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【ケムステSlackに訊いてみた③】化学で美しいと思うことを教えて!

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日本初のオープン化学コミュニティ・ケムステSlackの質問チャンネルに流れてきたQ&Aの紹介シリーズです。第3段も、化学者ならではの考え方を知れる質問を紹介します。

Q. みなさんの、化学で美しい・きれいだと思うことを教えてください! 反応の様子でも、物質でも、化学反応式でも化学ならなんでも教えて頂きたいです(,,> <,,) ちなみに私は ビスマス結晶と、信号反応の戻るところが好きです

筆者(副代表)もビスマス結晶にはえも言われぬ美を感じます。毒性もほぼないので、普通にそこらで宝石として売られていて不思議ではないかも? 実はAmazonで原料が買えたりします。欲しい!自分で作って見たい!自由研究にしたい!という人はこちらこちらの記事などを参考にしつつトライしてみてはどうでしょう。

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信号反応はその名の通り、黄→赤→緑に色を3パタン変えていく不思議な化学反応です。百聞は一見にしかず、動画をご覧あれ。綺麗ですね~。原理が知りたい方はこちら

さてこの質問に対して、どんな回答が飛び交ったのでしょうか?とても興味が持たれますね。

A1. d軌道とか美しいなって思います。特に節(node)!

おっといきなり濃厚化学者テイストな回答が。電子の飛び交う原子周りの空間を模式化したものが軌道ですが、d軌道はこんな感じの形をしてます。なんでこんなところに電子が存在することを自然界は選んだのか、一種のミステリーですね。

画像はこちらより引用

 

A2.  植物二次代謝物のフラボノイドとかテルペノイドの生合成経路が美しいと思います

これも実物を見てみれば、美しいと感じられる気持ちは分かる気がします。フラボノイドの原料(ヒドロキシシンナモイル-CoA)は実はアミノ酸から作られていたりもします。

Wikipediaより引用

テルペノイドの生合成も非常に良く出来ていますね。5炭素原料から直鎖に繋げ、あとで一挙に環化させることで本当にいろんな化合物が出来上がります。多くのテルペノイドで炭素が5の倍数になるのはこのためです。

こちらより引用

A3. 光化学ですが、発光性分子の発する光が綺麗で好きです。特に好きな波長は460 nm(スカイブルー色)です。

発光材料・蛍光材料は、学生たちに化学の魅力を感じて貰うため、毎度持ち出される王道ですね。460nm?って言われてもピンとこないかも知れませんが、画像で見れば一目瞭然!

こちらより引用

A4.  美しい、ではないですが、水とアセトニトリルを混ぜると吸熱するのが、エントロピー駆動の化学?変化を感じられて感動しました。その一方で水とメタノールの混合は発熱反応なのもとても興味深いと思ってます。

これも実験してみると非常に不思議に思うことの一つですね。原初体験というのは魅力を持続させる駆動力にもなり、やっぱり「感動の瞬間」は重要です!

この話題に関する日本語解説記事はこちらをご参照ください。

A5. 元反応屋の意見ですが、たしかに結晶や振動反応は巨視的な”目で見える”美しい現象と思います。でも私は反応液をフラスコ内で撹拌するだけで芸術的に複雑な化合物が組み上がるのことが美しいと思います。フラスコを見て、フラスコ内で起こる微視的な”目で見えないもの”をイメージ出来るのは化学者の醍醐味かと思います。

合成化学/反応化学の凄いところは、目に見えないはずの分子・原子でも、人間の手でかなり自由にいじれるとこですね。個人的に凄いなと思っている一つは、インフルエンザ薬・タミフルの中間体がワンポットで組み上がっていく下記反応です。

原著論文より引用

 

A6. 「反応式の美しさ」ですが,モンサント酢酸合成プロセスです. メタノールと一酸化炭素から酢酸を作るプロセスで,一見単純な反応に見えます.しかし,実は中では色々な反応が起こっていて,これがうまく組み合わさってゴミゼロのプロセスになっています.

これも工業反応化学の最大傑作の一つですね。我々の世界にはもはや無くては成らない物質を、いとも簡単に、しかもゴミを出さずに作るというのは触媒化学のチカラあってこそです。改めて眺めても、その巧みさには驚くしかありません。

monsanto_2.gif

A7. ちょっと値は張りますがこういう本を個人的に買って持ってます(笑)

こんな本があるのか!と筆者自身驚いたので、タイトルだけ見て衝動買いしてしまいました。パラパラ眺めるだけでも自然界と化学界の美しさにため息がでます。

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化学のオープンコミュニティ・ケムステSlack

これらの例が示すまでもなく、化学と芸術はかなり親和性が高そうな気はしています。「機能美」という言葉が示す通り、優れた機能をもつ物質は構造も美しかったりします。こればかりは流石に自然界の深遠さと形容するほか無く、畏敬の念を抱くしかありません。筆者自身もARchemisTというコミュニティに関わりながら、両者の関係性を自分なりに咀嚼していけないものかと考えています。あまりにも壮大な話なので、色んな方の意見を頂きたいところです。興味を持たれた方はこちらのケムステSlack解説記事をご覧いただき、是非チャンネルで意見交換していただければと思います!

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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