【目次】
- 知的財産管理技能検定とは
- 受験資格
- 試験の方法(試験科目 難易度 方法 合格基準)
- その他(試験科目の一部免除、2種類以上を受ける場合)
- 化学関係の仕事での役立て方
- 合格体験記
- 参考書など
1. 知的財産管理技能検定とは
「知的財産管理技能検定」とは、技能検定制度の下で知的財産教育協会(AIPE)が実施している「知的財産管理」職種にかかわる国家試験です。試験に合格して資格を保有すると「知的財産管理技能士」という国家資格に認定されます。
企業によっては採用や昇進に際して取得が奨励/義務付けられている場合があるほか、内閣府知的財産戦略本部が策定した「知的財産推進計画」においても知的財産管理技能士の資格取得が奨励されています。
3級
3級はこのうち最も難易度の低い資格となり、以下のようなレベル設定がなされています。
“知的財産管理の職種における初級の技能者が通常有すべき技能及びこれに関する知識の程度(知的財産管理に関する業務上の課題を発見し、大企業においては知的財産管理の技能及び知識を有する上司の指導の下で、又、中小・ベンチャー企業においては外部専門家等と連携して、その課題を解決することができる技能及びこれに関する初歩的な知識の程度)を基準とする。
(引用:http://www.kentei-info-ip-edu.org/range.html)
知的財産分野について、初歩的なマネジメント能力がある。
具体的には、企業・団体(学校・官公庁等)において知的財産分野の特にブランド保護、技術保護、コンテンツ保護、デザイン保護、契約、エンフォースメント(権利行使)に関する初歩的知識を有し、それに関する課題を発見することができ、一定条件下ではその課題の解決までできる技能がある。
2級
2級は3級に次いで難易度が低い資格となり、以下のようなレベル設定がなされています。
知的財産管理の職種における中級の技能者が通常有すべき技能及びこれに関する知識の程度(知的財産管理に関する業務上の課題を発見し、大企業においては知的財産管理の技能及び知識を有する上司の指導の下で、又、中小・ベンチャー企業においては外部専門家等と連携して、その課題を解決でき、一部は自律的に解決できる技能及びこれに関する基本的な知識の程度)を基準とする。
(引用:http://www.kentei-info-ip-edu.org/range.html)
知的財産分野全般(特許、商標、著作権等)について、基本的なマネジメント能力がある。
具体的には、企業・団体等において知的財産に関する戦略、法務、リスクマネジメント、調査、ブランド保護、技術保護、コンテンツ保護、デザイン保護、契約、エンフォースメント(権利行使)に関する幅広い基本的知識を有し、業務上の課題を発見し、一部は自律的に解決できる技能がある。
1級
1級は難易度が最も高い資格となり、専門によって「特許専門業務」、「コンテンツ専門業務」(著作権関係)、「ブランド専門業務」(意匠・商標権関係)の3つに区分された独立の資格となっています。ここでは「特許専門業務」に絞って説明します。
1級の到達目標としては、以下のようなレベル設定がなされています。
知的財産管理の職種における上級の技能者が通常有すべき技能及びこれに関する知識の程度(知的財産管理に関する業務上の課題の発見と解決を主導することができる技能及びこれに関する専門的な知識の程度)を基準とする。
(引用:http://www.kentei-info-ip-edu.org/range.html)
知的財産分野のうち、特に特許に関する専門的な能力がある。
具体的には、企業等において、特許に関する戦略、法務、リスクマネジメント、情報・調査、国内権利化、外国権利化、契約、エンフォースメント(権利行使)、価値評価・資金調達に関する深い専門的知識を有し、業務上の課題の発見と解決を主導することができる技能がある。
2. 受験資格
知的財産に関する業務に従事している者または従事しようとしている人であれば国籍、年齢、性別を問わず、誰でも受験できます。また、1級の実技試験を除き、全国の会場で受験でします。
3. 試験の方法
試験科目
試験は、毎年類似した問題が出題されていますので、要点を押さえて勉強することで着実に合格に近づけます。過去3回分の過去問も公開されています。(http://www.kentei-info-ip-edu.org/exam_kakomon.html)
3級
学科試験
実技試験
保護(競争力のデザイン)
1-1 ブランド保護
1-2 技術保護
1-3 コンテンツ保護
1-4 デザイン保護
活用
2-1 契約
2-2 エンフォースメント
関係法規
保護(競争力のデザイン)
1-1 ブランド保護
1-2 技術保護
1-3 コンテンツ保護
1-4 デザイン保護
活用
2-1 契約
2-2 エンフォースメント
(引用:http://www.kentei-info-ip-edu.org/range.html)
より詳細はhttp://www.kentei-info-ip-edu.org/library/pdf/saimoku03_n.pdf
2級
学科試験 実技試験 戦略 管理
2-1 法務
2-2 リスクマネジメント
創造(調達)
3-1 調査
保護(競争力のデザイン)
4-1 ブランド保護
4-2 技術保護
4-3 コンテンツ保護
4-4 デザイン保護
活用
5-1 契約
5-2 エンフォースメント
関係法規
戦略 管理
2-1 法務
2-2 リスクマネジメント
創造(調達)
3-1 調査
保護(競争力のデザイン)
4-1 ブランド保護
4-2 技術保護
4-3 コンテンツ保護
4-4 デザイン保護
活用
5-1 契約
5-2 エンフォースメント
(引用:http://www.kentei-info-ip-edu.org/range.html)
より詳細はhttp://www.kentei-info-ip-edu.org/library/pdf/saimoku03_n.pdf
1級
学科試験 実技試験 管理 1-1 リスクマネジメント
創造(調達)
2-1 契約
活用
3-1 契約
3-2 エンフォースメント
3-3 資金調達
3-4 価値評価
関係法規
特許専門業務
A 戦略
A-1 知的財産戦略
B 管理
B-1 法務
C 創造(調達)
C-1 情報・調査
D 保護(競争力のデザイン)
D-1 国内権利化
D-2 外国権利化
E 特許関係法規
特許専門業務 イ 戦略
イ-1 知的財産戦略
ロ 管理
ロ-1 法務
ロ-2 リスクマネジメント
ハ 創造(調達)
ハ-1 情報・調査
ハ-2 契約
ニ 保護(競争力のデザイン)
ニ-1 国内権利化
ニ-2 外国権利化
ホ 活用
ホ-1 契約
ホ-2 エンフォースメント
ホ-3 資金調達
ホ-4 価値評価
(引用:http://www.kentei-info-ip-edu.org/range.html)
より詳細はhttp://www.kentei-info-ip-edu.org/library/pdf/saimoku03_n.pdf
試験の方法
3級
学科試験:3択式のマークシート方式で実施される筆記試験(30問、45分)
実技試験:記述方式の筆記試験(30問、45分)
2級
学科試験:4択式のマークシート方式で実施される筆記試験(40問、60分)
実技試験:記述方式の筆記試験(40問、60分)
1級
学科試験:4択式のマークシート方式で実施される筆記試験(45問、100分)
実技試験:筆記試験と口頭試問(5問、約30分)
合格基準
3級
学科・実技の両試験で7割以上得点すれば合格となります。
2級
学科・実技の両試験で8割以上得点しないと合格となりません。この点が3級とは大きく異なるので注意が必要です。合格率は例年、学科試験・実技試験共に30-40%程度で推移しています。
1級
学科・実技の両試験で8割以上得点しないと合格となりません。非常に難易度の高い試験です。合格率は例年学科試験が5-10%、実技試験が80%程度で推移しています。
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その他
試験科目の一部免除
要件を満たす場合には受験申請と同時に試験免除申請することで試験免除が認められることがあります。詳細な要件はこちら。(http://www.kentei-info-ip-edu.org/exam_menjo)
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化学関係の仕事での役立て方
詳細は合格体験記に記したいと思いますが、私自身、就職先(化学メーカー)に3級の取得を進められて勉強を始めました。知的財産管理技能士資格は弁理士などとは異なり、持っているだけで特別な効力を発揮するものではありませんが、企業において知的財産関連の業務に取り組むうえでは非常に役に立っていると実感しています。
たとえば、研究開発の現場、とりわけ製品化の段階においては他社の特許等に抵触しない製品開発を行うことや、自社技術の特許化の際に他社の追随を許さないために十分な範囲で権利化を行うことが重要です。これらを達成するためには他社の技術動向を注視し続け、自らの研究開発方針に反映させる能力が欠かせません。具体的には、他社特許の網を潜り抜けるような材料や試薬、技術要素を探索したり、自社特許の請求項を広げるために、どのようなデータ取りを行えばよいか検討したりといった作業を行うことになります。これらの業務には特許の仕組みやその調査方法についての基礎知識が必要であり、知的財産管理技能士程度の能力を持っていればそつなくこなすことができるかと思います。研究者自身が知的財産について理解していることが円滑な研究開発・権利化において有効と考えます。
また、特許出願から公開までの流れを把握していると、特許調査において得られる/推測できる情報量も格段に上がります。特許庁のJ-Platpatなどを用いると誰でも簡単に特許や実用新案を検索することができますが、これらのサイトでは拒絶されたり消尽したりした出願も表示されます。実態審査段階での拒絶であれば、その拒絶理由からどの程度以上の発明が高度なのか推測することができますし、権利化後の特許料未納付による失効であれば、その時点で発明者にとって重要な技術ではなくなった可能性が読み取れます。これらの情報を総合して自社の研究開発に活かすことができます。
最後に、企業においては実利的な問題も重要となります。特許出願や訴訟などの弁理士が代理して行う手続きを行う際には、社内知財部に弁理士の有資格者がいなければ外部の弁理士事務所と提携して業務を行うこととなります。その際、明細書などの書類作成などにおいてはあらかじめ作成した草稿を添削してもらう形式をとることが一般的と思われますが、草稿の完成度に応じて依頼にかかる費用は大きく変動するのが常です。そのため、弁理士資格を取得していなくとも知的財産についてのある程度の知識を持っておくことがコストカットに直結します。そもそも特許出願の流れを把握していなければ適切に依頼をするのも困難かもしれません。
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合格体験記
合格体験記:知的財産管理技能検定~berg編
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参考書など