ポンコツシリーズ番外編 その2 J-1 VISA取得までの余談と最近日本で問題になった事件を経験したので書き留めます。
ポンコツシリーズ 本編はこちら。国内編: 第1話 ・ 第2話・第3話 外伝の前回はこちら
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外伝 第2話:ポンコツアラサー,必死で座学に取り組む
急遽TOFELスコアが必要になった筆者は,薬剤師国家試験以来の試験対策に取り組むことになった。すこぶる座学が苦手な筆者は,独学での突破は不可能と判断し,若かりし頃,英単語帳でお世話になった○会の対策講座に入門した。12月中に出国しなければ納税手続きや助成金期限が怪しくなるので,わずか1ヶ月でスコアの獲得を目指した。はっきり言おう,無謀の極みである。
研究所の要求スコアは非常に良心的で,もしかしたらいけそうな気がしたが,ゴミのような英語力を短期間で成長させるには限界があった。実際にZ○の模試を受けると,Readingではなんとなく対抗できたが,Writtingにおいて,筆者はGrammaryやGoogle翻訳さんの補助なしで正しいスペルを書けない身体になっていた(漢字も調べないと書けないのでもう末期である)。また,Listeningでは美術史や世界史の問題が出ると会話の意味が分からず悲惨で,Speakingにおいては説明文を聞いた後,要約や自分の意見を喋るという問題に対して「そんなん日本語でも難しいわ!」と,設問に逆ギレする始末であった。
ポンコツ受験生,試験で惨敗する
これらを踏まえて筆者は,恩師に週末は実験の引き継ぎをしに来てねと言われていたが,それどころではないので1ヶ月程度お休みを頂き,猛勉強(?)して挑んだ。その結果…目的スコアまで2点足りなかった。TOFELの自宅受験を選択したが,事前テストで問題なかった試験画面が本番で全く映らず、開始が50分ほど遅れたこともあってテスト前に筆者の心がバキバキに折れたことも響いた(という言い訳だが,所詮負け犬の遠吠えである)。
ここは踏ん張り所だったが,ポンコツな筆者は踏ん張りきれなかった。結局,付け焼き刃はダメである。筆者の世知辛い随想を読める辛抱強い読者はコツコツと着実な経験を積み重ねて欲しい。
筆者は,マズい…どうしよう…と狼狽えながら申請画面にアクセスし,やけっぱちでNoの選択肢をクリックすると別の選択肢が出てくることに気付いた。スコア証明の他に「語学学校の証明書」「受け入れ先教授の証明」「ネイティブであることの証明」の3つが存在した。日本でPh.Dを修了した筆者にとって受け入れ先教授の証明を得ることが最短ルートで,試験スコアが要らない情報はこれのことだった。「薬剤師免許は日本限定の資格だが,Ph.Dは世界共通の最高資格だぞ」と,とあるレジェンド教授の名言を思い出した。
ポンコツ博士,邪道な思考に染まる
筆者は受入先教授へ依頼を送ると「ZOOMで30分ほどディスカッションしよう。それが証明になる」という返信とミーティング時間を頂いた。30分はD論の質問時間ぐらい長いぞ…凌ぎ切れるか?と自問自答した結果,邪な手法を閃いた。すなわち,カンペの作成である。
カンペには「私が研究室に入った時,Youの仕事は最初の研究セミナーで取り上げられており,昔からYouのグループはImpressiveだった(事実だが内容を少し盛った。4度目のセミナーが真実)。様々なfateを経て,私がYouの研究プロジェクトに参加できることはもはやDestinyである。」という青臭い言葉をちりばめたルー語を作成し,話の展開次第でそれらを差し込む戦略を取った。
ポンコツ博士,受入教授と初対面する
PCカメラのちょっと下にカンペを貼り付けてからミーティングに参加すると,コロナ禍でメールでのやりとりしか行っていなかった影響から話が弾み,30分を超えて45分ほど談笑できた。「君の英語は所々拙いが,歴代のポスドクにはもっと意思疎通が難しい人がたくさんいた。君との会話は十分できるし,どうにか伝えようと積極的に喋る姿勢が非常に良い,証明手続きしとくよ。」という評価を頂いた。実際は20%程度しか聞き取れなかったので定かではないが,多分そういうことを言ってくれたと思い込んだ。
伝えたい熱量はカンペの賜物だが,アドリブ時における会話の積極性は,ネイティブとのプライベートレッスンで対面とZOOMの両方を行い,様々な条件下でネイティブ英語に慣れる機会を設けたことが非常に大きかった。何事も経験である。
その後の手続きは,DS-2019の到着後,豆夢くんの指示に従ってDS-160,VISA取得までトントン拍子でいけたため,割愛させていただく。ちなみに筆者の申請時期だけ郵送でVISA申請が完結する謎の特例措置があったが(2021/12まで),大使館に入ってみたかったので郵送しなかった。しっかりした取得過程はケムステ留学記や他Webの方が非常にまとまっているので,そちらを参考にした方が良い。むしろ,筆者の随筆は暇つぶしに読むものであり,アウトローな一面が多いので反面教師にした方が良い。
ポンコツ薬剤師,配給文化を経験する
海外渡航の準備が着々と進む中,仕事場で苦労があった。最近ケムステでもトピックとして取り上げられたGE医薬品の不足だ。某企業のコンタミ事件が事の発端だが,大小関わらず他社のGMP違反が芋づる式で見つかり,筆者が所属した薬局でも採用のGE医薬品が供給停止になった。想像以上の供給停止で他社の需要が殺到し,供給バランスが崩れた結果,本当に薬が手に入らなくなった。同様の理由で一部の先発品も入手できず,処方が来ても薬を渡せない薬局が続出する地獄絵図になった。当薬局では,どうにか卸業者が確保した分を月初めに配給してもらい,それで1ヶ月を凌ぐ形となった。配給制とか本当にここは日本なの…?という呟きが薬局内でちらほら聞こえた。筆者も,ついに世紀末の時代が訪れたのか…!と思っていた。
筆者らは入手不可能な薬を医師に疑義照会して類似薬に変更してもらい,多くの患者様に服用薬の変更や先発品変更で料金が上がる了承を得た。一方,抗がん剤などの高額医薬品では先発品しか入手できず,急に支払額が跳ね上がったことでお叱りを受け,他の薬局に移動した患者様もいた。故意的な不正行為をする背景に何かしら理由があるのだろうが,着実に信頼を重ねてきたGE医薬品の不信感が一気に増したせいで説明するのも一苦労だった。結局,不正は後々,周りが誰も喜べない結果を招く。性善説で物事を進める研究においても,不正,ダメ,ゼッタイである。(面接でカンペは不正行為?実際はカンペより普通の会話を頑張ったので許してほしい。)
ポンコツ出国予定者,御礼巡りをする
奨学金の返済でまとまった日本円を口座に置いておきたいので11月ギリギリまで薬局に勤務した。辞める直前に大阪の物流倉庫が炎上し,薬局で発注中の薬袋すら手に入らなくなるドタバタな状況下で退職した。凄いタイミングで辞めることになったので色々申し訳なかったが,非常に優秀なメンバーでチームワークがあり,調剤経験のある中途新人が加入しているので,むしろ筆者がいた時よりこの佳境を円滑に乗り切っているだろう。
出国予定日が近づいてきた筆者は,日本になかなか帰れないだろうから移動の過程で会えそうな親族や大変お世話になって是非とも会いたかった方,先輩・後輩等に連絡をとって出国直前に会うことにした。本当はもっと会う人を増やしたかったが,移動時間がどう頑張っても合わなかったことや万一のコロナ感染で対面者に迷惑がかかる+出国できずに再度御礼巡りするのも恥ずかしいので,自粛した(会えなかった方ごめんなさい!)。
どうにか会えた方々は本当に久しぶりで,それぞれの話を聞いて非常に新鮮な刺激を受けると共に,海外に行く実感が少しずつ湧いてきた。筆者はあまり変わっていないつもりだが,この2年間で悟りを開いたこともあり,筆者の話には多少ウィットに富んだ所があっただろう。相手方にも刺激を与えたと期待したい。
さて,最後に筆者が持っていくものや出国前にやっておいたこと・やっておくべきだったことを再確認しよう。
〜〜長くなりそうなので次回に続く〜〜
過去記事・関連リンク
薬が足りない!?ジェネリック医薬品の今:筆者の経験談と併せて読むと良い。
いらすとや :アイキャッチ画像の素材引用元。