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化学者のつぶやき

Delta 6.0.0 for Win & Macがリリース!

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NMR解析ソフトDeltaの最新版6.0.0がリリースされました!

 

返り咲いたDelta for Mac

Deltaはもともと世界初のNMR解析ソフトウェアとして、しかも無料で利用できる解析ソフトウェアとしてリリースされました。
Windows版は常に問題なく使用できていましたが、MacがmacOS Catalina (OS10.14)以降、64 bitテクノロジーへの完全移行に伴い32 bitアプリの互換性が完全に無くなったため、Deltaが利用できなくなってしまいました。
先日64 bitに対応したWindows版のDelta 6.0.0がリリースされ、その後少し間が空きましたが、Mac版のDelta 6.0.0がついにリリースされました。
いずれも64 bit appとなっており、最新のOSにも対応しています。macOS 12 (Monterey)やWindows 11も近々リリースされますが、これらにも対応すると思われます。
もちろんM1チップのmacにも対応しています!

 

Delta 6.0.0における主なアップデート

1.等高線調整ツールと連動する「nDプロセッサの[等高線]パネル」と「Counter Slide」

COSY、HMQC、NOESYなどの2D NMRの等高線調整は、これまで2Dチャートを右クリック(または¥マークをhit)して表示する等高線調整ツールを使っていました。
等高線調整ツールの使いやすさといえば、視覚的&直感的に等高線を調整できる所だったと思います。

一方、新しく追加されたnDプロセッサの[等高線]パネル(英語では[Counter])では、等高線のレベルの変更および下限値、上限値、係数を数値で決める事ができます(図1)。数値を決めた後にApply Counterボタンで等高線を図に反映させます。
ちなみに、図1の用にnDプロセッサ上でプロセスリスト表示とチャート表示を切り替えるボタンは右上のコレ→になります。
詳細な等高線調整法についてはこちらのページを参照して下さい。

nDプロセッサ等高線調整画面、調整前

図1. nDプロセッサ等高線調整後

 

また、1Dチャートを2Dチャートに並べて表示する2D viewerでは、pointer berの一番右にCounter Slideというボタンが追加されました(←これかなり便利です)。
図2のように、2Dチャート上でCounter Slideボタンを押し、上下にクリック&ドラッグするだけで、等高線の上限と下限を調整できます(詳細はこちら)。

図2. 新搭載Counter Slideボタン

 

2.Save All in One As…機能の追加

Deltaを使う上で結構不便と感じていたのが、複数のチャートを重ね合わせたり並べて表示した画面をそのままDeltaファイルとして保存することができなかったこと。やむなくその画面をPDF化して保存していました。
今回のアップデートで追加されたSave All in One Asの機能は重ね合わせチャートや2D viewerで1Dを貼り付けたチャートなどをそのまま保存することができます(詳細はこちら)。
この際、通常のDelta NMRファイルの拡張子である.jdfではなく、新しい拡張子.jdaファイルとして保存されます。.jdaファイルをダブルクリックすればDelta上で保存したときと全く同じ状態のチャートを復元することができます。

おわりに

以上、最新のDeltaアップデート情報を短くまとめてみました!
今回のアップデートの内容も含まれているDelta公式マニュアルには、解析のさまざまなテクニックやショートカットキーが載っていますので、是非ご参考にしていただければと思います。
また、JEOL公式の「Delta Tips」 ページにはNMR解析や測定に関するさまざまなお役立ち情報が載っているので、是非アクセスしてみてください!

 

関連リンク

Delta NMR Support(利用登録、ソフトウェアのダウンロードなどはこちら)
Delta Tips
NMRデータ処理にもサブスクの波? 新たなNMRデータ処理ソフトウェアが登場
Mestre NovaでNMRを解析してみよう
NMR解析ソフト。まとめてみた。①

Macy

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有機合成を専門とする教員。将来取り組む研究分野を探し求める「なんでも屋」。若いうちに色々なケミストリーに触れようと邁進中。

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