有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2020年2月号がオンライン公開されました。
なんちゃらウイルス関連の出来事が連日ニュースとなっていますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
そっちも大変だけど、○論が大変!!というひとも多いかもしれません。
有機合成化学協会誌、今月号も盛りだくさんの内容となっています。キーワードは、「ナノポーラス スケルトン型金属触媒・フッ化アルキル・2,3,6-三置換ピリジン誘導体・ペプチドライゲーション・平面シクロオクタテトラエン・円偏光発光」です。
今回も、会員の方ならばそれぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。
追悼:野崎一元会長を偲んで
中部大学総合工学研究所 センター長 山本 尚 教授による追悼記事です。
巻頭言:ゼロから始めるということ
今月号は東京農工大学大学院農学研究院 千葉 一裕 教授による巻頭言です。
ナノポーラス スケルトン型金属触媒の開拓と有機合成への応用
2018年度有機合成化学特別賞受賞
*東北大学理学研究科化学専攻 名誉教授
新奇で高性能な不均一系触媒の新概念の創成とそれを用いた高効率・高選択的な触媒反応開発に関する論文です。複数の金属で合金を調製し、そこから1つの金属を化学反応で取り除き、空隙をもつ不均一触媒を合成しています。3種以上の金属を含む合金からは、複数の金属からなる同様の不均一触媒が調製できる画期的な手法です。
フッ化アルキルを求電子剤として利用する触媒的炭素骨格構築反応
2018年度有機合成化学奨励賞受賞
*東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻
本論文は、著者ら独自のアート型錯体を触媒活性種とするフッ化アルキルのC-F結合の切断を伴うクロスカップリングおよび多成分連結反応について述べています。C-F結合の切断戦略、触媒活性種や反応の速度論的検討について丁寧に述べられており、読み応えのあるものとなっています。是非ご覧ください。
2,3,6-三置換ピリジン誘導体の簡便合成法開発とPKCθ阻害剤の合成研究への応用
加藤泰祐
武田薬品工業株式会社
本総合論文は、2,6-ジフルオロピリジン類の合成法開発とその反応を利用した医薬品(PKCθ阻害剤)の探索について述べています。3位に置換基を有する2,6-ジフルオロピリジンに対して位置選択的に2種類の求核剤と反応することで簡便に多様な化合物ライブラリーを構築し、効率的に高活性化合物を取得しました。
タンパク質化学合成を加速するペプチドライゲーションの新技術
1名古屋大学大学院工学研究科
2東京大学大学院工学系研究科、3東京大学先端科学技術研究センター
水中において、様々な官能基が内在する巨大ペプチド、タンパク質に対して、高い反応性と選択性でライゲーション反応が実現されています。研究背景の丁寧な解説に加え、境界領域を切り拓く有機合成化学の新発想が凝縮されています。ぜひご一読ください。
平面シクロオクタテトラエンの反芳香族性,反応性,および有機半導体への応用
首都大学東京大学院理学研究科化学専攻
単体では折れ曲がり構造となるシクロオクタテトラエン(COT)骨格を分子修飾で平面構造に強制した。結果、高い反芳香族性を示すも安定であり、両極性の有機半導体特性が発現した。平面COTの特性を理論と実績から引き出した興味深い結果である。
発光ユニットの精密配置に基づく非古典的円偏光発光(CPL)特性制御
近畿大学理工学部応用化学科
光学活性な有機発光体において、光励起状態において、発光性ユニットが適切なキラル空間配置をとるように分子設計することにより、円偏光発光(CPL)の回転方向を制御することに成功しました。ぜひご覧下さい。
Rebut de Debut:有機溶媒に難溶なCsFを用いる触媒的不斉フッ素化反応の新展開
今月号のRebut de Debutは1件です。オープンアクセスですのでぜひごらんください。
有機溶媒に難溶なCsFを用いる触媒的不斉フッ素化反応の新展開 (立教大学理学部化学科) 堤 亮祐
感動の瞬間:幸運な遭遇が飛躍のきっかけに
今月号の感動の瞬間は、大阪大学産業科学研究所、國立交通大學應用化学系 戸部 義人教授による寄稿記事です。
異分野との融合研究の成功の秘訣、またその過程に潜んでいた感動の瞬間に心打たれます。オープンアクセスです。
これまでの紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズを参照してください。