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一般的な話題

ピレスロイド系殺虫剤のはなし

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Tshozoです。筆者が毎週末カミさんの命令で天井ハタキと全面床磨きと便所掃除で嬉々として床を這いずっているためか、自宅でほとんどゴキブリを目にすることがありません。ところが先日下のフマキラー社製品を「モノは試し」と使ったところ…出ました。そこまでゾロゾロ出たわけではないのですけど。

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筆者が気を遣ってかなり清潔にしていたつもりの家でも連中を炙り出すこのパワー。一体何が入っているのか気になったので関係商品とともに調べてみました(上記フマキラー品の開発経緯は雑誌”DIME”のこちらの記事で採り上げられており、おすすめです)。

入っている成分の整理

まず記事を書くにあたり、関西学院大学 理工学部 田辺研究室所属、元住友化学の松尾憲忠博士によるピレスロイド系殺虫剤レビュー(文献1)を参考にいたしました。同氏は住友化学在籍時代に数々の重要な成果を出されており、初学者でもスッと読めて歴史と概要とを把握するのに素晴らしい内容でしたのでお勧めです。加えて住友化学殿が出されている「GO! ピレスロイド宣言」という副題がついた、初歩的・網羅的にピレスロイド系殺虫剤がまとめられている資料(文献2)も参考にいたしました。

まず公平のため、おうちの中の虫に関わる殺虫系の薬剤のうち関係各社の代表的なものを調べましょう。下図は、上からフマキラー社(“ゴキブリ ワンプッシュプロ“)、アース製薬社(“ゴキジェットプロ“)、大日本除虫菊社(“蚊がいなくなるスプレー“)の成分表になります(大日本除虫菊社のワンプッシュ品は蚊が対象ですが、色々聞いたりしてみるとGやハエ、ブヨにも効くとの話があったので比較のために載せました)。

これによると有効成分はd,d-T-シフェノトリン、イミプロトリン+フェノトリン、トランスフルトリンの4種類のみ。全ての製品が複合材料で虫を殴っているのかと思いきや、いずれも単剤または二剤での効果だったというのは驚きです。特に大日本除虫菊社の成分はかなり濃度が高いですが、これは徐放性を持った微粒子が壁にはり付き壁に止まった蚊を叩くタイプで、壁に貼り付いたあとも有効性を出すために分量を増しているようです(なおミリスチン酸イソプロピルなどは浸透性を高めるための助剤、LPGなどは噴射のためのキャリアガスと思われます)。

それぞれの分子構造(文献1)
左からd,d-T-シフェノトリン、イミプロトリン、フェノトリン、トランスフルトリン

これらの材料は昔から除虫菊に含まれて活用されていたいわゆるピレスロイド系殺虫剤で、今回挙げた4つの材料はかなり昔に見つかっており、近年新たに開発したものではありません。たとえばd,d-T-シフェノトリンは住友化学によって1980年代に、イミプロトリン+フェノトリンはそれぞれ1998年に住友化学、1997年に旧Bayer(現Bayer Cropscience)が、トランスフルトリンは同じく旧Bayerによって1985年に有効成分として商品化されているうえ、これまでも色々な殺虫剤に入っていました。

では何故大きな話題を集めたのか。それは商品開発の視点を変えたこと、つまり同社の開発者の方がこちらで語っているように「結果が見える」ようにした点。従来の殺虫剤は物陰で死滅して死骸は利用者の前には出てこない、的な使い方のものが多かったのですが、じゃあ本当に効いているのか、死んだ奴らはどうなったのかがわからなかったため、「気持ち悪いけれども結果は見てみたい」というユーザの視点を新たに発掘し、次で述べる殺虫剤の指標のうちの一つに注目することにしたというのがこの製品の面白い点です。

作用の機構について

一般に殺虫剤には効き目をあらわす主な指標が3つあり、対象虫が食らって死ぬ「致死率」、苦悶率とも呼ばれる「致落下仰転効果(ノックダウン効果)時間/率」のほかに、もう一つ「追い出し効果(フラッシング効果/フラッシングアウト)時間/率」という聞きなれない指標があります(試験方法詳細は厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課が出しているこの資料をご覧ください・非常にわかりやすいです)。これは「殺虫剤の効果で巣の外に弱って出てくる個体割合」を示したものですが、d,d-T-シフェノトリンは追い出し効果の割合が非常に高い(下の表の数値だと、90%近くのG個体が苦悶しながらチャバネGもクロGもおよそ10分~12分で出てくる)のがポイント。逆に言えばすぐは死なない、どちらかというと遅効性の殺虫剤であるのですが、これが今回の目的には重要なのでしょう。基本的には「見敵必殺」が要求されてきたこれまでの殺虫剤業界(?!)にある意味で新しい可能性を開いたのかもしれません。

(文献3)より編集して引用 シフェノトリンを高濃度に使う「ミラクンS」という薬剤の特性例
FT50とは50%以上の個体が巣または物陰から表に出てくるのにかかる時間のこと

なおこの追い出し効果はこちらの大日本除虫菊のサイトにも書かれていますとおり「暗い巣穴から明るいところに(光を求めて)出てくる(そこで死ぬ)」効果でもあり、1960年代あたりから開発された合成系ピレスロイド系殺虫剤には総じて強い追い出し効果が備わっているということです。たとえば(文献4)にみられる商品名エヤローチ・有効成分イミプロトリンのケースでエヤローチPでも高いフラッシング効果が示されているとおりで、面白いことにゴキブリに限らずボクトウガなど他の虫にも似たような作用を示すピレスロイドがあることを考えると、虫の体の機構に共通する何等かのしくみに共通の機序で作用しているということなのでしょう。(文献5)によると

ピレスロイドの作用機作については,近年の電気生理学的手法の発展に伴い,神経系における刺激伝達或いはその阻害剤のメカニズムに関する研究が多く報告されているが,まだ未知の部分が多い.ピレスロイドの主な作用点が神経軸索で,Naイオンチャンネルの撹乱により刺激の伝達に対する阻害を引き起こすことはほぼ間違いないとされている.最近,ピレスロイドの他の作用点として,シナプスがクローズアップされ,神経伝達物質,或いは伝達機構に対する作用が議論されている.

こうした小さい虫の生体内でのごく小さな分子の作用というのは可視化しにくいので、本当の作用機序の解明というのはまだまだ時間がかかるのかもしれません。ただ各種の薬剤はそれぞれ神経のどこに作用するのかというのは下図のように推定されていて(文献6)ピレスロイド系は主に神経作用物質を出す側の神経索にあるNaイオンチャンネルに効いている(阻害している)というのが科学者間での一般的な認識。というか、著名な殺虫剤のターゲットはほとんど全てこの神経周りのシステムを狙っていたんですね、不勉強な話ですが初めて知りました。

(文献6)より引用 後述するが中央のGABA(γアミノ酪酸)付近に作用する
“フィプロニル”は有名で、このグループで新しいタイプの殺虫剤も最近出てきつつある

で、巣から追い出すだけでは評判の悪い薬になるのでトドメまで刺すような調合でなければならないのですが、その濃度領域や粒子形態がどこなのか、という詳細データというのはさすがに表に出てきていないようです。特許も公開になっていそうなものですが、そもそもこの製品の特許が見当たらないですね。またスプレーも特殊なものなのか、またどういう粒子分布になっているのか、微粒になった後にどう効くのかの言及も一般的には出ておらず、色々謎は残ったままです。このため推定でしか言えないのですが、今のところd,d-t-シフェノトリン以外に「外に出てきて死ぬ」を謳ったタイプの家庭用薬剤があまり見られないことを考えると、d,d-t-シフェノトリンがとりわけ効果が高い、または濃度によってその特徴を出しやすいなどの効果があったということではないでしょうか。

ということで、今回紹介したフマキラー社のワンプッシュプロは開発の指標・視点を変えることで話題性とつながり、また実際にユーザに「見える」ことで新たな商品性を生んだ、というお手本のような製品化と思われます。奴らと関係者の方々との戦いはこれからも続きますが、拮抗を保ちつつ徐々に住居からは押し出し、しかも環境に配慮出来る材料に仕上げていただきたいものです。

もっとも、たとえばこれらのスプレーをミツバチの巣の近くなどで使ってしまってはとんでもない損害を生み出しかねませんし、そのほか使い方を誤ると虫を使ったり食べたりしている産業の方々、暮らしを営む方々にとっては迷惑千万。一時期ずいぶん議論になったネオニコチノイド系殺虫剤のように、結果は色々議論はありますがそうしたトラブルが起きる芽になる可能性を孕んでいる点は否定できないので、まっとうなユーザーでいていただくためにはこうした家庭用を含めた殺虫剤の使い方には十分に配慮頂きたい次第です。

そのほかの殺虫剤のトピックなど

殺虫剤にもいろいろありますが、一番怖いのがGや南京虫類はすでに上記で挙げたピレスロイド系殺虫剤に対し耐性を獲得し得るのではないか、という話。たとえば(文献7)によると(一部中略及び修正)、上に挙げたゴキブリではないですが、

一般に使用されている殺虫剤の多くは、トコジラミ(南京虫)に対してゴキブリと同程度の殺虫力が期待できると考えられますが(中略)特に家庭などでよく使われるピレスロイド剤に対して(中略)通常の1,000倍~10,000倍以上の強い抵抗性を示す集団が推定される抵抗性も確認され日本各地で問題となっている集団の90%近くがピレスロイド剤に対して抵抗性を示すような遺伝子の変異が認められる、との遺伝子解析も報告されています。。欧米では以前から欧米では以前からピレスロイド剤に対する抵抗性剤の発達が問題になっていて(中略)これらの集団に対するピレスロイド剤の効果はほとんど期待できないことになりますが…

なんと南京虫の大半が既に遺伝子変異を通じてピレスロイド類に耐性を獲得していると。これらは欧州から持ち込まれたそうですが、こいつらは貨物などについてどこにでも行きますしその変異を交配を通じて獲得してくるため非常に由々しき話です。インフルエンザや一部の病原菌などに対するウイルス薬または殺菌剤同様、こうした薬剤の開発もいたちごっこなのですが、前に書いたダコニールのように非常に耐性菌が出にくく今なお使われている薬剤もありますので、ゴキブリ系統に対しても有効な使い方が出来るような仕組みや新機軸をぜひご提案頂きたいところでもあります。

・・・と思ったら、つい最近の2014年に三井化学アグロ殿が「テネベナール」(商品名ベクトロン)という、これまでのピレスロイド系、有機リン系、カーバメート系のどれとも異なったメタンジアミド系の殺虫剤をゴキブリにも適用しつつあることがわかりました。

テネベナール(ベクトロンFL)の説明動画

この殺虫剤はもともとは1993年に日本農薬社が発明したフルベンジアミド系殺虫剤「フェニックス」が下敷きになっているのですが、分子構造をそこから改変させた結果これまでの殺虫剤と違い昆虫のクロライドイオンを制御する神経受容体、具体的には上記のGABA受容体に、フェニックスや従来薬(フィプロニル)と異なった形で作用するようになったらしく、より広いスペクトル、つまり今回のトピックであるゴキブリなどにも効くようになったというのがポイントです(特徴や作用の詳細が知りたい方はこちらの「農薬成分ブログ」殿をご覧ください・おそらくプロの方が最新の除草剤を含む農薬全般について書かれており、めちゃくちゃ勉強になります)。

フルベンジアミド系である”フェニックス”(左)と、メタジアミド系である”ベクトロン”(右)
フェニックスは蝶の毛虫系にしか効かないのに対しベクトロンは作用機序が違うのでカやハエ、ゴキブリにも効いてしまう
ぱっと見ほとんど同じなのに何故、としか言いようがない

このテネベナール、同社が発明した当時から結構反響が大きいようで発表とほぼ同時に農業化学の実質的世界トップであるBASFが同社に対しアライアンスを申請、2017年には全面的提携に至るなどかなりの販売量が期待でき、大型商品への大化けへも期待できそうな話です。同様の材料では日産化学・シンジェンタが開発する材料(フルキサメタミドイソシクロセラム)も上市されていたり準備が進められたりしていますが対象となる虫の範囲が少しずつ異なるらしく、うまく棲み分けが出来るようになるといいですね。

蛇足ついでに書きますと戦後の日本でのゴキブリ用殺虫剤は下記のようにディルドリン、クロルデン、リンデンという明らかにニンゲンにも影響がありそうな毒性の高いものが使われていたのですが、おそるべきことに今ではチャバネ系ゴキブリのほとんどがこれらの塩素系殺虫剤に耐性を持っているらしいです。クロゴキブリ系がどうかは調査が及ばなかったのですが、おそらく似たような傾向を持っていることでしょう。ということで塩素系殺虫剤の使用割合は一部の蚊などを除きほとんど使われなくなっています(構造上もあんまり環境に放ちたいものではないですから)。

左からディルドリン、クロルデン、リンデン
「PCB?」とか聞かれてもおかしくなさそうな塩素系殺虫剤で残留性高そう
筆者が幼少のころはまだ相当量使われていたらしい

さすがに塩化物が効かんのはイカン、となったのかその後リン系のフェニトロチオン(左)、
ジクロルボス(右)などが適用されたが当然ながらこれらも毒性が高く、
結局家庭用はピレスロイド系が大半を占めることとなった
なおゴキブリ用途のリン系は他にもダイアジノンなどがある

ただ薬剤耐性を気にしなくていい最高の方法は物理手法なんですよ。そう、スリッパ。いや、やっぱり嫌なので誰か瞬間的にGを焼き殺せるハンディレーザとかiphoneから出るG専用ライトニングボルト装置とか作ってくれませんかねぇ…

おわりに

平和主義を標榜する筆者としては虫が相手とはいえあまり殺生したくはない。ただこういう記事を書いているわりに筆者は虫の常時飛び回る系、その中でもとにかく蜂が大嫌いで、スズメバチを見かけると奇声を上げて走り出すくらい嫌い。そもそも、昔アスファルトの上でもがいているミツバチを拾って助けようとした時に刺されて痛かったのを逆恨みする程度に大嫌いです。その一方である漫画家の方が時々自宅でスズメバチを飼って掌に乗せているのを見て肝を冷やすスリルを味わうこともあるくらい屈折した感情を持っています。ただ、スズメバチを「恐怖の虫」的な扱いのみに終始し駆除現場ばかり採り上げるマスゴミには苦言を呈したくなるくらいには好きだというのも自覚しています。

ということで、できれば殺生なくこうした虫類を忌避できれば一番いい。出来ればそれを使ったとたんスズメバチ連中が一斉におとなしくなってくれるものが一番いい。というものが無いのかと色々探していたら、あるんですよこれが。それがZeolinite殿が紹介してくれた、その名も”スズメバチサラバ”

下記で紹介する㈱KIMP殿による動画から引用

この製品は高知大学 農林海洋科学部の金哲史先生(研究室)が開発された「スズメバチサラバ」という商品。先生は「株式会社KIMP」という会社を立ち上げこの製品を市場に出しておられ、養蜂家や登山家を含め様々な分野で好評を博しています。有効成分を見るとなんと「フェネチルアルコール」のみで、そんな単純な材料でと驚く方もいるのではないでしょうか。

金先生がなぜこの材料に特効があると気が付いたのか、のエピソードが非常に興味深く、同社のホームページによると(リンク)、

…その中で、スズメバチが「好む樹液」と「嫌う樹液」があることに気が付きました。(中略)「嫌う樹液」の中から、スズメバチが嫌う成分として「2-phenylethanol」を見出しました。また、近隣の「Benzyl alcohol」にも同様の活性があることを明らかにしました

とありました。この着眼点は基本的かつ根本的であり、その「何故好む樹液と好まない樹液とで異なるのか、何が違うのか」の原理を追い求めた結果この2種類の材料に行き着いた、と。小学生のように単純で、同時に専門家的な研ぎ澄まされた視点を持つことがいかに大事であるかを如実に示している例だと思います。書くまでもありませんが有効成分の分子構造はそれぞれ下図。シンプルですねー。昔保護基にベンジルアルコールを使っていた時があるのですが脱保護時にBBr3を服の上に落として火傷しかけたことが思い出されます。

左が2-フェニルエタノール、右がベンジルアルコール
化学徒には保護基としておなじみかも

なおこの材料について金教授はさらに突っ込んで調べられていて、それによるとこの芳香族系アルコールは樹液そのものではなく、クヌギやナラの木に住み着くボクトウガと呼ばれるガの幼虫が出していることを突き止めました(文献8)。このボクトウガは肉食で、穴をあけて木の樹液を出すようにしているのも周囲の虫を呼び寄せて自分のエサを狙いやすくするため。知恵というか本能というか恐ろしいトラップを仕掛けるものです。で、ボクトウガの種類によってはスズメバチすらも食い殺すらしいということ。

ボクトウガの一種 Cossidae moth 成虫と幼虫(引用:英語版wiki) 
幼虫の長さが80mmくらいであんまり手には乗せたくない外見

ここからは筆者の完全な推測ですが、ボクトウガは栄養価が高いこうしたハチ類を反撃させずに捉えるために上記の芳香族アルコールを使うよう進化したのではないのか、ということ。または逆に、ハチ類が襲ってきてもやる気をなくさせて撃退する、ということも考えられますね。ただ色々昆虫学者様のサイトを見てみると前者の例が多いらしく、なかなかに怖い幼虫ではあります。

そして幼虫の出している成分の効果のほどは下動画の通りで瞬時にすさまじい威力を発揮します。ファイナルファンタジーで言うとフィアーを食らって逃げ出してしまうくらいの恐怖を感じているのではないかと。

なおこのガの幼虫が出す成分を調べた、と簡単には言いますが何百匹も集めて検出しなくてはいけなかったはずで相当の苦労があったのではないかと予想されます。ただ絞り込みの結果、よく使われるような香り成分、しかもほぼ人畜無害の成分であるベンジルアルコール類に帰着したという点は奇跡のようなハナシですね。

この単純な分子、ということについてですが、よく考えたら昔記事に書いた南京虫呼び寄せフェロモンも低分子でそこらの試薬からすぐ合成できそうなものばかりでした。ですからやたら低分子はもうやることが無いだのなんだの言われているケースがありますが、金教授がその真摯な問いで突き詰めた結果上記のおそらく唯一無二の材料に行き着いたように、視点や着目点や正しい問いが足らないだけで低分子領域にもまだまだネタは転がっているのかもしれません。なおこうした虫類への効果が高い材料は分子量が低くないと揮発しにくく拡散しにくいため、つまり高分子類では拡散しないですから、忌避剤としての効果はより低分子なものの方が効果が高いということも今回初めて知った次第で。是非この流れで筆者が嫌いな蛾やダニ、ヒルなどにも効く平和主義的農薬を開発頂きたいと願う次第です。

ただ一方で、農薬発祥の地ともいえるドイツでこういう気になるニュース(「ドイツ自然保護区の飛行昆虫、約30年間で75%減少」・論文リンク)も。目の前のものをキレイにしたらそりゃ多様性はなくなりますよね。虫は言葉はしゃべれませんし黙って死んでいくのがほとんどでしょうしそうした原因は人間活動が概ねの理由でしょうから、何事も適切な量を適切な形で使用していただき、虫と人間とでお互い様のところが見つけられたら一番いいのですが…そううまくはいかんから現在のような状態になっているのかもしれません。虫にとっては畑はご馳走の山で、そこに攻め込んでくるのは生き物として当然ですので、ニンゲン側としては畑以外のところに影響を与えないよう、防御をいかにうまくしていくかを考えていくしかないのでしょう。

それでは今回はこんなところで。(→つづきの記事はこちら

おまけ:㈱シーアイシー殿 ゴキブログ このようにきちんとゴキブリの生態を研究している方々がいるからこそ殺虫剤の開発も進みます

参考文献

  1. “Discovery and development of pyrethroid insecticide”, Proceedings of the Japan Academy, Series B, 2019 年 95 巻 7 号 p. 378-400, リンク
  2. “合成ピレスロイド製品ガイド”, 住友化学, 2016年, リンク
  3. “ミラクンGX 技術資料 “, 住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社, リンク
  4. “エヤローチ®P”, 住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社, リンク
  5. “家庭用殺虫剤概論”, 日本家庭用殺虫剤工業会, リンク
  6. “Voltage‑gated sodium channels as targets for pyrethroid insecticides”, Eur Biophys J (2017) 46:675–679, リンク
  7. “トコジラミとその効果的な防除法”, 平成27年2月6日, 平成26 年度生活衛生関係技術担当者研修会, リンク
  8. “スズメバチにシュッとひと吹き 殺さず攻撃性を抑えるスプレー”, 産学官連携ジャーナル, 2018年7月15日, リンク
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Tshozo

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メーカ開発経験者(電気)。56歳。コンピュータを電算機と呼ぶ程度の老人。クラウジウスの論文から化学の世界に入る。ショーペンハウアーが嫌い。

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