[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

世界最大級のマススペクトルデータベース「Wiley Registry」

[スポンサーリンク]

データベースは現代の科学研究活動に必須であり、有用なデータベースの有無により、データの管理や分析が圧倒的に加速することはいうまでもないでしょう。

化学分析分野でもデータベースはなくてはならないものとなっています。

例えばある化合物の存在を確かめるためには各種スペクトルが必要となります。それぞれのスペクトルデータベースがあれば測定したデータをデータベースで検索することにより簡単にその構造を決める(その存在を確認する)ことができます。

さて、今回は化合物の質量分析(マス)のスペクトルデータベースである、ワイリー社から発売されている「Wiley Registry」について簡単に紹介したいと思います。

マススペクトルデータベースとは

様々な化合物の質量分析データを収録しているデータベースです。最も有名なマススペクトルデータベースはNIST(米国国立標準技術研究所)が提供しているNIST20というデータベースです。

EI スペクトル 35 万件(化合物 30 万件), 、 MS/MSスペクトル 132 万件(化合物 3 万件,プリカーサーイオン 18 万件)    *値は化学情報協会より引用

が収録されており、世界で最も使われているマススペクトルデータベースです。

マススペクトルデータベース「Wiley Registry」

それでは今回紹介するマススペクトルデータベース、Wiley Registryはどうでしょうか。

収録数は EI スペクトル 81.7万件 (化合物 66.8万件)

です。なんと、良く知られているNISTの倍以上収録しているんですね。つまり世界最大級のマススペクトルデータベースといえます。

ただし、NISTとの重複も少ないため、相互補完する関係になっています。実際に、Wiley Registry 第12版/NIST20として、両者をパッケージしたものも発売されています。

NIST20とWiley Registry 12の関係

 

このような最大級のデータベースを利用することで、
・解析品質の向上
・解析スピード、生産性の向上

が期待できます。また、WileyはMS関連データベースはWiley Registry以外にも、目的に応じて様々なものを提供しているようです。製品一覧はこちら

Wileyは一般的には出版社のイメージが大きいと思いますが、このようなデータベースも発売しているんですね。

データベース検索・表示ソフト

データベースはデータの集まりですので、それを検索・表示させるソフトウェアが必要です。主流なものはNISTがだしている、NIST MS Search。NIST20のデータベースを検索・表示できるだけでなく、Wiley Registryのデータも検索可能です。そのため、パッケージでも販売しているんですね。

つまり、Wileyはこれまで、データベースを持っていましたが、それを検索・表示するすべを持っていませんでした。

しかし、Wileyは2020年4月から、バイオ・ラッド社のKnowItAllソフトウェアとデータベースを買収したことで、検索ソフトも提供することとなりました

ケムステ読者なら、この名前聞いたことあるひといるかも知れません。実は以前記事を2つ書いています。

特に、1つめの記事で紹介したSpectraBaseはウェブからスペクトルを検索することができることから、記事のアクセスも大変高いです(昨年2万5000PV)。

この2つめの記事で紹介している、KnowItAllというソフトを使えば、より簡単かつ、正確にマススペクトルを検索できるようになったようです。NIST MS Search一強だった、MSスペクトルデータベースソフトウェアに思わぬ対抗馬が現れました。

KowItall

最新のKnowItAll2021では、MS検索機能が強化され、MSスペクトルでの以下のような検索を利用できます。
混合物検索
アダプティブ検索(未知化合物そのものをデータベースから検索するのではなく、フラグメントが欠落または不可された可能性のある類似化合物を検索してきます。)

実際に使っているムービーをいただきまして、ほんの一部だけ解説をつけて編集しましたので、気になる方はぜひ御覧ください。

お問い合わせ先

ワイリー・パブリッシング・ジャパン株式会社
ワイリー サイエンス ソリューション製品担当
〒160-0023 東京都新宿区西新宿8-4-2 野村不動産西新宿ビル8階
sciencesolutions.jp@wiley.com

関連記事

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 光触媒でエステルを多電子還元する
  2. 韮山反射炉に行ってみた
  3. 放線菌が生産するアベナルミ酸生合成において、ジアゾ化とヒドリド転…
  4. 製薬業界における複雑な医薬品候補の合成の設計について: Natu…
  5. マテリアルズ・インフォマティクスの基礎から実践技術まで学ぶワンス…
  6. 「遠隔位のC-H結合を触媒的に酸化する」―イリノイ大学アーバナ・…
  7. 私がケムステスタッフになったワケ(3)
  8. 天然階段状分子の人工合成に成功

注目情報

ピックアップ記事

  1. ギ酸ナトリウムでconPETを進化!
  2. 井上 将行 Masayuki Inoue
  3. ニッケル-可視光レドックス協働触媒系によるC(sp3)-Hチオカルボニル化
  4. アメリカ大学院留学:卒業後の進路とインダストリー就活(1)
  5. 表現型スクリーニング Phenotypic Screening
  6. 並行人工膜透過性試験 parallel artificial membrane permeability assay
  7. ライオン、フッ素の虫歯予防効果を高める新成分を発見
  8. ゲヴァルト チオフェン合成 Gewald Thiophene Synthesis
  9. 化学大手9月中間 三井化学と旭化成が経常減益
  10. 身近なカガクを説明した記事まとめ

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2022年2月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28  

注目情報

最新記事

日本化学連合シンポジウム 「海」- 化学はどこに向かうのか –

日本化学連合では、継続性のあるシリーズ型のシンポジウムの開催を企画していくことに…

【スポットライトリサーチ】汎用金属粉を使ってアンモニアが合成できたはなし

Tshozoです。 今回はおなじみ、東京大学大学院 西林研究室からの研究成果紹介(第652回スポ…

第11回 野依フォーラム若手育成塾

野依フォーラム若手育成塾について野依フォーラム若手育成塾では、国際企業に通用するリーダー…

第12回慶應有機化学若手シンポジウム

概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大学理工学部・…

新たな有用活性天然物はどのように見つけてくるのか~新規抗真菌剤mandimycinの発見~

こんにちは!熊葛です.天然物は複雑な構造と有用な活性を有することから多くの化学者を魅了し,創薬に貢献…

創薬懇話会2025 in 大津

日時2025年6月19日(木)~6月20日(金)宿泊型セミナー会場ホテル…

理研の研究者が考える未来のバイオ技術とは?

bergです。昨今、環境問題や資源問題の関心の高まりから人工酵素や微生物を利用した化学合成やバイオテ…

水を含み湿度に応答するラメラ構造ポリマー材料の開発

第651回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院工学研究科(大内研究室)の堀池優貴 さんにお願い…

第57回有機金属若手の会 夏の学校

案内:今年度も、有機金属若手の会夏の学校を2泊3日の合宿形式で開催します。有機金…

高用量ビタミンB12がALSに治療効果を発揮する。しかし流通問題も。

2024年11月20日、エーザイ株式会社は、筋萎縮性側索硬化症用剤「ロゼバラミン…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー