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海外機関に訪問し、英語講演にチャレンジ!~③ いざ、機関訪問!~

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海外学会のついでに近郊機関に訪問し、ディスカッションと英語講演にトライしてみよう!シリーズ記事です。

第3回(最終回)は【いざ、機関訪問!】編です。

現地訪問に向けて準備しておくこと

①移動・滞在スケジュール決め

訪問日時が決まったら、移動・滞在スケジュールを自分で組む必要があります。ヨーロッパ圏内であれば鉄道網が発達しており、ゆったりした席で移動できるので、わりと楽ちんですし、機関のハシゴも比較的容易です。一方でアメリカのように、国土が広く時差のある国では、国内移動といえども移動時間や時差ボケなどを考慮する必要があります。

土地勘のない場所で緊張しつつ講演・ディスカッション(まる一日仕事です)をこなすと、慣れないうちは大変疲れます。遠方への移動日は一日を充てるなど、途中でへたってしまわないような無理のないスケジュールを組みましょう。日本ほど交通機関が正確ではないので、ギリギリの移動スケジュールも厳禁です。

②交通機関・宿泊先の確保

安く上げたいならExpediaなどの旅行サイトをフル活用して、学会会場~現地機関までの交通機関(飛行機・高速鉄道など)、現地機関近くのホテルなどを調査のうえ、忘れずに予約します。自分でやるのが面倒だったりお金に余裕があるならば、旅行代理店にお願いしてしまうのも手です。ヨーロッパでは鉄道乗り放題パスも販売されており、上手く使えば費用を抑えて移動効率を上げられます。

多くの場合には土地勘がないでしょうから、便利な近郊ホテル・交通機関については、ホストの先生に教えて頂くのも一案です。自分で探すよりずっとまともな場所が見付かり、早く片付くケースも多いです(ただ、厚かましくなりすぎないように気を付けましょう)。

③講演スライドと英語原稿

英語講演はやはり場数をこなすことが重要であり、訓練機会を意識してつくらないことには始まりません。海外機関訪問は、その良い機会になります。可能であれば、教授の研究構想とは異なるストーリーのプレゼンを意識的に心がけてみるのも、悪くないと思えます。

ほとんどの場合、現地機関のセミナーでは演時間45-60分(質疑込みで60-90分)が持ち時間になります。時間枠は直前まで不明なケースもあったりするので、どちらでも対応可能なスライドを用意しておくのが無難です。経験を積めば、複数トピックを組み合わせた一セットのスライドにしたうえで、残り時間を見ながら適宜スキップするといったことも出来るようになってきます。

やってみれば分かりますが、気合いの入り方が普通の学会発表とは雲泥の差になります。はるばる海外まで来て一期一会を活かさねばならないので、構成はちゃんと練りますし、英語原稿を作って練習するなども普通にします。向こうはこちらを日本代表の一人として見てきますので、手を抜くことは出来ません。

60分の対外英語プレゼンは、日本国内だとよほど偉くならない限り、実施機会がありません。しかし海外機関に訪問すれば、誰でも実施機会に恵まれます。日本国内だけで英語講演をしていても、お互い何となくごまかせてしまったり、お察しムードになったりして、意外と緊張感がないものです。そういう中でのスキルアップは、実のところ非効率的です。

いよいよ現地機関訪問!どんな感じで進む?

毎回の機関訪問は、下記イベントの組み合わせになっていることが多いです。

  1. ホストの先生との面会
  2. ラボの見学
  3. 現地PI・学生とのディスカッション
  4. 英語講演
  5. ランチ・ディナー・飲み会
①ホストの先生との面会

多くの場合、メールで打診して快く受け入れてくれた先生が、ホストを担当してくれる事になります。

自分でもホストを一度やってみると分かりますが、わざわざ海外から訪問される方に対し、雑な態度で接することは到底できません。もてなしの心を砕いてくれるホストに対し、ゲストとしての非礼が無いよう振る舞いに気を付ける、提供可能な価値は最大限提供する、英文メールも毎度ブラッシュアップしていく、それが先方にとって負担にならないのならそうすべきだ――複数回の訪問を経験するだけでも、自然とそう考えるようになっていきます。

②ラボの見学

メンバーの簡単な紹介や、ラボの様子などをぐるっとガイドしてくれることも多いです。同じ分野のラボであれば、うちと大した違いも無いなぁと思うことは確かにありますが、知らない装置、実験器具、工夫などを話してくれることもあり、研究プロセス改善のヒントが得られたりもします。先日訪問したカナダの大学では、サンプル液量が少なくてもLC-MSを取れるようにするアイテム(Bottom Spring)を使っているという話を聞いて、へ~こんなのあるんだ、と面白く見せて貰いました。

バイアルの中に入れると液を吸い上げてくれる。

③現地PI・学生とのディスカッション

機関訪問をするとゲスト扱いになり、現地PIや学生達とのディスカッション(研究紹介と議論)が、多くの場合、複数回付帯してきます。

自分の狭い常識からは想像もできないスケールの話を聴く機会も多く、毎回大変に刺激を受けるのもこのディスカッションです。有名機関でなくとも、欧米PIの方々はおしなべてストーリー巧者であり、圧倒されるばかりです。

ディスカッションしていただく現地PI・学生達から、「貴方のあの論文読みましたよ!」と言われることもあり、その時は本当に嬉しくなります。やはり直接会って現地の生の声を聴くのがいい感じです。端的にモチベーションアップになりますし、こんな遠くの国まで実際に情報が届くんだ!とグローバルなアカデミックシステムの凄さにも感じ入ります。一方で「下手な論文出せないなぁ・・・」と身が引き締まる思いもします。

ディスカッション時に最重要なのは、質問力だと思えます。英語で質問するのは正直言って大変なのですが、ふんふんと聞いてるだけでは一生懸命話してくれてる向こうとしても物足りないのです。鋭い質問、良い質問ができれば、話が弾みますし、向こうも理解してくれたと思ってくれます。とはいえ自分のリスニング力に限界があり(講演と違って容赦ないネイティブ速度でしゃべられることもある)、異分野の研究を聴いて全然質問できないことも現実にはあるわけで・・・それも含めて経験なので、良い肥やしにする機会と捉えて居ます。

④英語講演

上でも書きましたが、45-60分英語で喋ることになるので、一通り練習はしていきましょう。

ネイティブスピードでの英語による質疑応答が、多くの場合鬼門かと思います。筆者も聞き取れずに「Say it again ?」と聞き返すことは数知れませんが、やっていくうちにともあれ度胸はついてきます。こればかりは本番の数をこなさないと、永久に慣れないと思います。毎回終わる度に、あちこち反省点が生じて凹むことも多いのですが、何事も経験だとおもって初心に返って必死に取り組みなおす良い勉強機会とさせて貰っています。

⑤ランチ・ディナー・飲み会

現地の学生達がアサインされて学内のレストランに一緒に行ったり、ホストの先生方に近場のちょっと良さげなお店に連れて行ってもらったりなどなど、パターンは様々です。いずれにせよゲストとして扱ってくれるので、変なところにはまず連れて行かれません。

ランチやディナーでは、英語が下手でもとにかく会話をしなくてはならず、講演と違ってアドリブ要素もあるので、これはこれで神経使って大変ではあります。とはいえ、普段日本で過ごす限り聞くことのできない現地のリアルな話が聞けるので、なかなか楽しいものです。

不安であれば、ホットなニュースや世間話になるネタをストックしておくのもいいと思います。話題は様々ですが、真面目な話だと日本と現地のアカデミックシステムの違いグラント状況の良し悪し注目している研究自分の考える科学的興味世界的情勢(最近だとBrexit、コロナ、W杯やオリンピック、トランプ政権など)などが出てくることが多いです。同世代相手だと悩みの種類も世界共通なことも多いようで、話のきっかけに、プライベートで思うところを軽く振ってみるのもいいでしょう。

おわりに

もともとは人からの薦めもあって、自己アピールの効率を上げようと始めた取り組みですが、やっていくうちに未知のことにチャレンジし、自分を成長させる機会を定期的に持つことの重要性を改めて感じるようになりました。留学時代・学生時代が思い起こされる緊張感を毎回感じます。仕事にも慣れて普段が「手なり」で片付くようになってくると、適度な負荷のあるイベントを意識していれこまないと、人間だんだん腐っていくなぁとすら感じます。加えて、独立して自由になってから始めよう・・・ではやや遅いようにも個人的には思えています。若さゆえの吸収力は馬鹿にしたものではないからです。

海外機関訪問はそういう中でのよいカンフル剤になってくれると思うので、オススメです!

海外機関に訪問し、英語講演にチャレンジ!シリーズ一覧

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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