進 Project Managementリード
本論文は、研究の開始から 20 年を遥かに超える歳月を経て医薬品承認に至った低分子創薬の物語です。最適化の基本を守り、地道なステップを重ねて最終化合物を見出しています。まさにメドケムの職人技をご堪能ください。本文最後の下りは読む人の心にグッと来るのではないでしょうか。
■SEMINAR
ユビキチンコード研究の最前線
佐伯 泰*, 遠藤 彬則*, 大竹 史明**
*東京都医学総合研究所 蛋白質代謝プロジェクト
**星薬科大学 先端生命科学研究所
タンパク質分解薬 PROTAC の作用機序には、タンパク質「ユビキチン」が数珠状に連結したユビキチン鎖が関与しています。このユビキチン鎖は多様であり、タンパク質分解をはじめ様々な細胞機能を調節していることが、近年明らかになってきました。本セミナーでは、ユビキチンコード研究の最前線、特に解析法について詳しく記載されています。
■SEMINAR
鏡の中の創薬シーズ
大石 真也*
*京都薬科大学 薬品化学分野
通常のスクリーニングを鏡の中の世界で行うと、何ができるでしょうか?鏡像タンパク質 (D–タンパク質) を用いた鏡像スクリーニングによって、ヒット化合物を取得します (図左側)。次に、その鏡像体を化学合成すれば、その化合物は通常のタンパク質 (L–タンパク質) に作用するはずです (図右側)。本稿では、鏡像スクリーニングによって、身の回りには存在しない化合物を創薬シーズとして利用する試みが記述されています。
■COFFEE BREAK
シャボン玉のメカニズムで膨らむグルテンフリーパン
矢野 裕之*
*国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門 食品加工・素材研究領域
農研機構の矢野裕之博士らによってグルテンフリー、無添加でしかも美味しい 100% 米粉パンが開発され、そのフワフワな食感ときめ細やかな気泡は、「ピッカリングフォーム」であることが証明されました。身体に優しい米粉パンを味わいながら、COFFEE BREAK をお楽しみください。
■REPORT
化学ウェブサイトChem-Station:20年間の運営・管理と今後の展望
山口 潤一郎*
*早稲田大学 理工学術院
いまやケミストで知らない人はいないケムステを 22 年前 (2000 年) に立上げ、学生から企業研究者までを惹き付ける、魅力あるコンテンツを創り出し続けるサイト運営と今後の展望についてお聞きしました。ケムステ読者の皆様、代表のメッセージをぜひ一読ください。
関連書籍
本号の「BOOKS紹介」より
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MEDCHEM NEWS 紹介記事バックナンバー
・MEDCHEM NEWS 31-2号「2020年度医薬化学部会賞」
・MEDCHEM NEWS 31-1号「低分子創薬」
・MEDCHEM NEWS 30-4号「ペプチド化学」
・MEDCHEM NEWS 30-3号「メドケムシンポ優秀賞」