[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

パーソナル有機合成装置 EasyMax 402 をデモしてみた

[スポンサーリンク]

合成装置といえばなにを思い浮かべるでしょうか?

いま話題のロボット科学者?それともカップリング、精製まで行って天然物もつくれる装置

そういった話ではないですが、今回は安定かつ無人で中程度のスケールの有機合成を精密に最適化する有機合成装置をデモしましたので紹介したいと思います。

メトラー・トレド社のパーソナル有機合成装置「EasyMax」です。

EasyMax」とは?

トップの画像にもありますが、こんな装置です。

メトラートレド社のHPから今回デモしたEasyMax (正確にはEasyMax402)の説明を引用すると、

EasyMax 402 Basic パーソナル有機合成装置は、手間のかかる従来の丸底フラスコを使用せずに合成操作を100 mL~400 mL スケールで行う事ができます。-40℃から180℃で の加熱と冷却を簡単で高精度に制御します。EasyMax 402 Basic を使用すると、新しい化合物の開発や、反応条件を正確に制御して評価用の少量のサンプルを合成できます。

とのこと。100mL〜400mLで少量のサンプルを合成できるとあるので、大学の実験室で行うような新規反応の条件最適化ではなく、合成のプロセス化に向けた初期段階の検討用であることがわかります。

EasyMaxの特徴

では少しだけ本装置の特徴を述べましょう。

リアクターは2つあり、全く異なる条件で2つ反応を最適化できます。実験条件のパラメータを変更するいんは手前のタッチスクリーンで数字を変えるだけでOK。その変更が常に記憶されて、実験が最適であった場合、温度の上昇や、撹拌速度や変更した時間などすべて再現できます。また、フラスコ、温度センサー、スターラーなどを揃えセットアップする時間を省くことができ、この機械を利用することにより、誰でも同じ様にセットできるのが特徴ですね。類似品はいくつかありますが、この反応スケールでしっかり反応を確認できるのはほとんどないと思います。

一方で、スケールが100mLは少し大きいと言う場合は専用のブロックをかませた小さな容器に入れることで、10-20 mLほどのスケールでも反応がおこなえるようです。

デモの感想は、反応の最適化にも使えますが、晶析や分子集合体の合成にも再現性が取れるという意味で使えるのではないかと思いました。実際、別記事で紹介しますが、この機械に晶析を観察するプローブを取り付けて、スラリーの状態を観察することができます。同社はin Situ FTIR分光光度計(ReactIR)やカロリーメトリーなども販売しているので、これらを組み合わせた精密反応測定にも適している気がします。

以下、特徴・利点そしてその利点による使用者の利益をまとめます。

メリット中心に、簡単に説明してみましたが、デメリットもあります。デメリットは装置が高価であること。研究員を雇用している企業などでは、人的なエラーが少なくなり逆にコスト削減になるかもしれないですが、なかなか大学の研究室では難しいところですね。というわけで、企業とくに製薬企業で大変好評だそうです。

2008年に発売されベストセラーとなっているEasyMax。オンラインでももできるようなのでぜひ体験してみてはいかがでしょうか。

なお、今回オンラインデモを行い、動画を撮影/編集しましたのでぜひそちらもご覧いただければ幸いです。

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とす…
  2. CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排…
  3. 並外れた光可逆的粘弾性変化を示すシリコーンエラストマーの開発~市…
  4. Glenn Gould と錠剤群
  5. 第4回鈴木章賞授賞式&第8回ICReDD国際シンポジウム開催のお…
  6. 引っ張ると白色蛍光を示すゴム材料
  7. シュプリンガー・ネイチャーが3つの特設ページを公開中!
  8. 環サイズを選択できるジアミノ化

注目情報

ピックアップ記事

  1. 化学者たちのエッセイ集【Part1】
  2. 最新の産学コラボ研究論文
  3. 酸で活性化された超原子価ヨウ素
  4. XPhos
  5. ルィセンコ騒動のはなし(前編)
  6. プラサナ・デ・シルバ A Prasanna de Silva
  7. 複雑なアルカロイド合成
  8. 書物から学ぶ有機化学 2
  9. 「サンゴ礁に有害」な日焼け止め禁止法を施行、パラオ
  10. ロッセン転位 Lossen Rearrangement

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年10月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

医薬品設計における三次元性指標(Fsp³)の再評価

近年、医薬品開発において候補分子の三次元構造が注目されてきました。特に、2009年に発表された論文「…

AI分子生成の導入と基本手法の紹介

本記事では、AIや情報技術を用いた分子生成技術の有機分子設計における有用性や代表的手法について解説し…

第53回ケムステVシンポ「化学×イノベーション -女性研究者が拓く未来-」を開催します!

第53回ケムステVシンポの会告です!今回のVシンポは、若手女性研究者のコミュニティと起業支援…

Nature誌が発表!!2025年注目の7つの技術!!

こんにちは,熊葛です.毎年この時期にはNature誌で,その年注目の7つの技術について取り上げられま…

塩野義製薬:COVID-19治療薬”Ensitrelvir”の超特急製造開発秘話

新型コロナウイルス感染症は2023年5月に5類移行となり、昨年はこれまでの生活が…

コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成などへの応用に期待–

第 642回のスポットライトリサーチは、武蔵野大学薬学部薬化学研究室・講師の 重…

ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!

こんにちは,熊葛です.今回は,一般的なP450で保存されているヘム鉄を配位するシステイン残基に,異な…

有機化学とタンパク質工学の知恵を駆使して、カリウムイオンが細胞内で赤く煌めくようにする

第 641 回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 生…

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー