皆さん、文献管理ソフト、使ってますか??
ケムステでも、過去に様々な文献管理ソフトを比較・紹介してきました(末尾の関連記事参照)。筆者(副代表)は少し前までReadCube推しだったのですが、Papersに統合されてからというものやや馴染まなくなってしまい、すっかり距離を置くようになりました。
しかしあるとき、かのGoogleが新たな文献管理ソフトを提供していることを知ります。その名もPaperpile。軽い気持ちで触り始めましたが、他のソフトを圧倒することがすぐ分かりました。めちゃくちゃ軽い!高速、いや、もはや光速!なのです。動作スピードへのこだわりは、流石のGoogleプロダクト。今回はこのPaperpileを紹介します。
Paperpileの使い方
UIがとても優れているので使い方は直感的に理解できますが、統合TVの動画で分かりやすい解説がありますので、必要に応じてご覧ください。
Paperpileの特徴
従来の文献管理ソフトとは一線を画する設計が多々採用されています。2021年9月現在における文献管理ソフトの最高峰としても過言では無いと思います。
全てがブラウザ上で完結する
クライアントソフトのインストールは不要。必要なものはブラウザだけ。地味なようですが、これがもっとも重要な進歩だと思います。
学術論文は誰しもブラウザ経由で読むわけですから、別のソフトを毎度立ち上げねばならない設計のほうがおかしかった、ともいえます。Google Chromeユーザであれば理想的環境で使えます。
Google検索・Google Scholar・PubMedからワンクリックで登録!
Chromeプラグインを予め入れておくことで、Google Scholarでヒットした論文の横に、Paperpile登録ボタンが登場します。Google検索やPubMedでも同様です。これで検索結果からのワンクリック論文登録が可能です!
論文PDFは注釈込みでクラウド保存
取得した論文はGoogle Driveのスペースにクラウド保存されていきます。MendeleyやReadCubeにもクラウド保存機能はありましたが、独自のストレージに保管されるため、汎用性や共有性という面でイマイチでした。誰でも使えるGoogle Driveと連携することでその点でメリットが出てきます。ただ、うっかり容量不足には注意です。
論文を読むとき重要箇所をハイライト・注釈していく人も多いと思いますが、多くはローカルPDFファイルに紐付くので、ファイルが行方不明になると注釈情報も一緒に無くなってしまいます。Paperpileでは注釈情報も含めてクラウド保存されるので、どの環境からアクセスしても同じPDFと注釈を閲覧できます。いろんな二度手間を減らしてくれる素晴らしい設計です。
書誌情報の簡便なアップデートと自動補完
Auto-Update機能を使うことで、簡単に書誌情報を自動アップデートできます。ASAP段階で論文を登録した後に、実際に自分の論文で引用したいなぁ、というタイミングで行うのが便利です。
デフォルトビューワからDeepLに改行が送られない
読者の皆さんでも、英語論文テキストをDeepLに送ったのちに日本語で読むというケースが増えているのではないでしょうか。ショートカットキー(Winでは[Ctrl + C] 2連打)があまりにも便利なので、筆者も片っ端から使っています。ただAcrobat ReaderなどのPDFビューワからそのままコピペすると、DeepL上で改行が入ってしまうため、少しばかり工夫が必要でした。
Paperpileのデフォルトビューアではこのような問題が無いため、テキストを選択して[Ctrl + C] 2連打すれば、そのまま英文が翻訳されます。これも地味ながら便利な点です。
引用管理Wordプラグインまで光速
多くの文献管理ソフトでは、Word連携プラグインのもっさり感が拭えない問題がありました。このストレスを我慢するなら、別に人力管理でも良いじゃねーか・・・と筆者自身、徐々に使わなくなっていた経緯があります。
しかしPaperpileはWord連携プラグインも光速です。UIも分かりやすくて直感的に操作でき、サクサク文献が引用できる優れもの。引用フォーマットも豊富で、様々なものから選択できます。
Google Documentと連携
これも他のソフトにはない大きな特徴です。音声入力の精度なども加味すると、WordからGoogle Documentへ論文作成プラットフォームを移行するケースが増えていくかも知れません。
めちゃくちゃ軽くて高速・文章の引用がPCやOSをまたいでもバグらない
既に書いたとおりで、地味でごくごく基本的な点なのですが、これだけでも異様にポイント高いです。逆に言うとこれまでのソフトはここがしっかりしてなかったため、実用性が低くなってたということです・・・
デメリットは無い?
褒めちぎるだけでは何なので、気になった点もフェアにあげておきましょう。
有料サブスクソフトウェア
Paperpileは無料ソフトでは無く、有料のサブスクソフトウェアです。無料トライアルは30日で終了し、その後は$2.99/月の費用がかかります。さほど高額ではありませんし、筆者は動作の軽さだけで価値ありと判断し、即、課金しました。
オンラインでないと使用できない
ローカルにPDFファイルが保存されず、ブラウザベースで完結する仕様なので、ネット回線がない環境では使えません。
デフォルトビューワの解像度は低め
表示画像の解像度を落として高速化しているらしく、そのままスクリーンキャプチャを行うと、粗い画像しか取り込めません。ChromeデフォルトのPDFビューワで開き直すことでこれは解決されます。筆者はDeepL改行問題がクリア出来ているPDF Viewerを愛用しています。
一斉Auto-Updateは厳禁
他の文献管理ソフトから移行した後、全ての論文情報をAuto-Updateしたくなります。これは絶対に実行しないでください。
所属機関のネット回線で行うと、ジャーナルから不正大量ダウンロード判定を受けてしまいます。その結果、機関全体で論文ダウンロードを一定時間ストップされてしまい、大きく迷惑をかけることになります。ひどい場合にはダウンロードが永久に停止される可能性すらあります。筆者も1度やらかしてしまい、平謝りする羽目になりました・・・。
おわりに
ともあれ筆者はPaperpileを介して全ての論文を読むまでになってしまい、もはや手放せないソフトの一つとなっています。こないだ書いたArticleなんかは、引用文献数が100を超えてしまい、Paperpileなくして引用管理など到底不可能でした。
選択肢がないとソフトの重さはどうしても我慢せざるを得ないですが、Paperpileを使ってみて「軽さってとても大事なんだな・・・」と改めて感じ入りました。興味を持たれた方は、是非一度Trialで触って見て下さい。その光速っぷりにきっと驚くと思います。
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