学生の就活においては「潤滑油的な存在として、サークル活動でも皆をまとめてきました。」などと人間関係において物事を円滑に運ぶように調整する人であることをアピールするのが流行っているそうです。潤滑油としている本人たちは、果たして本物の潤滑油についてどれくらい知っているのでしょうか。本記事では潤滑油だとは思っていない筆者が、潤滑油の成分や役割について調べた内容を紹介します。(面白半分で書き上げた記事ですので、表面的な内容です。ご了承ください。)
潤滑油のイメージ
辞書によると潤滑油とは、
- 機械の接触部の摩擦を少なくするために用いる油。
- 物事が円滑に運ばれる仲立ちとなるもののたとえ。
と書かれており、2の意味をとって人間関係において物事を円滑に運ぶように調整できる人であることをアピールする時に使われるようです。KURE 5-56のCMが最もしっくりくるイメージではないでしょうか。
潤滑油の種類
では、実際に潤滑油がどこに使われているか調べてみました。
- 車両用潤滑油
- エンジン油
- 車両用ギヤーオイル
- オートマチックトランスミッション(ATF)フルード
- トルクコンバーター油
- 船舶用潤滑油
- シリンダーオイル
- システムオイル
- 一般工業用潤滑油
- 圧縮用潤滑油
- 真空ポンプ油
- 冷凍機用潤滑油
- ロックドリル油
- チェーンソー油
- ミスト油
- 熱媒体油
- 電気絶縁油
- タービン油
- ギヤー油
- 油膜軸受
- 油圧作動油
- 工作機械用潤滑油
- 摺動面専用潤滑油
- 切削油剤
(参考:コスモ石油ルブリカンツ)
機械の内部には金属などの物体同士が動きによって擦れ合う部分があり、そのまま状態で動くと摩擦によって部品が焼き付いたりダメージを受けてしまいます。そのために物体の間に入って摩擦を低減したり摩耗を防止するのが潤滑油の役目となります。一般工業用潤滑油では、真空ポンプ、ロックドリル、チェーンソー、タービンといったように機械の種類に合わせて様々な潤滑油が分けられています。潤滑油には冷却や絶縁の効果もあり、熱媒体油や電気絶縁油ではそれらを主の目的としています。工作機械用潤滑油の一つである切削油剤は、金属などを削るときに使われる油で工具の摩耗を防ぎ、冷却するために切削点に注油しています。
車両用潤滑油は身近な潤滑油の一つで、自動車のエンジンに使われているエンジン油は、電気自動車を除くすべての車両に使われています。一般工業用潤滑油は単一の部品を潤滑していることが多いですが、エンジン油ではエンジンのいろいろな部分を潤滑しています。また車両にはエンジンだけでなく、トランスミッションやギア、トルクコンバーターと様々な箇所で潤滑油が活躍しています。
船でもエンジンが動力として使われており、エンジンの種類によっては、複数の潤滑油が使われている場合があります。このように潤滑油と一言でいってもいろいろな種類があり、エンジン油といった身近なものに使われている潤滑油もあれば、発電所のタービンに使われるような限られた用途で使われる潤滑油もあります。
もしも自分は潤滑油だと思うなら、どんなタイプの潤滑油なのでしょうか?単一の場所に注力するギヤー油ですか?いろいろなところで摩擦を低減するエンジン油ですか?それとも大きな力を生み出す油圧作動油ですか?
潤滑油の中身
次に潤滑油の中身について見ていきます。
潤滑油の種類によって違いますが、どの潤滑油でも基油(ベースオイル)と呼ばれる炭化水素が大部分を占めています。基油にもいくつか種類があり、古くから使われている基油は、原油を常圧・減圧蒸留によって分離し、潤滑油に適した沸点の炭化水素を溶媒抽出・水素化によって精製したものです。より硫黄分と芳香族の成分を少なくするために、常圧蒸留残渣の減圧蒸留により得られるガス(350 – 550℃程度の炭化水素)を原料として複数の水素化により得られる基油も広く使われています。
加えて、潤滑油の性能を高めるために様々な化学品が添加されています。
- 酸化防止剤:ラジカル連鎖反応を停止させるためのフェノールやアミン化合物が酸化防止剤
- 錆止め材:金属部品がさびないようにするためのカルボン酸やスルホン酸、リン酸の塩、アルコール、エステル
- 消泡剤:潤滑油の流動によって泡立たないように加えられるシリコーン
上記は、潤滑油の種類に関わらず広く添加されているようです。
- 耐摩耗剤:摩擦面で保護膜を形成させ摩耗を防止するためのジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)
- 摩擦調整剤:表面に吸着して摩擦を増減させる長鎖脂肪酸のモノエステル、膜を形成して摩擦を低減させるジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)
- 粘度指数向上剤:温度変化による粘度変化の低減を主目的に使用されるポリメタアクリレート(PMA)やポリイソブチレン
オレフィン共重合体(OCP)、エチレンースチレン共重合体(EPC)- 流動点降下剤:低温における潤滑油中のろう分の結晶固化を防止し,流動点を低下させるポリメタアクリレート(PMA)
上記は、エンジン油、ギヤー油、作動油で主に使われているようです。潤滑油において粘度が大変重要で、どの種類の潤滑油にもいくつかの粘度の製品があり、機械に合う粘度の潤滑油を使用する必要があります。エンジン油においては、燃費を良くするために粘度の低い油が最近の車を中心に採用されていますが、粘度は車によって指定されているため、指定外のエンジン油(特に指定よりも低い粘度の油)を使うと潤滑が十分でなくエンジンにダメージを与えてしまう可能性があります。
- 清浄剤:高温時の劣化物の沈積の予防抑制するスルホネート、サリシレート、フェネート
- 分散剤: カーボンおよびスラッジとして沈積する物質を懸濁分散するコハク酸イミド、エステル、ベンジルアミン
これらはエンジン油に特徴的に添加される種類の化合物です。他とは異なり、燃料の燃焼に曝されるため、高温によっていろいろな副生成物が発生します。それらを抑制したり分散させてエンジンへの影響を最小限にするのが清浄剤・分散剤の役目です。このように潤滑油は様々な化合物の混合物であり、別々の役割を持っていて総合的に機械を保護しています。
(参考:カネダ株式会社)
あなたは潤滑油のどのような機能が特徴ですか?摩擦を低減する摩擦調整型ですか?低温において流動点を低下させる流動点降下剤型ですか?副生成物を抑制・分散する清浄・分散型ですか?
理想の潤滑油アピール法
最後に筆者が提案する潤滑油の自己アピール例をいくつか紹介します。もちろん面接での使用は自己責任でお願いします。
例1:エンジン油
自分は、低粘度の自動車エンジン油のように、ピストンからカム、タペット、クランクシャフトといったような様々な場面と人に対して働き、摩擦を極限まで低減しつつ、いつまでも人間関係を壊れないような振る舞いをサークル活動で心掛けてきましたので、御社という異なるエンジンでも同様の働きができると考えております。
例2:無添加タービン油
自分は、タービンで使用されるような高度精製されたパラフィン系油のように、温度に対する粘度変化が小さくいかなる状況でも良好な潤滑性能を示し、酸性物質や不純物を含まないため高安定性を示し、水分離が良いように信念を貫いてアルバイトのリーダーを努めてきました。御社では御社のカラーという添加剤が加わってより良い働きができると考えています。
例3:あえて潤滑油じゃないアピール
自分を物に例えると、潤滑油ではなく切削工具の刃先だと思います。確かに潤滑油のように物事を円滑に運ぶように調整できる人は重要ですが、調整だけでは前に進めることはできず、むしろ自分は刃先として常にチャレンジの先端に行き、道を切り拓いていくことができます。そして潤滑油の助けを得つつ諦めずに最後まで主導してやり遂げることができる人間です。
潤滑油を広く取り扱っているのは石油元売り企業がメインであるので、そのような企業の面接では上記の例を分かってくれるかもしれません。
ざっと潤滑油について紹介してみましたが、エンジンだけでなく様々な機械に潤滑油は使われ、機能も様々であることが調べてみて分かりました。潤滑油はれっきとした化学品であるため、より潤滑油という言葉だけでなく、機能と成分が広く知られるようになることを願います。
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- マシンオイルの種類と特長:モノタロウの一般工業用潤滑油の紹介
- 潤滑油基油の品質と世界動向:JXTG Technical Review・第59巻 第3号(2017年11月)
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