コロナ禍の影響により、ここ数カ月はオンラインでの選考が増えている。先日、はじめてオンラインでの面接を導入された企業の経営者に話をうかがったところ、興味深い話を聞いた。
「結局のところ、オンラインでも対面でも、採用される人は同じだと改めて感じましたね。先日、オンライン面接した候補者を不採用にしましたが、対面でも結果は同じですね。」
という。続けて
「私が選考のときに見ているのは、その方がどの程度の『深度』で物事を捉えているかという点です。情報として知っているかどうかだけでなく、それについて考えを深めることが出来る人と仕事がしたいと思います。普段からそうしている人の話というのは、『解像度』が高いです。具体的で明確。社内で仕事が出来る人は例外なくそうですから。」
と。確かに、面接で評価される人も、各企業で活躍される人も、「話が簡潔で明確な人」と言われることが多く、「話が長く曖昧な人」ということはまずない。今回は、具体的な事例をもとに、オンラインでも対面でも、面接ではっきりと伝わる意見が言えるために何をすべきか考えていきたい。
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情報収集はアウトプットを意識する
まず面接準備のための情報収集のポイントとして、アウトプットする前提で、内容を正確に押さえておくことが重要である。例えば、製薬企業の面接に臨むときに最近の業界動向のニュースをサーチした場合、新聞や雑誌などの情報ソースや、日時、企業名、前年比〇倍増などの数値など、基本的なことは最低限押さえておきたい。実際にあった例で、面接担当者に「最近気になったニュースは?」と聞かれて、「どこの大学かまでは忘れましたが、どこかの大手製薬企業と組んでAI創薬で共同研究をはじめたというニュースが面白いと思いました」という曖昧な回答をしたところ、当然ながらネガティブな評価となってしまった。次から次へと情報が溢れてくる中、漫然とニュースを見ているだけでは、大事なときにすぐにアウトプットできない。普段から出来ることとして、気になる記事だけでもポイントを控えておくことをお勧めしたい。
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自分なりに情報を分析する時間をとる
正しく情報を把握したところで、準備はまだこれからである。得た情報をもとに、自分なりに分析できているかどうかで差が出る。例えば、「ゲノム編集の国内での創薬応用には課題」という情報をニュースで得たとする。記事によると、「安全性の課題がある」との記載があった。ここから、「安全性の問題とは具体的に何だろう?」とか「海外では進んでいるが、国内で進んでいない理由は?」などと展開できる。また、「特許関係でも課題がある」との記載もあり、ここから「企業が利用する際はどのくらいの特許料がかかるのだろうか」、「この技術以外にも国内で同様に技術開発はされているのではないか」という方向にも深められる。ポイントは、自分なりに情報を深掘りしていくことである。そうしておけば、面接で最近気になっている業界動向を聞かれた場合でも、「ゲノム編集の国内での創薬応用には課題が多いというニュースが気になりました。特に課題の一つである特許について指摘されています。莫大なコストがかかるとなると、創薬のための企業利用はやはり難航するでしょう。調べたところ、同様の技術開発がA大学やB研究所などの国内でもされているので、平行して進めながら、きちんと創薬に利用できるような仕組みも考えていくべきであると思いました」というように自分なりの分析を交えた回答ができる。そのひと手間をするかどうかで、アウトプットの明瞭さは大きく変わる。
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一般論ではなく、自分の意見をまとめる
その中でも、反対意見は貴重だ。「どこが反対なのか」「あなたはどう思うのか」など、色々な考えを聞いて考え、更に自分の意見をブラッシュアップしておきたい。
最後に、深い洞察力を生かし、お仕事でも活躍されている方の情報収集の方法について紹介したい。50代のAさんはライフサイエンス分野の経営企画の方で、これまで業界を跨いで転職をされている。多くは知人やヘッドハンターから声がかかり、積極的な転職活動はしたことがない。なぜそんなことができるのか秘策を聞いてみると、「そんな秘策はない」と言われてしまった。「皆さんが思っているより、地味なことを毎日やっています。朝は国内の新聞3紙、海外1紙に目を通し、気になる記事はスマホのメモにタイトルと概要を控える。もとは文系ですが、今はライフサイエンス分野の最新技術を理解する必要があるので、仕事に関係しそうなキーワードは全てメモしておき、社内で技術部門の社員に後から聞きます。親切で正確に教えてくれそうな人と日頃から仲良くしていますね。こうして人に相談して、自分が技術に関心があると思ってもらうことで、今度会ったときに関連する情報をくれたりもします。」という。実際にスマホのメモ機能を見せて頂くと、日付とトピックと考察がびっしりと書かれていた。更に、こうして収集した情報をもとに、関連する会議や商談があるようなときは、更に深掘りをするそうだ。「先日はある出資先のベンチャー企業にて、技術顧問の先生とミーティングがありましてね。これからパートナーとして信頼関係を築くための、大事な場です。事前にその技術に関してその方が執筆した論文、及び、関連文献を原文で幾つか目を通して、要点を控えて臨みました。もちろん、サイエンスについては分からない部分が多いので、同僚に聞いたりしましたが、経営企画の私がそこまで調べて考えを話したことに対して、非常に驚かれたようです。これまで論文まできちんと目を通してこられた方はいなかったようで。相手から重要な情報を引き出したいと思うときは、まず重要な話をする相手だと思ってもらうことが大事だと思いますね。」とアドバイスを頂いた。これだけ日々の積み重ねや経験があれば、そこまで徹底的に準備しなくても対応できそうであるが、「そこまでやるか」と思うところまでやってしまうところに、皆が心を動かされているように思う。
以上、「自分の意見を言える人」がしていることについて参考にしていただければと思う。
まとめ:「自分の意見を言える人」がしている3つのこと
- 情報収集はアウトプットを意識する
- 自分なりに情報を分析する時間をとる
- 一般論ではなく、自分の意見をまとめる
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[文]太田裕子 [編集]LHH転職エージェント(アデコ株式会社)*本記事はLHH転職エージェントによる寄稿記事です
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