こんにちは、Macyです!
2021年11月22日(月)に有機合成化学協会が主催する啓蒙&研究者交流の会である「YUGOKAFe」に参加してきましたので、どのような会なのかレポートしていこうと思います!
YUGOKAFeとは?
文字通り「有合化のカフェ」ということで、有機合成化学を牽引するアカデミアおよび企業の新進気鋭の若手・中堅研究者が集い、交流を深めることを目的とした会です。正確な年齢は把握できていませんが、参加者は30~45歳くらいだったと思います。
Vプレレクでもご講演いただいた砂塚敏明先生(北里大学大村智記念研究所所長・教授)をはじめとした有機合成化学協会の事業委員の先生方が運営されていました
プログラム
Zoomウェビナー形式
第Ⅰ部 講演(午前、午後)(10:00~13:45)〔座長;前出 砂塚 敏明〕
(三井化学株式会社常勤監査役/前有機合成化学協会会長) 諫山 滋※講演は以下の通り二部構成で実施
講演(1)(10:00~12:00) 「研究遺伝子と人材育成を考える」
講演(2)(13:00~13:45) (対話形式)「参加者よりご希望のあったテーマを取り上げる予定」◆参加者全員による自己紹介◆(13:55~14:40)
〔進行役;東京農工大学大学院工学研究院准教授 森 啓二〕
⇒ 自己紹介カード(ppスライド)を使っておひとり1分間でここからoViceに移動してグループディスカッション
第Ⅱ部 討論会 =「グループ討論会(2回)& 全体討論会」 (14:45~17:00)
〔進行役;慶應義塾大学薬学部教授/本会事業委員長 須貝 威〕⇒ グループ討議(メンバーを組替え2回実施)を行い、最後に全体討議を実施します。
5グループに分けて討議を行います。各グループには本会担当事業委員、YUGOKAFe卒業生で構成されたお世話役がファシリテータとして加わります
グループ討論会(1)14:45~15:45
グループ討論会(1)15:50~16:50
全体討論会 16:50~17:00(時間が押したので実際は行わず)第Ⅲ部 情報交換 ・交流会(17:00~18:00頃)
情報交換&人脈拡大のための交流会
(※オンラインツールoViceを活用して)閉会の挨拶:(慶應義塾大学薬学部教授/本会事業委員長) 須貝 威
参加した経緯と参加意義
運営に主として関わっていた東京農工大の森啓二先生にお誘いいただき、ご参加させていただきました。森先生には昔から良くしていただいていて、ケムステ代表の山口先生との関わりを持てたのも実は森先生と一緒にケムステイブニングミキサー2015で代表に挨拶しに行ったことがきっかけでした。
人と人との繋がりというのは人生を左右すると昔から考えているので、YUGOKAFeの企画趣旨を聞いたときには二つ返事で参加をさせていただくこととしました。ケムステも人との繋がりがきっかけで携わることができていますし、ケムステVシンポで多くの人と交流することで異分野の先生とも知り合うことができています。コロナウイルス蔓延によってかつてよりもコミュニケーションが減ったという人がとても多く、実際にYUGOKAFeでもそのような声が聴こてきました。しかし、筆者にとっては、オンラインが一般化したことは、人と人との繋がりを手助けしてくれたと感じています。YUGOKAFeではアカデミア:企業研究者 = 1:2~1:3くらいの比率で参加しており、いつも話すことのできない企業の研究者とたくさん話すことができたのはとても新鮮で有意義でした。
諫山先生の講演
諫山先生からのメッセージをざっくり要約すると、基礎研究と新規性を重視する「ファーマー型研究者」と社会実装するために技術をカタチに変えるデザインをする「シェフ型研究者」という2種類の研究者が存在するということ。そして、ファーマー型研究者が開発した基盤技術を社会実するためには、シェフ型研究者が技術を非専門家(投資家や消費者)に伝わるように技術を簡単な言葉を使って説明し、ニーズに合うカタチにデバイスや製品をデザインする必要がある。イノベーションとは、0→1の新規現象を見つける技術革新のみならず、社会実装により社会を変えることという意味も持つという主張でした。2時間の壮大な講演の後、参加者ほぼ全員から諫山先生に質問する時間があり、とても有意義なディスカッションでした。
(感想)企業では基礎研究に割くことができるリソースがアカデミアほど多くないため、基礎研究をするアカデミアと社会実装する企業が手を結ぶことが、社会実装のための最短ルートなのではないかと思いました。
ただし、日本では企業アカデミアの共同研究ではアメリカほど基礎研究ファンドを企業が出してくれないのでそれほど金銭的に”おいしい話”ではなく、またアカデミア側としては学生が特許などの関係で論文・学会発表が全くできないという悩みもあります。
それでも、大学だけで基礎研究から社会実装全てを行うことは難しく、オープンイノベーションには大きなメリットがあると思いますので、YUGOKAFeでの繋がりを徐々に活かして行けるようにしたいと思います。
グループディスカッション
グループディスカッションでは、5班に分かれてディスカッションし、メンバーをシャッフルして2周回したので9×2=18人程度の人とディスカッションすることができました。ディスカッション内容は、他の班のものは網羅できていませんが、覚えている範囲で書き出してみました。
✔︎自発的にアイデアを出せる研究者を企業・アカデミアではそれぞれどのように育てているか、またアイデアを出せる人の評価をどのようにするか。
✔︎有機合成の人気が下がっている気がするが、どのように教育を工夫しているか。
✔︎コロナ禍で研究者同士のコミュニケーションが取りづらくなってしまったが、どのようにコミュニケーションをとっているのか。
✔︎実際に企業アカデミアの共同研究をやりたいと本気で思っている人はどれくらいいるのか。
✔︎企業にとって大学院で求める教育とは?
✔︎企業の人がアカデミアの研究を知るために最も頻繁に見る媒体は?
✔︎企業の人はケムステ見てますか?(個人的(笑))
企業はどのような人材を求めている?
企業は研究や仕事に対して覚悟を持って自ら道を切り開く気概のある学生を求めているという意見が多かったように思います。アカデミアでもそのような学生と一緒に研究したいですし、お互いに食い違いはなかったようです。
ただし、アイデア豊富で専門知識が高い人の能力を最大限に引き出すことが難しいという企業の声もあり、これは日本がさらにイノベーションを起こしていくために変化が必須な点であると思いました。
良い上司とは?
社会に出ても優秀な人材に対して適切なメンターが付くことはとても大事だと諫山先生はおっしゃっていました。
優秀な部下ほど下に置きたくなるものでしょうが、あえて適切な場所に送り出すことができる上司こそ良い上司だと言います。
適切な場所とは、新しいプロジェクトのリーダーに置くといったことや、別の部署に送る、海外に派遣するというように様々で、キャリアを積ませてあげることだとのことです。
また、良い上司ほど褒め上手ということで、これからの若者は褒めて伸ばせと。特にこれから社会人になろうとしているZ世代の若い人達は業績よりも過程を重視する(されてきた)人が多く、褒める行為はとてもプラスに働くとのこと。
まとめ
ファシリテーターとして参加したい!と思える良き交流の場でした。
今後はYUGOKAFe NEXTという企画を考えているそうで、簡単にいうとYUGOKAFe同窓会です。
かなりの人数になると思うので、全員参加するとなると大変でしょうが、ここでできた繋がりを定期的に振り返ることで、より繋がりが強くなりオープンイノベーションにもつながると思います。
砂塚先生の企業共同研究は全て有機合成化学協会の繋がりで実現しているそうで、有機合成化学協会は非常に良いオープンイノベーションハブになるのではないかと思います。
興味のある若手・中堅研究者の方はお近くの有機合成化学協会関係者にご相談してみてください。
筆者の分野内で最も人との繋がりを広げることができた「日本化学会年会のケムステイブニングミキサー」や「天然物談話会」などが再会されることを待ちどしくも思いながら、オンラインでの交流会をフル活用してこれからも色々な人と関わって行きたいです。
ケムステSlackなども、若者の繋がりを手助けするハブ的な存在になりつつありますので、化学の発信やコミュニケーションをこれからも続けて行きたいと思います!
文字ばかりの記事でしたが、最後まで読んでいただいた方、本当にありがとうございます!