ガラス器具は、化学実験に必要不可欠なものであり、実験の目的に応じて様々な種類のガラス器具を使います。この記事では実験ガラス器具を製造するメーカーにスポットライトを当てて各社の特徴や製作された動画を紹介します。
背景
無類のガラス器具好きの筆者は、購入する予定が無くてもガラス器具のカタログを眺めて、特殊な形をしているものに対しては液体がどう流れるのか想像して楽しんでしまいます。また複雑な形のガラス器具は、技術者の手で一つ一つ作られる芸術品でもあり、購入して家に飾っておきたくなります。そんなガラス器具について、メーカーごとにどのような特色があるのかまとめてみました。各社渾身のYoutube映像も同時に紹介します。
旭製作所
製品にAGのエンブレムを冠している旭製作所では、ラボスケールのガラス器具からプラントで使うような大型の器具を特注しています。ホームページには多数の大型リアクターが掲載されており、ガラスプラント製品海外輸出量No.1とホウケイ酸ガラスと石英ガラスの製作国内Only Oneをアピールされています。汎用の器具も一通り製作されており、固体試料の投入をコック操作で行うことができるエアレスフィードコックを新製品としてアピールされています。
また、Webでオーダーメイドの装置の見積依頼ができるAG!⾒積システムを運用されており、より簡単にガラス器具の手配や製品情報を取得できるようになっています。
公式動画では、工場での製作風景と特集の大型の器具を紹介しており、高い技術力があることが分かる内容になっています。
柴田科学株式会社
柴田科学のガラス器具には、社名とロゴが目立つところに付加されています。取り扱うガラス器具は幅広く、公定分析で使うガラス器具も充実しています。柴田科学の特徴的な製品はSPC(SIBATA PRECISE CLEAR)ジョイントで、柴田科学独自の成型技術によって透明ジョイントにはない高平滑面を持っています。グリスなしで使用可能で固体をフラスコで取り扱う際には重宝します。
ガラス器具だけでなく合成実験で使う機器を広く開発・製造されており、化学実験をトータルにサポートされている印象を受けます。ロゴによって素材のグレードや規格が分かれているのも興味深い点です。
会社案内のビデオでは、社長のコメントと共に各拠点での製品製作や確認風景が映し出されており、製品の品質が高いことが分かる内容です。
桐山製作所
桐山製作所は、効率よくろ過ができる桐山ロートで有名なガラス器具メーカーです。フラスコのサイズに対して一般的な製品より肉厚なガラスを使用して強度を高くしていたり、細部に対して破損しにくい形状にしていたりと独自の仕様で扱いやすくなっているのが特徴です。空気や水分に不安定な化合物を取り扱うときに必要なシュレンク管や微量昇華装置、桐山SAFE濃縮器など尖ったガラス器具を多数取り扱っています。
化学実験向けのガラス器具だけなくアロマ水蒸気蒸留器も販売しているようです。
数多くの動画を配信しており、会社案内や製品紹介だけでなく、実験方法についても解説されています。
HARIO 株式会社
HARIOは、コーヒーやティーなどの食器で有名ですが、理化学用ガラス製品や生地製品も製造されています。技術力は高く、初代「カミオカンデ」の光電子増倍管のガラスもHARIOで製作されました。ガラス器具の特徴として底面のガラス肉厚の均一性とキレの良い注ぎ口が挙げられ、飲料分野でのノウハウが活用されているようです。
飲料向けの製品紹介を中心に多数の動画を公開していますが、一部には理化学用の製品も登場します。
ここで紹介したのは一部のメーカーですが、この他にもガラス器具を製作されているメーカーは日本にたくさんあります。そしてその多くがオーダーメイドのガラス器具を製作しているため、既製品で目的に合ったガラス器具がない場合には、相談してみるのが良いと思います。動画の中ではいとも簡単にガラスを加工していますが、大変難しく学生実験ではT字のガラス管を一つ作るにも苦労しました。特に特殊なガラス器具については手作業の部分が多く、道具を大切にする精神を忘れてはならないと感じました。